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内部不正・情報漏えい・脆弱性診断(15)

データコンサルタント/データアナリスト視点での再構築案

件名:セキュリティ投資対効果(ROI)を最大化する、データドリブン脆弱性管理と診断コスト最適化戦略
1. 課題:観測不能なIT資産と、形骸化するスナップショット診断
サイバー攻撃からの防御において、セキュリティ診断はリスクを測定するための重要なデータ収集活動です。この診断は、システムやアプリケーションに内在する脆弱性という「リスクデータ」を検出し、その潜在的な事業インパクトを評価するプロセスに他なりません。

しかし、多くの企業が直面しているのは、診断データの鮮度と網羅性という2つのデータ品質に関わる課題です。

データの鮮度: ビジネス環境の変化に伴い、システムの構成変更や新規資産の公開は日々行われます。これにより、脆弱性というリスクデータもまた、常に変動しています。年に一度、あるいは四半期に一度といった低頻度の診断で得られるデータは、あくまで特定時点でのスナップショットに過ぎず、今日のビジネスリスクを正確に反映しているとは言えません。時系列でのリスク変動を捉えられていないのです。

データの網羅性: 特に、複数の子会社や事業部門を抱える企業グループでは、IT資産がサイロ化し、全社的な資産インベントリが正確に維持されていないケースが散見されます。これは、分析対象とすべき母集団(IT資産全体)を正確に定義できていないことを意味し、観測不能な領域から発生するセキュリティ・インシデントのリスクを著しく高めます。

一方で、観測される全てのIT資産に対して網羅的に高頻度の診断を実施しようとすれば、コストが線形的に増加し、投資対効果(ROI)は著しく低下します。これは、「リスクカバレッジ」と「コスト」の間に生じる典型的な最適化問題です。

2. 解決策:脅威インテリジェンスを活用した、診断リソースの戦略的配分
この最適化問題を解決する鍵は、「データに基づいたリスクベースアプローチ」、すなわち、全ての資産に均一なリソースを投下するのではなく、攻撃者の視点を取り入れた脅威インテリジェンスデータを活用し、リスクの高い領域に診断リソースを集中させることです。

サイバー攻撃者は、無差別に攻撃を仕掛けるわけではありません。彼らもまた、最小の労力で最大のリターンを得ようとします。その行動原理や攻撃対象の選定基準をデータとして分析し、自社のIT資産ポートフォリオと照らし合わせることで、「攻撃される可能性の高い資産」を統計的に予測し、優先順位付け(トリアージ)することが可能になります。

本アプローチは、以下のステップで構成されます。

資産の棚卸しと可視化: まず、外部に公開されている全てのIT資産を正確にリスト化し、一元的なデータ基盤上で可視化する。

脅威データの分析: 最新の攻撃トレンド、標的となりやすい業界やシステム構成などの脅威インテリジェンスを分析する。

リスクスコアリングと優先順位付け: 資産の重要度(事業インパクト)と、脅威データから導き出される攻撃可能性を掛け合わせ、各資産のリスクスコアを算出。スコアに基づき、診断対象の優先順位を決定する。

3. データ分析で実現する「診断コスト最適化」の実践
限られた予算内でセキュリティ投資対効果を最大化するための、データドリブンな脆弱性管理手法を具体的に解説します。

アジェンダ:

攻撃者インテリジェンスの活用法: 攻撃者の視点をデータとして取り入れ、自社の「狙われやすい」資産を特定する分析アプローチ。

資産ポートフォリオのリスク評価モデル: 分散した大量のIT資産(ドメイン、子会社・グループ会社の資産等)に対し、効率的にリスクスコアリングを行い、診断対象を戦略的に絞り込む方法。

コスト最適化の実践例: 実際のシナリオに基づき、リスクベースアプローチを導入することで、診断コストを抑制しつつ、リスクカバレッジを維持・向上させるシミュレーション。

「管理下にないIT資産が多数存在し、どこから手をつけるべきか判断できない」「全資産への診断はコスト的に不可能だが、リスクを放置することもできない」といった課題を抱えるリスク管理担当者、情報システム部門の責任者にとって、必見の内容です。データ分析に基づく合理的な「診断コスト最適化」にご興味のある方は、ぜひご相談ください。

データコンサルタント/データアナリスト視点での再構築案

件名:データで解き明かすサプライチェーンリスク:ASMとダークウェブインテリジェンスによる統合的リスク評価モデル
1. 分析対象の拡大:自社単体からビジネスエコシステム全体へ
現代のビジネス環境において、サイバーリスクの分析対象は、もはや自社のITインフラという閉じた領域に留まりません。観測される脅威データの傾向として、セキュリティレベルが比較的低い業務委託先やグループ会社を起点としたサプライチェーン攻撃が著しく増加しています。これは、自社のセキュリティ対策が堅牢であっても、ビジネスエコシステムを構成する他組織の脆弱性が、自社への直接的なリスクとして伝播することを意味します。

この状況下では、自社が意図せずして攻撃の踏み台、すなわち「加害者」となる可能性も含まれます。インシデントが発生した場合の事業インパクトは、直接的な損害賠償に留まらず、ブランド価値の毀損やサプライチェーン全体の機能不全といった、より広範な経営リスクへと発展します。リスク管理は、自社単体のデータポイントから、取引関係にある全ての組織を含む巨大なデータセットへと視点を切り替える必要があります。

2. 従来型診断アプローチのデータ収集・分析における限界
セキュリティリスクを特定するための従来型アプローチ、例えば脆弱性診断やペネトレーションテストは、特定のシステムに対する詳細な**「深掘り型(Deep Dive)」のデータ収集手法**としては有効です。

しかし、これらの手法には、データ分析の観点から見て3つの大きな課題が存在します。

スケーラビリティの問題: 診断対象がグループ会社、海外拠点、無数のサードパーティへと拡大するにつれて、データ収集にかかるコストとリソースは指数関数的に増大します。これは、広範なリスクサーフェスに対して費用対効果の高いデータ収集が困難であることを示しています。

データ鮮度の問題: これらの診断は特定時点のスナップショットデータを提供するに過ぎず、日々変化するIT資産の構成や新たな脅威の出現を継続的にモニタリングするには不向きです。

分析のオーバーヘッド: 診断結果として出力される膨大な生データ(Raw Data)を、ビジネス上の意思決定に繋がる実用的なインテリジェンスへと変換するプロセスに多大な工数を要します。どのリスクに優先的に対処すべきか、という**データに基づいたトリアージ(優先順位付け)**が極めて困難です。

3. 攻撃者視点のデータインテリジェンス活用
今日の攻撃者は、OSINT(Open-Source Intelligence)に代表される公開情報収集・分析技術を駆使し、攻撃対象のデジタルフットプリントを徹底的に調査します。彼らの分析対象となるのは、情報システム部門が公式に管理する資産だけではありません。事業部門が独自に立ち上げたWebサイト、設定不備のあるクラウドストレージ、従業員が利用するSaaSなど、**組織が正確に観測・管理できていない「シャドーIT」**こそが、最も攻撃可能性の高いエントリーポイントとなります。

この「攻撃者の視点」を模倣し、外部から自社のエコシステム全体がどのように見えているかを客観的にデータとして把握することが、効果的なリスク管理の第一歩です。

4. ソリューション提案:外部インテリジェンスを統合した新たなリスク評価モデル
従来型診断の限界を克服し、広範なビジネスエコシステムのリスクを効率的に評価するための最適解は、外部インテリジェンスデータを活用した、継続的なモニタリングと分析にあります。

ビヨンドブルーが提供する「Secure Check」は、まさにこの新しいアプローチを具現化したソリューションです。これは単なる診断サービスではなく、2種類の異なる外部データソースを統合分析するリスクインテリジェンス・プラットフォームと位置づけられます。

アタックサーフェス管理(ASM): 攻撃者と同じ視点から、インターネット上で観測可能な自社および関連組織のデジタル資産(ドメイン、IPアドレス、証明書等)を継続的に探索・マッピングします。これにより、これまで観測不能だったIT資産をデータとして可視化し、潜在的な脆弱性を網羅的に洗い出します。

ダークウェブ調査: 経験豊富なホワイトハッカーが、非公開のフォーラムやマーケットプレイスを含むダークウェブを能動的に調査します。これにより、既に漏洩してしまった認証情報や内部文書といった、極めて緊急性の高いインシデント起点の脅威情報を検知します。

ASMによって「攻撃される可能性のある脆弱な資産」の全体像を把握し、ダークウェブ調査によって「既に侵害されている可能性を示す具体的な証拠」を掴む。この2つのデータセットを統合分析することで、膨大なリスクの中から真に対応すべき優先課題を自動的に抽出し、セキュリティ投資対効果(ROI)を最大化することが可能になります。

データコンサルタント/データアナリスト視点での再構築案

件名:データドリブン・セキュリティの実現に向けた、脆弱性管理プロセスの成熟度アセスメントと改善アプローチ
1. セキュリティ統制の再定義:オペレーションからデータガバナンスへ
組織のセキュリティ対策は、個別のオペレーションの集合体ではなく、組織が保有するデータ資産全体を保護するための、体系的なデータガバナンス・フレームワークとして捉える必要があります。

データ流入経路の健全性確保:
外部デバイス(USBメモリ、外付けHDD等)に対するマルウェアスキャンは、「外部から持ち込まれるデータに対する品質ゲート」と位置づけられます。汚染されたデータが内部ネットワークに流入するリスクを水際で食い止める、データインジェスチョン(データ取込)段階における基本的な統制です。異なる汚染レベルのデータセットが混在することは、データ汚染(Data Contamination)のリスクを指数関数的に増大させます。

データ資産へのアクセスコントロール:
パスワード管理の徹底やクリアデスクポリシーの導入は、従業員に対する啓蒙活動であると同時に、「誰が、いつ、どのデータにアクセスできるか」を規定するアクセスコントロールの基本原則です。認証・認可情報の不適切な共有は、アクセスログのトレーサビリティを著しく損ない、インシデント発生時の原因特定と影響範囲の分析を極めて困難にします。

これらの統制は、セキュリティを確保するための基盤データ(ログ、認証履歴等)の品質を維持する上で不可欠な要素です。

2. 脆弱性管理プロセスの現状アセスメント:データ活用の観点から見る課題
現状の脆弱性管理プロセスに対して、データ活用の観点から見ると、多くの組織で共通の課題が浮き彫りになります。以下に示す項目は、データドリブンな意思決定への移行を阻害している典型的なボトルネックです。

[データ収集・統合における課題]

リアルタイム性の欠如: 脆弱性データの収集がバッチ処理や手動に依存しており、攻撃機会の窓(Window of Opportunity)を縮小できていない。

データのサイロ化: 脆弱性データが部門ごと、ツールごとに分散しており、組織横断的なリスクを統合的に分析・評価できるデータ基盤が存在しない。

[データ分析・評価における課題]

手動によるリスク評価: 検出された脆弱性のビジネスインパクト評価や優先順位付けが、属人的な判断に依存しており、客観性と一貫性に欠ける。

単発的な分析: 複数の脅威インテリジェンスや自社の資産情報といった、異なるデータソースを組み合わせた相関分析が行えず、脅威の全体像を捉えられていない。

[可視化・アクションにおける課題]

進捗のブラックボックス化: 修正対応の進捗状況が定量的に可視化されておらず、リソース配分の最適化や遅延の早期発見ができない。

標準化の欠如: 監査やコンプライアンス要件に対応するための報告プロセスが標準化されておらず、アカウンタビリティ(説明責任)を十分に果たせていない。

3. ボトルネックの深掘り:価値を生まないレポーティングプロセス
特に、脆弱性対応後の報告プロセスは、データドリブンな改善サイクルを阻害する最大のボトルネックとなっているケースが散見されます。

高コストな手動レポーティング: 報告書の作成に多大な工数がかかっており、分析担当者が本来注力すべき、より付加価値の高い分析業務の時間を圧迫している。

データの非蓄積と学習機会の損失: 過去の対応履歴、根本原因、効果的だった対策といった貴重なインシデントデータが、構造化されたナレッジとして蓄積されていない。これにより、組織としての学習が進まず、同様のインシデントが再発する原因となっている。

フィードバックループの欠如: 対応結果から得られたインサイトが、関連部門や担当者に適切にフィードバックされず、プロセス改善のアクションに繋がっていない。

データ品質の不統一: 報告フォーマットが標準化されていないため、報告データ全体の品質にばらつきが生じ、時系列での比較分析や傾向把握を困難にしている。

現状のレポーティングは、コンプライアンスのためだけの「コスト」になっており、将来のリスクを低減させるための「投資」として機能していません。これは、過去のデータから未来を予測し、アクションを最適化するというデータ分析の本来の目的が達成できていない状態と言えます。

APIトランザクションデータの分析から紐解く、潜在的データ漏洩リスクと防御戦略

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は、APIをサービス間連携やデータ流通を司る「パイプライン」として、ビジネスエコシステムの中心に位置付けました。しかし、このデータパイプラインは外部に直接公開されているため、攻撃者によるデータ窃取の主要な侵入口(エントリーポイント)となっています。問題の本質は、APIの柔軟性と多様性が、従来の画一的なセキュリティモデルとの間に深刻なミスマッチを生んでいる点にあります。

課題のデータ的再定義:なぜAPIの脆弱性は見過ごされるのか?
APIのリスク評価が困難を極める理由は、その通信が「正常か異常か」を判断するための**コンテキストデータ(文脈)**が、従来のセキュリティシステムでは決定的に不足していることに起因します。

APIセキュリティの脅威を類型化した「OWASP API Top 10」は、データ漏洩に直結する典型的な「異常リクエストパターン」のカタログと解釈できます。例えば、「BOLA(不適切なオブジェクトレベル認可)」という脅威は、APIリクエストをデータとして分析すると「リクエストに含まれるユーザーIDと、アクセス対象データの所有者IDが論理的に一致しない」という異常なデータパターンとして観測されます。

しかし、サービスごとに異なるAPI仕様(スキーマ)と、日々生成される膨大なAPIトランザクションログを人手で突合し、このようなコンテキストを要する異常パターンをリアルタイムで発見することは、現実的に不可能です。これが、多くの企業が効果的な防御策を持てていない根本原因です。

解決アプローチ:データ分析に基づくAPIセキュリティの高度化
効果的なAPIセキュリティは、APIトランザクションデータを継続的に収集・分析し、正常な振る舞いのベースラインから逸脱する異常を自動的に検知するデータドリブンなアプローチを必要とします。このアプローチは、主に2つの分析プロセスで構成されます。

脆弱性診断(リスクの静的・動的分析): APIの設計情報(仕様書)と実際の挙動データを突き合わせ、潜在的なリスクポイントを網羅的に洗い出し、定量的にスコアリングします。SCSKが提供する脆弱性診断は、実際の攻撃シナリオに基づいたテストデータを用いて、機械的な分析だけでは発見困難なビジネスロジック上の脆弱性まで可視化します。

リアルタイム防御(振る舞い検知): 稼働中のAPI通信を常時監視し、機械学習などを活用して正常な通信パターンをモデル化。そのモデルから逸脱する異常なリクエストパターンをリアルタイムで検知・ブロックします。

実践的ソリューション:「F5 XC WAAP」によるAPIデータ分析と防御の自動化
「F5 XC WAAP」のようなWAAP(Web Application and API Protection)は、従来のWAFの機能を超え、APIの仕様(スキーマ)データを読み込み、それに準拠しないリクエストを自動的にブロックする強力なデータ検証エンジンを備えています。

脆弱性診断によって得られた「検出された脆弱性」という分析結果データと、WAAPの防御ポリシー設定を連携させることで、極めて精度の高い防御モデルの構築が可能です。これは、自社のAPIがどのようなデータを、どのように外部とやり取りしているかを正確に把握・分析し、プロアクティブなデータガバナンスを実現するプロセスに他なりません。

APIセキュリティへの投資は、インシデントを防ぐための受動的なコストではなく、企業の最重要資産である「データ」の完全性を守り、DXを安全に推進するための戦略的投資です。APIセキュリティに関する課題を持つセキュリティ運用担当者は、まず自社のAPIトランザクションデータを分析対象と捉え、リスクを定量的に評価することから始めるべきです。

【テーマ1:構成管理の自動化】

IT構成情報を「マスターデータ」として捉え、品質劣化を防ぐ自動化アプローチ
ITシステムの構成情報は、ビジネスを支える重要なマスターデータです

ITシステムの構成情報は、単なる技術情報ではなく、安定した事業運営を支えるための極めて重要な「マスターデータ」です。しかし、手動による管理運用は、このマスターデータの「データ品質」を著しく劣化させ、結果としてセキュリティリスクの増大やシステム障害の根本原因となっています。特に、動的な変更が頻繁に発生するクラウド環境において、手動更新ではデータの「鮮度」を維持することは不可能です。

データ品質の劣化がもたらすビジネスリスク

手動運用は、データ品質の観点から以下の問題を引き起こします。

データの陳腐化と不整合: 人的ミスによる更新漏れや、部門ごとにサイロ化された管理は、データの不整合や陳腐化を招きます。これは、全社的なデータガバナンスを阻害し、正確な状況把握を困難にします。

トレーサビリティの欠如: 構成情報の変更履歴が追跡できなければ、障害発生時に「いつ、誰が、何を、なぜ変更したのか」という原因究明に必要な時系列分析が不可能になります。これは、迅速なインシデント対応を妨げる致命的な欠陥です。

構成データの自動収集・一元管理による品質の担保

これらの課題を解決するアプローチは、IT資産に関するマスターデータ(構成情報)を自動で収集し、一元的なデータベース(CMDB)で管理することに尽きます。

在るサイバーセキュリティ製品は、まさにこの構成データの自動収集と鮮度維持を実現するためのデータ収集・統合プラットフォームです。オンプレミス・クラウドを問わず構成データを自動で収集し、常に最新の状態に保ちます。さらに、関連製品群と連携させることで、収集した構成データをインシデントデータや変更管理データと紐付け、より高度で多角的な分析を可能にするエコシステムを構築します。

【テーマ2:内部情報漏洩対策】
データアクセスログ分析による内部情報漏洩の予兆検知と防御
インシデントデータの分析から見える、対策の方向性

情報漏洩インシデントに関するデータを分析すると、その大部分が外部からの高度なサイバー攻撃ではなく、内部の人間が関与するプロセスに起因していることが明らかになっています。この事実から、セキュリティ対策の焦点を従来の「境界防御」から、「データそのもの」と「データへのアクセスログ」を中心としたアプローチへシフトする必要性が示唆されます。

内部不正の兆候を「異常検知」で捉える

「うっかりミス」や「ルール違反」といった人的な事象を、データ分析の観点では「データアクセスログの中に現れる異常なパターン」として捉えることができます。

重要なのは、従業員の通常業務におけるデータアクセスパターン(いつ、どのデータに、どのくらいの頻度でアクセスするか等)を継続的に分析し、「ベースライン」を定義することです。このベースラインから逸脱する行動(例:退職間近の社員による大量の顧客データダウンロード、深夜の機密情報へのアクセス)を「異常」として自動検知し、リスクスコアリングするアプローチが、インシデントを未然に防ぐ鍵となります。

DLPによるデータ中心の監視とログ分析

DLP(Data Loss Prevention)は、このデータドリブンなアプローチを実現するための技術的基盤です。

データの分類とコンテキスト付与: まず、組織内のデータを機密度に応じて分類・ラベリングし、「どのデータが重要か」というコンテキストを付与します。

ポリシーベースの制御とログ生成: 次に、定義されたポリシーに基づき、重要データに対する不正な操作(コピー、送信、印刷など)を検知・ブロックし、その全てを詳細なアクティビティログとして記録します。

このアクティビティログを継続的に監視・分析することで、インシデントの予兆検知や、発生後の迅速な原因究明(フォレンジック分析)が可能になります。内部情報漏洩対策は、ルールやリテラシーに依存するだけでなく、データ分析に基づいた客観的かつ技術的なアプローチへと転換することが不可欠です。

データ中心アプローチによる技術情報・内部不正リスクの可視化と制御

データ資産の分散とトレーサビリティの喪失

製造業において、設計図面や仕様書などの技術情報は、競争優位性を左右する最も重要なデータ資産です。しかし、サプライチェーンのグローバル化に伴い、このデータ資産は組織の管理境界を越えて分散し、その利用状況を追跡する「トレーサビリティ」が失われつつあります。従来の境界型セキュリティは、一度正規の手順で外部に渡ったデータが、その後どのように扱われるかを監視・制御できません。これは、データガバナンスにおける重大な欠陥であり、経済産業省が示すガイドラインも、データそのものに対する多層的な管理の必要性を示唆しています。

データ中心(Data Centric)セキュリティへの転換

この課題を解決するためには、ネットワーク境界ではなく「データそのもの」を保護・管理する**データ中心(Data Centric)**のアプローチへと思考を転換する必要があります。このアプローチの核心は、以下の3点です。

データへの直接的な保護: ファイル自体を暗号化し、不正なアクセスを無効化します。

アクセスポリシーの埋め込み: 「誰が(Who)」「どのデータに(What)」「いつまで(When)」「何をしてよいか(How)」というアクセスポリシーをデータに直接関連付け、制御します。

アクティビティログの完全な収集: データへの全ての操作(閲覧、編集、コピーなど)を、ファイルが社内外のどこにあってもアクティビティログとして収集し、完全なトレーサビリティを確保します。

このようなソリューションは、このデータ中心アプローチを実践するための技術基盤です。CADファイルを含むあらゆるデータに対し、上記の制御とログ収集を実現し、これまでブラックボックスだった社外でのデータ利用状況を可視化します。

統計データが示す内部不正リスクの重大性

データに基づいたリスク評価を行うと、内部不正の脅威は看過できないレベルにあります。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」では長年にわたり上位に位置し、東京商工リサーチの調査データも、内部関係者による「不正持ち出し」が大規模な情報漏洩に繋がっている実態を明らかにしています。

多くの企業で外部脅威対策が優先される背景には、「誰が、いつ、どの重要データにアクセスしたか」という基本的なアクセスログデータが収集・分析されていないという問題があります。リスクを定量的に把握できていないことが、対策の遅れに直結しているのです。

データ分析を阻む障壁と、その解決策

情報漏洩対策の実行を阻む「何から手をつければよいか分からない」「運用負荷が高い」といった課題は、データ分析の観点から見ると以下のように整理できます。

分析対象データの不在: 属人的な運用や部門ごとにサイロ化したルールは、分析の基盤となる一貫性のあるログデータが生成・収集されていない状態を意味します。

手動分析による高負荷: ログの監視やレポート作成が手動で行われている場合、それは非効率なデータ処理プロセスであり、継続的な分析を困難にします。

データ中心のアプローチは、これらの課題に対する直接的な解決策となります。これまで追跡不能だった社外のデータアクセスログも含めて一元的に収集・分析できる基盤を構築することで、全社的なデータガバナンスを確立し、内部不正を含む様々なリスクをデータに基づいて可視化・制御することが可能になるのです。まずは最も重要なデータ資産からこのアプローチを適用し、データドリブンなセキュリティ体制への第一歩を踏み出すことを推奨します。

【テーマ1:IT構成管理】

IT構成データを一元化し、分析活用するためのデータプラットフォーム
構成管理の自動化とは、IT資産データの品質を担保し、分析基盤を構築するプロセスです

構成管理の自動化は、単なる作業効率化に留まりません。その本質は、組織内に分散するIT資産の構成データを自動収集し、**データの品質(鮮度、完全性、一貫性)**を維持しながら、一元的な分析基盤(CMDB)を構築することにあります。手動管理によるデータ品質の劣化は、脆弱性の影響範囲の特定など、迅速なリスク分析を著しく阻害する要因となります。

データ収集(ETL)から分析・活用までのプロセス

上記のようなツールは、IT資産に関するマスターデータを生成・維持・活用するためのデータプラットフォームと捉えることができます。

データ収集プロセスの自動化と品質維持:
SSHやAPIなど多様なプロトコルに対応したエージェントレスの自動収集機能は、効率的なデータ収集(ETL)プロセスを意味します。定期的な自動更新により、データの鮮度と完全性を維持し、情報の陳腐化という根本課題を解決します。また、システムからは取得できない管理者情報などをタグとして付与する機能は、分析軸を増やすためのメタデータ付与に他なりません。

データの可視化と時系列分析:
収集・一元化された構成情報は、ダッシュボード上で可視化され、変更履歴は時系列で表示されます。これは、データのトレーサビリティを確保し、時系列分析を可能にすることを意味します。インシデント発生時の原因究明や変更管理の監査を、客観的なデータに基づいて行うための基盤となります。

データ連携による高度な相関分析:
ITIL準拠のサービスデスクツールなどとの連携は、異なるデータソース(構成データ、インシデントデータ等)を統合し、より高度な相関分析を可能にします。これにより、これまでサイロ化されていた部門間のデータが繋がり、全社的なデータガバナンスが強化され、インシデント対応の迅速化や予測的なリスク管理へと繋がります。企業の既存データエコシステムに柔軟に組み込めるAPI連携も、その価値を高めています。

【テーマ2:ファイル単位の情報防御】
非構造化データに対するガバナンスとトレーサビリティの確立
データ中心(Data Centric)アプローチによるリスク管理

ITインフラの構成情報(構造化データ)だけでなく、ビジネス価値の源泉であるファイル(非構造化データ)の管理は、データガバナンスにおける新たな課題です。従来の境界型セキュリティでは、一度組織の管理外に出たファイルのライフサイクルを追跡できず、「データのトレーサビリティ」が完全に失われます。

この課題を解決するのが、ネットワーク境界ではなく「データそのもの」にガバナンスを適用する「データ中心(Data Centric)」のアプローチです。

このようなソリューションは、このアプローチを技術的に実現します。ファイルそのものに暗号化を施すだけでなく、「アクセスポリシー(誰が、何を、いつまで、どうできるか)」を直接埋め込みます。これにより、ファイルが海外拠点やサプライチェーンのどこに存在しても、定義されたポリシーが一貫して適用されます。

最も重要なのは、これによりファイルへの全ての操作がアクティビティログとして記録され、社内外を問わず完全なトレーサビリティが確保される点です。これは、これまで収集・分析が不可能だった領域のデータを可視化し、サプライチェーン全体にわたるデータ利用状況の分析を可能にします。データに基づきリスクを最小化する、次世代の情報防御術と言えます。

データガバナンスの確立によるシャドーIT・内部不正リスクの可視化と制御

データガバナンスの欠如がもたらす「シャドーIT」という潜在リスク

クラウド活用の進展は、部門単位でのIT導入を加速させる一方、企業全体の「IT資産マスターデータ」に登録されていない、管理外のアセット、いわゆる「シャドーIT」を増殖させています。これは、データガバナンスの欠如がもたらす典型的な課題です。管理外のアセットは、脆弱性スキャンやパッチ管理のデータから漏れ、重大なセキュリティホールとなるだけでなく、コスト管理データからも抜け落ち、無駄な支出の温床となります。

このリスクを定量的に把握し管理するためには、まず網羅的なデータ収集が不可欠です。「Senju/CM」のエージェントレスな自動収集機能は、IT資産に関するマスターデータの網羅性を高め、データの完全性を担保するためのスキャニング機能と捉えることができます。管理者不明のサーバーや遊休サーバーを洗い出すプロセスは、データに基づきセキュリティリスクとコストを最適化する「データクレンジング」の一環です。

正確なマスターデータなしに、データドリブンな意思決定(インシデント対応、リソース最適化など)は不可能です。IT資産の構成管理は、全てのデータ分析の基盤となるため、トップダウンで推進すべき重要なテーマです。

従業員の行動データを分析し、内部不正の兆候を検知する

IT資産(モノ)のデータ管理に加え、従業員の行動(ヒト)に関するデータ分析も不可欠です。内部不正対策が後手に回る根本原因は、「誰が、どのデータに、どのようにアクセスしたか」というアクティビティログが、客観的なデータとして収集・分析されていない点にあります。

属人化・現場任せの運用は、「データ」ではなく「個人のモラル」に依存した極めて脆弱なリスク管理です。「Gardit」のような情報漏洩対策ツールは、このアクティビティログを収集・分析し、内部不正のリスクをデータとして可視化・定量化するためのプラットフォームと位置づけられます。これにより、全社的なデータガバナンスを確立し、勘や経験に頼らない客観的な統制を実現します。

サプライチェーンに拡散する「データ資産」のトレーサビリティ確保

データ管理の対象は、社内のIT資産や従業員の行動に留まりません。製造業における技術情報のように、企業の競争優位性を支えるデータ資産は、サプライチェーン全体に拡散しています。一度、正規の手順で外部に渡ったファイルは、その後の利用状況を示すアクティビティログが追跡不能となり、「データのトレーサビリティ」が完全に失われます。

経済産業省が示すガイドラインは、まさにこの課題に対し、社内外を問わず、データのライフサイクル全体にわたる包括的なデータガバナンスの確立を求めていると解釈できます。

セキュリティとガバナンスの強化は、IT資産(モノ)、人の行動(ヒト)、そして社内外に広がる**情報資産(データそのもの)**という3つの領域のデータを、いかに網羅的に収集し、相関分析できるかにかかっています。これら全てのデータを統合的に分析する基盤を構築することこそが、真にデータドリブンなリスク管理体制への道筋です。

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