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ハイブリッドクラウド・マルチクラウド(9)

データコンサルタントの視点から、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドの各インフラの特徴や選定基準を、企業のIT戦略に照らして段階的に説明する際は、コスト、柔軟性、セキュリティなどの観点を踏まえ、より戦略的な視点での整理が求められます。

オンプレミス、パブリッククラウド、そしてプライベートクラウドの特性
ITインフラの選定における要点

オンプレミスやパブリッククラウドというITインフラに関する選択肢は、企業の業務内容、セキュリティ要件、運用コストなどに大きな影響を与えるため、それぞれの特徴を理解し、慎重に選定する必要があります。ここでは、これらのインフラ環境を段階的に比較し、それぞれの強みと課題を分析します。

オンプレミス
自社内またはデータセンターに設置するサーバー環境

特徴:

カスタマイズ性の高さ:自社の業務要件に合わせた自由なカスタマイズが可能です。特に、既存のシステムとの高度な統合が求められる場合には柔軟に対応できます。
セキュリティとデータ管理:オンプレミス環境では、データの物理的な制御が容易であり、外部にデータを出せない業務や、法的・コンプライアンス的に厳格な要件を満たすために適しています。
コスト負担:初期投資や保守運用のための人件費、IT資産の管理にかかるコストが大きくなるため、資本的支出(CAPEX)が重くなります。
パブリッククラウド(IaaS)
クラウドベンダーが提供するインフラリソースを利用するサーバー環境

特徴:

初期費用の低さと柔軟性:初期投資を抑えることができ、利用状況に応じたリソースのスケールアップやスケールダウンが容易に行えます。従量課金制のため、スモールスタートや試験運用にも適しています。
迅速な導入:オンプレミスに比べ、サービスの立ち上げまでの時間が短く、迅速にITインフラを構築・利用開始できます。また、保守運用をクラウドベンダーに依存できるため、内部リソースを軽減できます。
コストのリスク:大量のリソースを長期間利用する場合、オンプレミスに比べて運用コストが高額になる可能性があり、特に計画的な利用が求められます。
プライベートクラウド
専有環境によるクラウド運用、または自社データセンターにクラウド同様の環境を構築

プライベートクラウドは、企業専用のクラウド環境を提供し、オンプレミスの管理の自由度とパブリッククラウドの仮想化技術を組み合わせたソリューションとして注目されています。

特徴:

セキュリティと制御の柔軟性:プライベートクラウドは、ファイアウォールの内部で運用するため、セキュリティとプライバシーを自社のコントロール下に置くことができ、機密性の高いデータや業務プロセスにも対応可能です。
オンプレミス同様の連携:既存のオンプレミス環境や基幹システムと容易に統合でき、カスタマイズ性に優れています。
仮想化技術の活用:パブリッククラウドと同様に仮想化やコンテナ技術を利用することで、アプリケーションとインフラの分離が可能になり、効率的な運用が実現できます。
スケーラビリティとコスト:プライベートクラウドのスケールアップは物理的なハードウェアの導入が必要なため、パブリッククラウドほど柔軟ではありません。ハードウェアの調達や導入にも時間がかかるため、コスト面でパブリッククラウドよりも不利になる場合があります。
ハイブリッドクラウドへの流れ

近年では、オンプレミス環境とプライベートクラウド、あるいはパブリッククラウドの組み合わせを活用する「ハイブリッドクラウド」の導入が進んでいます。これにより、重要な業務データはオンプレミスやプライベートクラウドで管理し、スケーラブルなリソースはパブリッククラウドで活用するという柔軟な運用が可能です。特に、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)の発展により、オンプレミス環境でもクラウドのような拡張性を持つことができるため、従来のインフラ運用がより効率化されています。

ITインフラの戦略的選択

企業は、業務要件や運用コスト、セキュリティ要件に基づき、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドをどのように組み合わせるかを慎重に検討する必要があります。全ての業務が一つの環境で最適化されるわけではないため、各環境の特性を理解し、戦略的にインフラを選定することが求められます。

このように、ITインフラの選定は、企業の業務内容やリソースに応じて最適なバランスを見つけることが重要です。それぞれの選択肢の長所と短所を踏まえ、将来的な拡張性と運用コストを見据えたインフラ戦略を立案することが成功の鍵となります。

データコンサルタントの視点から、データ活用に関わるビジネスに対して具体的なインサイトや戦略的な示唆を提供できるよう、全体的に、より実務的で具体的なアドバイスを含めた表現にしました。

ハイブリッドクラウドとは?

ハイブリッドクラウドとは、2種類以上のプラットフォーム(オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドなど)を組み合わせて、システムやインフラを構成するクラウド運用モデルを指します。これにより、各プラットフォームの強みを活かしながら、柔軟でスケーラブルなIT環境を実現できます。英語の「hybrid」には「混合」「融合」の意味があり、この言葉通り、異なるシステム間のシームレスな統合を目的としています。

DataOps の成熟度評価

企業や組織におけるDataOps(データ運用プロセスの最適化)の導入状況は、業界によって異なります。最近の調査によると、全体の36%の組織が「成熟段階」にあると回答しており、複数のデータ運用プロセスが最適化され、実行されています。しかし、64%の組織はDataOpsの計画・導入・運用に関してまだ改善の余地があると見られています。

重要な点は、DataOpsの成熟度は一時的なものではなく、継続的な進化が必要であるということです。たとえ現在「成熟」と見なされている組織であっても、ビジネスニーズに応じてリアルタイムのデータを効率よく提供し続けるためには、絶え間ない改善と変革が求められます。つまり、DataOpsは単なる技術的実装ではなく、企業全体のデータ戦略とリンクした、長期的な競争優位性を確保するための基盤であると考えるべきです。

ハイブリッドクラウドの特徴から読み解く
クラウド運用の課題と解決策

クラウドサービスの普及に伴い、オンプレミス環境とパブリッククラウド、プライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドが一般的になりつつあります。この運用モデルは、各サービスの利点を最大限に活かすことが可能ですが、一方で、新たな運用課題も浮き彫りになっています。例えば、複雑なインフラの管理に必要な知識が増大し、リソースの管理が煩雑化することが挙げられます。

また、異なるクラウドサービス間での料金体系の違いもコスト管理を複雑にしています。これらの課題を解決するためには、統合管理ツールの導入や、自動化を活用した運用の効率化が鍵となります。

ハイブリッドクラウドとは? 類似の「マルチクラウド」との違い

「ハイブリッドクラウド」は、オンプレミスとクラウド、または複数のクラウドサービスを統合して利用する運用モデルを指します。一方、「マルチクラウド」は、複数のクラウドプロバイダーを使い分ける戦略であり、異なるクラウドサービスを独立して運用する点が特徴です。ハイブリッドクラウドは、異なる環境間のデータやアプリケーションのシームレスな連携が重視されるのに対し、マルチクラウドは特定のサービスに依存せず、柔軟性と冗長性を強化する目的があります。

ハイブリッドクラウド運用管理の落とし穴と解決策

ハイブリッドクラウドを導入することで、システムの柔軟性やスケーラビリティが向上しますが、次のような運用上の課題も発生します:

全体像の把握が困難:複数のプラットフォームが絡むため、システム全体を俯瞰するのが難しくなります。これは、統合管理ツールや可視化ツールを活用することで解消できます。

必要な知識が増加:複数の技術スタックを管理するため、運用担当者に求められるスキルセットが広がります。スキルアップと自動化ツールの活用が鍵です。

管理工数の増大:手動での管理が増えると、工数がかさみます。自動化と監視ツールの導入によって、管理作業の効率化を図ることが重要です。

料金体系の違い:異なるクラウドサービスの料金体系を管理することは容易ではありません。定期的なコストモニタリングと予算管理ツールの導入が推奨されます。

ハイブリッドクラウドを効率良く運用するためには、これらの課題に対して適切な技術と戦略を組み合わせる必要があります。

データコンサルタントの視点から、マルチクラウドおよびハイブリッドクラウドの強みや課題を明確にし、導入の戦略的なメリットをビジネスニーズに関連付けて説明します。さらに、データ増加への対応やコスト最適化の観点も強調します。

1. マルチクラウドの強みと活用メリット

マルチクラウド戦略は、異なるクラウドサービスプロバイダーの強みを組み合わせることで、ビジネスに多様な選択肢を提供します。たとえば、ハイブリッドクラウドでは、パブリッククラウドの柔軟性とプライベートクラウドのセキュリティを統合し、運用の最適化が可能です。さらに、マルチクラウド環境では、各クラウドサービスの特色に基づいて最適な機能を配置し、地理的なロケーションやネットワークの分散によるリスク管理を実現します。これにより、システムの柔軟性とレジリエンスが向上し、ビジネスリスクが軽減されます。

2. ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのTCO最適化

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの組み合わせにより、企業は柔軟な選択肢を持ち、TCO(総所有コスト)の最適化が期待できます。特に、基幹業務システムなど長期的な利用が求められるシステムでは、クラウド環境の柔軟性を活かして、ビジネスの変化に応じてシステムを進化させることが不可欠です。このような環境では、クラウドプロバイダー間でのリソース調整や最適なコスト管理が、持続可能なITインフラを支える鍵となります。

3. クラウドの柔軟性とパブリッククラウドの役割

パブリッククラウドサービスは、ITインフラストラクチャにおいてますます重要な役割を果たしています。特に、2017年には新たなオンプレミスインフラを導入せずに、クラウドストレージを利用することでストレージコストを抑えるというIT戦略が注目されました。クラウドの柔軟性とスケーラビリティは、企業にとって迅速な拡張や容量調整を可能にし、運用コストの最適化を図る上で大きなメリットとなっています。

4. データ増加とマルチクラウドインフラの主流化

マルチクラウドインフラストラクチャが標準となった現代において、意思決定者はデータの急激な増加に対応するため、クラウドを重要なソリューションと見なしています。クラウドのスケーラブルな特性により、企業はオフプレミスの無限に近い容量にアクセスでき、地理的な場所を問わずにデータを迅速かつ容易に利用できる環境を整備できます。これにより、データアクセスの柔軟性が高まり、ビジネスのスピードと効率性が向上します。

5. マルチクラウドの管理課題とコストの最適化

一方で、マルチクラウド環境が複雑になるにつれ、その管理は容易ではありません。特に、大量のデータを複数のクラウド間で移動させる場合、時間やコストが大幅に増加するリスクがあります。効率的なクラウドリソースの管理には、インテリジェントなストレージ管理が不可欠であり、これが不十分であれば、運用効率の低下やコストの増加を引き起こす可能性があります。そのため、データ移動の自動化や管理負担の軽減が、マルチクラウド戦略の成功において重要な要素となります。

6. HPEのソリューションによるマルチクラウド管理の支援

HPEは、クラウド対応テクノロジーを通じて、データ移動の課題を解決し、パブリッククラウドの価値を最大限に引き出すことを目指しています。HPEのビジョンは、顧客が本番環境からビッグデータ、バックアップまで、あらゆるワークロードをクラウドやエッジ、オンプレミスのリソースを組み合わせて効率的に運用できるように支援することです。このビジョンを具体化した製品には、HPE Cloud VolumesやHPE Cloud Bank Storage、HPE OneSphereなどがあり、企業が複雑なマルチクラウド環境を効率的に管理し、ビジネスの成長を支えます。

データコンサルタントの観点では、マルチクラウドの導入は企業に大きな柔軟性とコスト最適化の可能性を提供しますが、その管理には適切な戦略とインテリジェントなツールが必要です。HPEのソリューションは、データ移動や管理負担を軽減し、クラウドリソースの最適な活用を可能にするため、企業にとって強力な支援となるでしょう。

ハイブリッドクラウド戦略の最適化

アプリケーションのリファクタリング

アプリケーションのリファクタリングは、コードレベルの調整を通じてクラウド移行の障害を取り除く重要なプロセスです。リファクタリングの第一歩として、クラウドへの移行の制約となるコードの問題領域をスキャンする必要があります。これには.NETやJavaのコードを分析し、クラウド環境へ適応しやすくするための障害箇所を特定する機能が求められます。実証済みのソフトウェアツールを活用することで、こうしたコードスキャンを効率化できます。また、リファクタリングにはクラウドサービスに関する知識のみならず、セキュリティおよびインフラストラクチャに関する専門知識も必要であるため、チームのスキルセットの多様化が鍵となります。

アプリケーションの廃止

アプリケーションの廃止は一見シンプルなタスクに見えますが、効率的な廃止を通じたコスト削減の可能性を見逃している企業も少なくありません。一般に、データセンター内のアプリケーションの約30%はクラウドプラットフォーム上で提供されているサービスと重複しており、これらを削減することで大幅なコストメリットが得られます。また、一部のアプリケーションはコンプライアンス維持を理由にオンプレミスで稼働していますが、クラウド上での同等な対応が可能であれば廃止も視野に入れるべきです。不要となったアプリケーションをシステム上からオフにし、必要に応じてのみサービスを利用する運用モデルに切り替えることで、さらに効率的なリソース利用が実現します。

アプリケーションのリプレース

アプリケーションのリプレースは複雑なプロセスであり、事業部門およびアプリケーションの所有者との連携が不可欠です。特にデータセンター全体の閉鎖を進める場合には、移行ワークベンチを使用し、詳細なプロセスと手順を確立する必要があります。リプレースにはアプリケーションごとに最適なクラウド対応策を見極めるプロセスが重要です。

アプリケーションの保持

クラウド移行を進めても、戦略上すべてのアプリケーションを移行するわけにはいかない場合があります。重要なのは、保守が必要なアプリケーションのサポート終了のタイミングとプラットフォーム撤去計画です。クラウドとオンプレミスで保つシステムの接続や依存関係を適切に管理することが、全体のクラウド戦略の成功に影響します。特にレガシーシステムや大規模なデータベースに関しては複雑な接続が絡み合っていることが多く、これらを整理・統合することがデータセンターの統合や移行の円滑化につながります。

成功に向けた最適なプロセスとツールの選定

ハイブリッドクラウド移行の成功には、包括的かつ戦略的なリソース計画が必要です。CBO(クラウドビジネスオフィス)のような組織構造の整備や、Right Mix Advisorなどの最適化ソリューション、そして移行ワークベンチの活用が、効果的なリソース配分と移行計画に欠かせません。

ハイブリッドクラウド導入における組織代表者のインセンティブと協働の重要性
インセンティブの影響

ハイブリッドクラウド導入プロジェクトにおいて、組織代表者へのインセンティブが意思決定や実行に及ぼす影響は非常に重要です。このインセンティブには、ボーナスやKPI、予算配分、OKR、SLA、収益目標、「ランドアンドエクスパンド」戦略目標などが含まれます。これらの指標は、プロジェクト成功のためのモチベーションを向上させ、意思決定の迅速化や実行の確実性を高める役割を果たします。

業績改善のロードマップとの整合性

事業部門の業績改善とハイブリッドクラウド導入のロードマップの整合性を保つことは、長期的な投資効果を最大化するために不可欠です。IT部門と事業部門が一致した目標を掲げることで、クラウド導入のメリットを最大限に引き出すための優先順位が明確化されます。このため、各部門がクラウド導入に関連するリソース要求やプロジェクトのタイムラインを調整するプロセスが必要です。

コラボレーションの促進

代表者はプロジェクトを成功に導くため、チームメンバーに対して明確な期待値を伝え、プロジェクトへの積極的な協力を促す必要があります。日常業務で部下に適切な裁量権を与えることで、各メンバーが独立して行動しつつも全体の目標に対して意識を持ち続ける環境が整います。このように、代表者は自身のチーム内で協力を促し、プロジェクト全体の生産性向上を図ります。

組織代表者会議のファシリテーション

効果的なコミュニケーションとコラボレーションの実現には、会議や交流の場において研修を受けた適格なファシリテーターを任命することが有効です。会議の質や成果の向上を目指し、協力的な雰囲気と文化を醸成することで、議論の質を高め、プロジェクト全体の質の向上につなげることができます。

組織代表者会議での課題解決とコラボレーション

組織代表者会議が設立された後には、ハイブリッドクラウド運用における5つの主要課題への対策が求められます。この会議を通じて、エコシステム全体で共有する課題や各パートナーの役割におけるグレーゾーンに対して積極的に取り組むことが可能となります。これにより、各パートナーとの明確な連携を確保しつつ、潜在的な課題を未然に防止できるようになります。

オープン・コラボレーションとガレージモデルの活用

ハイブリッドクラウド導入プロジェクトにおいては、外部とのオープン・コラボレーションが効果的です。特にガレージモデルを活用することで、迅速なプロトタイプ開発やアイデアの実現が促進され、複雑な課題への対応が可能となります。このモデルでは、複数のパートナー間での柔軟な協力が行われることで、より高度なイノベーションや効果的な問題解決が実現されます。

ハイブリッドクラウド環境におけるインフラストラクチャとデータ管理の課題と解決策
インフラストラクチャ設計の迅速な対応の必要性

現代のIT環境において、問題が表面化してから従来型インフラ設計や調達プロセスに依存するのは、ビジネスの即応性を低下させます。パブリッククラウドサービスはリソースの柔軟な利用を可能にしますが、これによりオンプレミス型のデータセンターパラダイムが変化し、異なるコスト構造が課題となります。特に、クラウド内でのデータアクセスやデータ移動がコスト増に直結するため、クラウド対応型インフラの構築と迅速な調整が必要です。

ハードウェアからデータへの視点転換

今日の膨大なデータ容量に対し、ワークロードごとにハードウェアインフラを調整することは、ハードウェアの老朽化や新技術の登場と共にさらに複雑化しています。データの柔軟な移動・最適化には、必要に応じて「as a Service」で提供される柔軟なインフラ機能が求められ、これによりビジネスニーズの変化に迅速に対応するインフラストラクチャが可能になります。

HPEの革新的なストレージソリューション

HPEは、エッジからクラウドへのデータ移動を簡素化し、データセンターインフラの最新化とコスト最適化を進めています。HPEのストレージテクノロジー、特にNimble、3PAR、SimpliVityといったソリューションは、データセンターのサポートと新技術の導入を補完し、最も広範で柔軟なストレージポートフォリオを提供しています。これにより、データセンターレベルの管理や導入コストの低減が可能です。

AIを活用したインテリジェントインフラストラクチャ

データの予測は困難であり、組織の将来ニーズに対応できるストレージインフラが求められています。ESGの調査によれば、22%のITマネージャーがデータ管理の最適化や自動化に課題を感じており、17%がストレージの使用状況の分析やレポートに課題があると答えています。HPEのAI主導インフラストラクチャは、現在および将来のアプリケーション環境を把握し、インフラ全体で問題を予測して事前に対策を取るためのインテリジェンスを備え、IT管理の負担を軽減します。

ハイブリッドクラウドにおけるアプリケーションニーズとITイニシアティブの加速

業務アプリケーションの複雑な管理要件

多くのIT部門で、業務アプリケーションのサポートが最優先課題となっています。企業や組織には新旧のアプリケーションが共存し、それぞれが異なるパフォーマンス、信頼性、セキュリティ、そして機能の要件を持つため、アプリケーション管理は非常に複雑です。また、これらのアプリケーションは中核的なビジネス運用や市場競争力に直接影響するため、それぞれがもたらすビジネス価値も異なります。

ITモデルの再評価とアプリケーション最適化

現在、多くのIT部門が既存アプリケーションの最適なサポートを確保しつつ、革新的なアプリケーション開発環境を構築する新しいITモデルの評価を行っています。目指すビジネスバリューに沿い、ビジネス成長を支えるアプリケーション活用に向けて、以下の分野への投資が加速しています:

データセンターモダナイゼーションによる統合ソリューション: 多くの企業が、データセンターの容量、効率、運用に改善の余地があると認識しています。仮想化技術が導入されている中、さらにストレージやネットワークにも仮想化の概念を取り入れ、統合されたソフトウェア主導のデータセンターを構築する動きが進んでいます。ソフトウェアベースのインフラストラクチャへの移行により、オンプレミスシステムの運用と管理の効率が飛躍的に向上します。

ハイパーコンバージドインフラストラクチャの導入: 最新のデータセンターは、あらかじめ統合および構成されたハイパーコンバージドインフラストラクチャを採用し、管理効率を高めています。これにより、クラウド戦略を包括的に実行し、ハイブリッドクラウドによる柔軟なIT運用が可能になります。

HPEによるハイブリッドクラウドとデータ保護ソリューションの展望

HPE StoreOnceとCloud Bank Storageの統合によるデータ保護の強化

HPE StoreOnceユーザーは、HPE Cloud Bank Storageライセンスを追加するだけで、既存のHPE環境にCloud Bank Storageを統合できます。さらに、HPE Recovery Manager Central (RMC) と統合されたソリューションは、エンタープライズレベルで目標復旧時点(RPO)と目標復旧時間(RTO)を達成するための信頼性を提供します。このソリューションにより、パブリッククラウドベースのインフラストラクチャリソースを活用したオフサイトデータ保護が実現し、柔軟かつコスト効率の高いリカバリ戦略を構築できます。

エンタープライズITにおいて、検証済みのRPOとRTOの達成は、データ依存度の高いビジネス環境で重要な要素です。データが迅速かつ信頼性高くリカバリされることで、ITサービスの中断によるビジネスリスクが軽減され、組織内外での信頼を向上させます。

HPE OneSphereによる統合ハイブリッドクラウド管理

HPE OneSphereは、ハイブリッドクラウドインフラストラクチャのための統合管理ソリューションとして、開発者、事業部門 (LoB)、およびIT部門のニーズを一元化したas-a-Service管理環境を提供します。多くの企業において、チーム間の連携が理想的であっても、管理と制御における制約が複雑化を招き、連携を阻害するケースが少なくありません。これにより、他部門の合意を得ずに進められたプロジェクトは、後にさらなるリソースや対処が必要になる可能性が高くなります。

HPE OneSphereは、クラウドネイティブやコンテナ化アプリケーションから従来型のワークロードまでサポートし、ハイブリッドクラウドの複雑さを低減する単一の管理プラットフォームです。ESGの調査によれば、53%のマルチクラウドユーザーが、単一ソリューションでマルチクラウド環境全体を管理したいと回答しています。HPE OneSphereは、オンプレミスデータセンターとパブリッククラウドサービス間のインフラリソースを統合管理し、使用量の管理やレポートの一元化を実現します。さらに、REST APIを通じたマルチクラウド環境のセルフプロビジョニング機能により、ITサービスの自動化、DevOpsイニシアチブの促進、セルフサービスカタログの作成をサポートします。

ハイブリッドクラウド・インフラストラクチャへの組み込み型セキュリティ

ハイブリッドクラウド環境においては、アプリケーションがデータセンターとクラウドの間をシームレスに行き来できるため、攻撃対象の範囲が広がり、セキュリティ対策の複雑さが増します。多くのIT部門では、特定の脅威に対処するための個別セキュリティ製品を組み合わせることで対応していますが、この断片的なアプローチでは、内部からの脅威を十分に防げていないと74%の経営幹部が感じています。また、サイバーセキュリティ担当者の35%が、クラウドとオンプレミスの双方に一貫したセキュリティポリシーを適用することに課題を抱えていると回答しています。

このような課題への解決策として、インフラストラクチャ内部へのセキュリティ組み込みが注目されています。このアプローチでは、従来の境界型セキュリティではなく、アプリケーション単位でセキュリティポリシーを適用します。これにより、アプリケーションがデータセンターからクラウド、さらにはエッジへと拡張する際、セキュリティポリシーもアプリケーションとともに柔軟に移動させることが可能となり、セキュリティの一貫性と保護範囲の拡充を実現します。

モダンアプリケーションへの進化とそれに伴うIT負荷の増大

ほとんどの組織で、アプリケーションの開発と管理環境が急速に進化しつつあります。特に、2018年から2023年の間に5億の新しいアプリケーションが開発される見込みで、これは過去40年間で構築されたアプリケーション数と同等の規模です。この急激な増加の背景には、新しい開発プラットフォームやツール、開発者の増加、アジャイル型手法の普及、コード再利用の拡大などがあります。

また、アプリケーションが多様化し、Kubernetesのような新しいコンテナフレームワークや、人工知能・機械学習の普及により、IT部門や開発部門への負担は増しています。これにより、多くの企業が新しいテクノロジーを導入する際に、いかにして複雑さやリスクを最小限に抑えつつ、ビジネス価値を最大化するかが重要なポイントとなっています。

ハイブリッドクラウドにおける多様な利害関係の調整

ハイブリッドクラウドの導入には、ビジネス部門とIT部門双方における利害調整が求められますが、これらはガバナンス機能やPMOの活用である程度調整できるものの、その効果には限界があります。利害関係者間の対立、インセンティブの不一致、パートナーへの責任問題が発生する場合もあり、こうした場合にはより直接的な解決策が必要です。その解決策として、異なる立場の利害関係者が一堂に会して合意形成を図る「ゲームチェンジャー」のような場を設けることが考えられます。

「組織代表者会議」としてのアプローチ

この取り組みの成功例として、**「組織代表者会議(Captains Table)」**というコンセプトがあります。これは、ハイブリッドクラウドの構築を目指す各組織を代表する役員クラスの代表者を一つのテーブルに集め、共通の目的に向けた意思決定を行う場を想定したものです。会議の議長にはプロジェクト推進の中心となる企業の役員が務め、参加者はプロジェクトを正しい方向に進めるために、協力し合い透明性を確保することを約束します。こうした取り組みにより、利害関係者の間で重要な意思決定や利害対立を解消し、互いに一貫した態度で臨むための信頼関係を築くことができます。

ゼロサムゲームから価値創造へ

この会議の主要な目的の一つは、競争的になりがちな利害関係を「ゼロサムゲーム(誰かの利益が他の損失につながる構図)」から、エコシステム全体に価値をもたらす協力的な機会へと転換することです。ハイブリッドクラウドが活用されることで、ビジネス部門やIT部門、リードインテグレーターやテクノロジーベンダーといった多様な利害関係者が対立を乗り越え、共創やオープンイノベーションの実現に向けた意欲が高まります。このアプローチにより、異なる立場の関係者の協力が促進され、プロジェクトの成功率が向上するだけでなく、エコシステム全体としての成長と価値創出が実現されるのです。