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サイバー攻撃(15)

データ資産のリスク増大と、従来型セキュリティ分析の限界

経営課題として常態化するサイバーリスク
サイバー攻撃による情報漏えいは、もはや一過性のインシデントではなく、事業継続を脅かす恒常的な経営リスクです。IPAが発表する「情報セキュリティ10大脅威」が示すように、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃といった脅威の性質は長年変わっていません。これは、攻撃者の目的が一貫して、企業の最も重要な経営資産である**「データ」の窃取と換金**にあることを明確に示しています。

企業のデジタルトランスフォーメーションが進むほど、データ資産の価値は高まり、それを狙う攻撃者のインセンティブもまた増大し続けています。

なぜセキュリティ投資が成果に結びつかないのか?
これまで多くの企業が、脅威に対抗すべく多額の予算を投じてきました。しかし、被害は依然として拡大傾向にあります。この投資と成果のギャップを生み出している根源は、以下の2つの構造的なデータ課題にあります。

課題1:データ資産の可視性と監視の分断
データの保管場所は、従来のオンプレミス環境から、複数のパブリッククラウド、さらには工場や店舗などのエッジ環境へと爆発的に分散しています。これにより、組織が保護すべき**「アタックサーフェス(攻撃対象領域)」は無秩序に拡大**しました。

問題は、それぞれの環境で導入されたセキュリティツール群が、それぞれのログ(テレメトリデータ)を生成するものの、それらが完全にサイロ化している点です。このデータの分断が、環境を横断して巧妙に実行される攻撃キャンペーンの全体像を捉えることを、著しく困難にしています。

課題2:従来型検知ロジックの陳腐化
かつての攻撃は、既知の攻撃パターン、すなわち「シグネチャ」に依存する検知ロジックで対応可能でした。しかし、攻撃ツールが民主化し、AIが悪用される現代において、日々新たな亜種が生み出される未知の脅威の前では、静的なルールベースの検知手法はもはや機能不全に陥っています。

結果として、セキュリティ運用は場当たり的な「もぐら叩き」となり、侵入を前提とした事後対応(EDRなど)にリソースを割かざるを得ないのが実情です。

問題の核心:データ分析能力の欠如
従来型セキュリティが攻撃を検知できなくなった根本原因は、個別のツールの性能以前に、より本質的な問題に起因します。それは、「点」で発生する膨大なセキュリティアラートやログデータを、「線」や「面」で結びつけて相関分析する、データ分析能力の欠如です。

個別のツールが発する大量の警告は、単なるノイズの集合体となりがちで、真に警戒すべき攻撃の予兆や巧妙に隠蔽された活動の全体像(キルチェーン)を見抜くことはできません。

今、問い直すべきは、「どの製品を導入するか」ではなく、**「自組織が日々生成する膨大なセキュリティデータを、実用的な意思決定に足るインテリジェンスへと、いかにして変換するのか?」**という、データ活用の根幹に関わる問いなのです。

検知モデルの限界と、データ主動型「予防」への戦略的回帰

なぜ従来型検知モデルは機能しなくなったのか
従来型セキュリティの中核は、既知のマルウェア情報を定義した「シグネチャ」との一致を判定する、静的なパターンマッチングモデルでした。このアプローチは、過去のデータ(既知の脅威)に対しては有効ですが、モデルが学習していない未知のデータ(新種・亜種のマルウェア)に対しては全くの無力です。

現代において、攻撃者がマルウェアを生成・変異させるスピードは、防御側がシグネチャを定義・配信するサイクルを圧倒的に上回っています。これは、予測モデルの更新頻度が、新規データの発生率に追随できていないことを意味し、検知率の低下は構造的な必然と言えます。

次世代技術が直面する「分析精度」と「誤検知」の壁
この課題に対し、サンドボックス(隔離環境での挙動分析)や機械学習を用いた振る舞い検知といった、より高度な分析手法が導入されてきました。しかし、これらのアプローチもまた、データ分析における本質的な課題を抱えています。

分析対象データの品質問題:
サンドボックスは、一種の実験環境ですが、攻撃側もこれを認識しています。環境を認識して挙動を変えるマルウェアは、サンドボックス内では無害な振る舞いを装うため、分析用のデータセットにバイアスがかかり、正しい脅威判定を困難にします。

検知モデルの精度限界:
機械学習による振る舞い分析は、「正常な状態からの逸脱」を捉える異常検知モデルです。しかし、その精度は「正常な振る舞いのベースライン」をいかに正確に定義できるかに依存します。複雑なIT環境において、このベースラインを常に最新かつ正確に維持することは極めて困難であり、結果として**誤検知(フォールスポジティブ)の増大や、検知漏れ(フォールスネガティブ)**といった課題を解消できずにいます。

データ分析コストから再評価する「侵入前提」アプローチ
これらの予防技術の限界から、「侵入は100%防げない」という前提に立ち、侵入後の検知と対応(EDR/NDR)を重視するアプローチが普及しました。しかし、この「侵入前提」の思想は、データ活用の観点から見過ごせないコストと非効率性を内包しています。

リアクティブ対応の必然性:
このアプローチは、インシデント発生後の対応を最適化するものですが、本質的には常に後手に回るリアクティブな運用を強いるものです。

データ管理・分析コストの爆発:
EDR/NDRの運用は、エンドポイントやネットワークから膨大な量のログデータ(テレメトリ)を収集・蓄積し、分析することを前提とします。これは、ストレージコストやデータ転送コストに加え、高度な分析を行うための人的リソースやソリューションコストの増大に直結し、セキュリティ全体のTCO(総所有コスト)を押し上げます。

本来の目的は、複雑なデータ分析基盤を運用することではなく、事業の根幹である「データ資産」を費用対効果高く保護することです。

結論:データ分析ROIを最大化する、高精度な「侵入防御」
最も効率的かつ効果的なアプローチは、分析パイプラインの上流、すなわち「侵入段階」で脅威の絶対数を劇的に削減することです。

高精度な次世代の予防技術へアップグレードすることにより、EDR/NDRなどが処理すべきデータ量とノイズが大幅に減少し、事後対策フェーズにおける運用負荷とコストを劇的に低減できます。これは、セキュリティアナリストをアラート対応から解放し、真に高度な脅威分析に集中させることにも繋がります。

今求められているのは、単なる新技術の導入ではありません。セキュリティ投資全体のROIを最大化するための、データ主導のインテリジェントな「予防」戦略への回帰なのです。

アタックサーフェス(攻撃対象領域)のデータ化:未管理資産に起因する潜在的リスクの定量的評価

デジタルトランスフォーメーションの進展は、企業が保有する外部公開IT資産の爆発的な増加をもたらしました。しかし、これらの資産を網羅的に把握するためのインベントリデータの整備は追いついていません。この「データガバナンスの欠如」が、サイバー攻撃における最大のリスク源となっています。

攻撃者はOSINT(公開情報調査)技術を駆使し、企業が公開する膨大な情報の中から、脆弱なIT資産をデータ分析によって効率的に特定します。事業部門が独自に契約したクラウドサービスや、開発目的で一時的に構築されたサーバーなど、情報システム部門の管理データから漏れた資産は、まさに格好の標的です。

これらの「未管理資産」は、リスクが定量化されていないため、対策の優先順位付けができず、結果として組織全体のセキュリティレベルを著しく低下させています。

従来の診断手法における「データ収集コスト」と「網羅性」のジレンマ
セキュリティ診断は、脆弱性という重要なデータを収集する手段ですが、従来の手法にはスケーラビリティの問題がありました。日々変化・増殖する全IT資産に対して網羅的な診断を実施することは、投資対効果(ROI)の観点から非現実的です。

結果として、限定的な対象への定期的な診断か、インシデント発生後の事後対応に留まらざるを得ず、多くの組織は「診断コスト」と「リスク受容レベル」の最適なバランスを見出せずにいます。特に、多数の子会社や事業部を持つ組織では、このデータ収集と管理の課題はより深刻化します。

データ分析による「診断コストの最適化」とROIの最大化
この課題を解決する鍵は、場当たり的な診断から脱却し、データに基づいた戦略的な脆弱性管理ライフサイクルを構築することにあります。重要なのは、「攻撃者の視点」をデータ分析モデルに取り入れ、限られたリソースを最もリスクの高い領域に集中させることです。

本セミナーでは、サイバー攻撃の最新動向データを基に、攻撃者がどのような分析と思考プロセスで標的を選定するのかを解説します。その上で、以下のデータドリブンなアプローチによる、脆弱性管理のコスト最適化手法を提案します。

アタックサーフェスの網羅的なデータ化
外部公開資産を継続的に探索・特定し、一元的なインベントリデータベースを構築する手法。

リスクの定量化と優先順位付け
収集した資産データと最新の脆弱性情報、攻撃トレンドデータを相関分析し、各資産のリスクスコアを算出。対策すべき対象を客観的データに基づき決定します。

診断・対策プロセスの最適化
算出したリスクスコアに基づき、診断の深度や頻度を動的に変更。高リスク資産にリソースを集中させ、全体の診断コストを抑制しつつ、セキュリティ投資のROIを最大化します。

「多数のドメインやグループ会社のIT資産管理に課題を持つ」「セキュリティ予算の費用対効果を説明する客観的データが必要」といった課題を持つ責任者にとって、必見の内容です。

インシデントデータから見る、静的認証モデルの限界とリスク

近年の不正アクセスや不正取引インシデントのデータを分析すると、共通の脆弱なパターンが浮かび上がります。それは、静的な知識情報(ID・パスワード)に依存した認証モデルが攻撃の起点となっている事実です。

生成AIなどを活用した攻撃手法の高度化により、クレデンシャル情報の窃取コストは著しく低下しました。もはや、IDとパスワードという単一のデータ要素に依存した認証は、セキュリティ上の負債であり、予測可能なリスクと言えます。今、求められているのは、インシデント発生後の対応ではなく、データに基づいたプロアクティブな認証・認可モデルへの再設計です。

本質的課題:分断された認証データとアクセスコンテキスト
多要素認証(MFA)の導入は進んでいますが、その多くは知識情報に偏重した構成であり、認証強度を十分に高めているとは言えません。しかし、より本質的な課題は、認証イベントと、その後の**「アクセスコンテキストデータ」**(誰が、どのデバイスで、どこから、何にアクセスしようとしているか)が分断されている点にあります。

認証が成功したという単一の事実だけでは、その後のセッションにおけるリスクを評価することは不可能です。**「認証強度」と「アクセス権限」**を、リアルタイムのコンテキストデータに基づいて動的に評価・制御する、データドリブンな仕組みがなければ、一度侵入を許した攻撃者の水平展開を防ぐことはできません。

認証・認可データを統合する次世代型プラットフォーム
この分断されたデータを統合し、動的なリスク評価を実現するソリューションが CloudGate UNO です。

CloudGate UNOは、単なる認証強化ツールではありません。それは、「認証シグナル」と「アクセスポリシー」を一元管理するデータプラットフォームとして機能します。

FIDO2/パスキーなどの耐タンパー性の高い認証要素を採用することで、認証データの信頼性を最大化。さらに、デバイス情報、IPアドレス、時間帯などのコンテキストデータをリアルタイムで評価し、ゼロトラストの原則に基づいたきめ細やかなアクセスポリシーを適用します。これにより、静的なアクセス許可リストから、リスクスコアに基づいた動的なアクセス制御へと移行させることが可能です。

本セッションでは、具体的な導入事例とデモを通じて、従来の認証モデルが抱えるデータガバナンス上の課題と、それを解決するための具体的なアーキテクチャを提示します。

本セッションが提供する価値
リスク管理・情報システム部門の責任者:
セキュリティ投資のROIをデータで証明するための、リスクベース認証という具体的なアプローチを理解できます。

ハイブリッド・マルチクラウド環境の管理者:
分散したクラウドサービスのID・アクセスデータを統合管理し、一貫したガバナンスと監査証跡を実現する方法を学べます。

静的認証モデルからの脱却を目指す企業:
ID・パスワード運用からの移行計画を、具体的な技術(パスキー)とポリシー設計に基づき現実的なものにします。

ゼロトラスト構想の具現化を求めるアーキテクト:
ゼロトラストを概念から、具体的なデータとポリシーに基づいた運用システムとして実装するための設計思想とツールを得られます。

【テーマ1:Webパフォーマンスと事業KPIの相関分析】

― 見過ごされるBOTがもたらす収益機会の損失 ―
1. 課題定義:セキュリティ指標と事業KPIの乖離

多くの組織では、WAF(Web Application Firewall)の導入により、防御した攻撃数といったセキュリティ指標は健全に見えるかもしれません。しかしその一方で、サイトのコンバージョン率(CVR)や直帰率、顧客満足度といった事業KPIが悪化しているケースが散見されます。この**「指標間の乖離」**こそが、見過ごされたリスクの存在を示唆しています。

問題の本質は、従来のセキュリティ対策が検知対象としていない、事業に損害を与える「悪性だが攻撃ではない」トラフィックの存在です。

2. データに基づく影響分析

以下の事象は、顧客体験(CX)を毀損し、直接的な収益機会の損失に繋がります。

表示遅延とコンバージョン率の負の相関: 高頻度アクセスを行うBOTは、Webサーバーのリソースを消費し、サイト全体の表示速度を低下させます。ページの表示に数秒を要するだけでコンバージョン率が著しく低下することは、多くの調査で明らかになっています。これは計測可能な機会損失です。

転売BOTによる在庫枯渇と顧客離脱: ECサイトにおいて、限定商品や人気商品が発売と同時に転売BOTに買い占められる事象は、本来の顧客に商品を届けられないだけでなく、ブランドへの信頼を著しく損ないます。これは顧客生涯価値(LTV)の毀損に直結します。

これらのトラフィックは、従来のシグネチャベースのWAFでは「正常なアクセス」と判断されがちであり、気づかぬうちに収益基盤を蝕んでいきます。

3. 提案:CXを保護するデータ駆動型防御戦略

対策は「攻撃をブロックする」という視点から、「事業KPIを保護する」という視点へシフトする必要があります。

トラフィックの分類と可視化: まず行うべきは、アクセスログや行動データを分析し、人間、良性BOT(検索エンジンなど)、そして悪性BOT(転売、スクレイピング等)を正確に分類・可視化することです。

パフォーマンスを考慮した防御: 単純なIPアドレス遮断ではなく、振る舞い検知に基づいた動的なアクセスコントロールを導入します。これにより、正規ユーザーの体験を損なうことなく、悪性トラフィックの影響のみを排除し、コンバージョン率の低下リスクを直接的に低減させます。

【テーマ2:サイバー脅威の進化と防御戦略の陳腐化】
― データで見る「検知されない侵入」のリスクシナリオ ―
1. 脅威トレンドの定量分析

近年のサイバー攻撃の進化は、従来の防御手法の有効性を急速に低下させています。データは以下の脅威ベクトルの深刻化を示しています。

RaaS(Ransomware as a Service)による攻撃の産業化: 攻撃の分業化により、ランサムウェア攻撃の実行ハードルが低下。それに伴い、被害件数と情報漏洩を伴う「二重恐喝」の割合が増加傾向にあり、インシデントあたりの想定被害額が上昇しています。

非マルウェア型攻撃の増加: 正規IDを窃取・悪用する「なりすまし型」の侵入は、マルウェア検知を主軸とするEPP/EDR製品では検知が極めて困難です。これにより、**侵害検知までの平均時間(MTTD)**が長期化し、被害範囲が拡大するリスクが高まっています。

生成AIによる攻撃の効率化: フィッシングメールの生成やマルウェア作成の自動化により、攻撃の量と質が向上しています。これは、防御側が対応すべきアラートの増加と、インシデントトリアージの負荷増大に直結します。

2. 防御体制における潜在的課題

テクノロジーの導入だけでは、これらの高度な脅威には対抗できません。以下の運用上の課題がリスクを増大させます。

ツールの機能不全: 導入したセキュリティ製品の設定不備や機能の未活用により、期待される防御効果が得られていないケース。

可視性の欠如とリソース不足: IT部門の人員不足により、ログの監視や分析が追いつかず、インシデントの予兆を見逃す。

検知と対応の遅延: 上記の結果として、**インシデント対応の平均時間(MTTR)**が長期化し、事業停止期間や復旧コストの増大を招きます。

3. 提言:中堅・中小企業向け「多層防御」実現アプローチ

これらの「見えにくく、止めにくい」リスクに対抗するには、エンドポイント単体の対策から脱却し、ID、ネットワーク、クラウドなど複数のレイヤーを連携させた多層的な防御アーキテクチャへの移行が急務です。

本セッションでは、最新の攻撃実例データを基に、限られたリソースの中で最大限の効果を発揮する多層防御の実現アプローチを、具体的な技術要素と運用体制の観点から解説します。目的は、インシデント発生確率の低減と、万一の際の事業インパクトの最小化です。

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