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XDR(3)

データ分析で証明するXDRの有効性

1. XDRの注目度とサイバーセキュリティの最前線

近年、サイバーセキュリティの分野で「XDR(Extended Detection and Response)」の重要性が急速に高まっています。国際的なITセキュリティカンファレンス「Black Hat」では、XDRに関連する展示が大きな注目を集め、ラスベガスの空港でも「XDR」の文字が目立つほどの状況でした。

しかし、日本においては依然としてEDR(Endpoint Detection and Response)の導入を優先する声が根強く、特にエンドポイント保護を中心とした対策が一般的です。しかし、最新のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、「EDRだけでは企業の重要資産を守りきれない」という認識が、世界的な潮流となっています。

2. データ分析で浮かび上がるEDRの限界とXDRの必要性

XDRの「X」は“eXtended(拡張)”を意味し、エンドポイント保護だけではなく、ネットワーク、ID管理、クラウド環境、SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)、UBA(ユーザー行動分析)などを統合した包括的なセキュリティプラットフォームです。データ分析の観点からも、EDR/EPP(Endpoint Protection Platform)だけでは、以下のような脅威に対応しきれないことが明らかになっています。

多層防御の必要性:エンドポイント対策だけでは、攻撃経路を特定できない。

脅威の検知精度:EDRでは侵入後の挙動は検知できるが、侵入前の攻撃経路を可視化できない。

対応の遅延:EDRは端末ごとの防御に留まり、組織全体のリスク評価や迅速な対応が難しい。

これらの課題を解決するために、XDRは異なるセキュリティ機能を統合し、攻撃の全体像を可視化し、迅速な検出・隔離・復旧を可能にします。

3. XDRが実現するデータ駆動型セキュリティ

XDRは、様々なリソースから収集されたログを統合し、AIによる自動分析を活用することで、脅威の検知・対応を大幅に強化します。

エンドポイント保護の拡張:EDRだけでなく、NDR(Network Detection and Response)を活用し、ネットワークレベルでの脅威検知を強化。

攻撃の全体像の可視化:複数のデータソースを統合し、攻撃経路や影響範囲を明確に特定。

迅速な復旧:侵入の兆候を早期に把握し、事業継続性を確保。

4. 日本のセキュリティ環境とXDRの必要性

2022年秋に発生した大阪の病院のランサムウェア被害のように、日本国内でも重大なセキュリティインシデントが増加しています。その一因として、日本の企業・組織が依然としてエンドポイント保護に偏りがちである点が挙げられます。

この状況を踏まえ、データドリブンなセキュリティ対策としてXDRの導入を検討することは、単なるトレンドではなく、企業の事業継続とブランド価値を守るための合理的な選択といえるでしょう。

XDRによるデータ駆動型のセキュリティ戦略が、組織のリスク管理と事業継続性の強化に直結することを、今こそ認識すべき時です。

XDRプラットフォームの評価と選定基準

XDR市場の現状とMITRE評価の意義

近年、XDR(Extended Detection and Response)が主流となりつつあることは、MITRE ATT&CK Evaluation for Enterpriseの結果にも表れています。MITREの評価は、セキュリティソリューションの有効性を測る標準的な指標であり、多くのセキュリティベンダーがEDR(Endpoint Detection and Response)ではなくXDRで評価を受け、高い評価を獲得しています。このことからも、主要なセキュリティベンダーがXDRの開発・強化に注力していることがわかります。

しかし、XDRはまだ発展途上の技術であり、統一された標準機能が定義されているわけではありません。そのため、ベンダーごとに対応範囲や連携機能にばらつきが見られます。例えば、一部のベンダーはネットワーク、クラウド、ID管理、SIEM、脆弱性対応などの得意分野を基盤とし、それぞれの強みを活かしたXDRプラットフォームを提供しています。

XDR選定の重要な視点

XDRを選定する際に参考になるのが、MITRE ATT&CKフレームワークです。このフレームワークには、EDR単体では対応できない侵入後のフェーズへの対策が含まれています。そのため、XDRを導入することで、従来のエンドポイント保護製品よりも広範囲にわたって企業資産を保護し、事業リスクを低減できます。

特に、

ID管理や脆弱性対応を重視するXDR → カバー範囲が比較的小さい

ネットワークやクラウド連携を重視するXDR → カバー範囲が広い

SIEM機能を統合したXDR → 様々な機器のログを収集・解析し、カバー範囲が広い

このように、XDRのアプローチによってセキュリティ対策の適用範囲が変わります。カバー範囲の広いソリューションを選定することで、包括的な保護を実現できる可能性が高まります。

運用負担の最小化とデータの統合管理

XDRは機能面だけでなく、運用面でも大きな利点を持ちます。従来のEDRでは、VPNを含む侵入経路の特定が困難であり、被害が発生した時点では攻撃が横展開されているケースが多いです。また、運用者は膨大なアラートに対処しなければならず、運用負担が増大していました。

MITREフレームワークに準拠したXDRであれば、

侵入や不正な動作の検知

外部へのデータ送信の監視

エンドポイント保護

といった対策をインシデント単位で包括的に実施できるため、運用の負担を大幅に削減できます。

XDR導入の必要性と運用環境の変革

現在、多くの企業はランサムウェアなどの脅威に対応するため、エンドポイント、ネットワーク、クラウド向けのセキュリティツールを導入しています。しかし、これがサイロ化と運用の複雑化を招き、セキュリティ担当者の負担を増加させています。

例えば、ある調査によると、企業は平均で45以上のセキュリティツールを使用しており、それらから発生するアラートは1日1万件を超えることもあります。この状況では、

アラート対応に多くの時間がかかる(平均4日以上)

セキュリティ人材の不足により、迅速なインシデント対応が困難

といった問題が発生します。

VPNやリモートデスクトップの脆弱性を悪用され、ランサムウェアが社内ネットワークに拡散すると、緊急対応が求められます。しかし、NDR(Network Detection and Response)、UBA(User Behavior Analytics)、EDRなどのツールを個別に利用している場合、情報が分散し、迅速な状況把握が困難になります。

包括的なXDRソリューションの価値

このような課題を解決するため、Cortex XDRのように、

EDR/EPP、NDR、UBAなどの機能を統合

データとツールのサイロ化を解消

エンドポイント、ネットワーク、クラウド、認証基盤まで多様なデータソースを統合管理

といった機能を備えたXDRプラットフォームの導入が有効です。

統合されたデータ分析を活用することで、

横断的な脅威分析

迅速なインシデント対応

詳細なフォレンジック調査

が可能になり、セキュリティ運用の効率化とリスク低減を実現できます。

まとめ

XDRは、単なるEDRの拡張ではなく、データの統合管理と分析を通じて、セキュリティ運用の最適化を実現する重要なプラットフォームです。MITRE ATT&CKフレームワークを活用しながら、カバー範囲の広いXDRソリューションを選定することで、より包括的な保護と運用負担の軽減が可能になります。

今後、XDRの発展とともに、データの可視化と統合分析の重要性がさらに増すことが予想されます。企業は、単なるツールの導入ではなく、運用の効率化を見据えたデータ戦略としてXDRを活用することが求められています。

セキュリティ運用の最適化とコスト削減の実現

データ統合による運用効率の向上

セキュリティ運用における自動化の導入は、運用の効率化とリスク対応力の向上に大きく寄与する。従来の自動化アプローチでは、アナリストが手動で検出・調査・分析を行い、その後に反復的な対応を自動化する手法が一般的であった。しかし、この方法では、高度化・多様化する攻撃に対応しきれず、限られた人材リソースでは十分な防御が困難である。

これに対し、パロアルトネットワークスのアプローチは、AI/MLを活用して検出・調査・対応を自動化し、最終的な判断をアナリストが行うというものだ。これにより、アナリストの専門知識を最も効果的に活用し、迅速かつ的確なリスク軽減を実現できる。具体的には、Cortex XDRがデータ収集から統合(正規化)、分析までを自動で行い、MITRE ATT&CKフレームワークに準拠した形で可視化することで、運用者が直感的に脅威を把握しやすくなる。

さらに、SIEM機能を活用することで詳細な調査が可能となり、エンドポイントでのAI解析やクラウド分析と組み合わせた包括的な防御が実現される。複数のデータソースを統合することで、高度な脅威検知と迅速な対応を可能にし、運用負担を大幅に軽減する。

AI活用による運用負担の軽減と迅速な対応

ランサムウェアに感染した際、多数のセキュリティツールから無数のアラートが発生し、運用担当者の負担が増大する。しかし、Cortex XDRでは、これらのアラートを単一のインシデントとして統合し、AIによる自動判定を実施する。これにより、調査対応時間が大幅に短縮され、相関分析による影響範囲の特定が容易になる。

調査結果によると、Cortex XDRの導入により、攻撃対応にかかるコストが65%削減され、MTTR(平均復旧時間)の短縮により運用コストは86%減少した。また、セキュリティツールの乱立による運用負担を軽減し、ツール使用量を87%削減する効果が確認されている。これらの数値は、データ統合とAI活用の組み合わせによる運用最適化の成果を示しており、コスト削減の観点からも非常に大きなメリットをもたらす。

従来のSIEMの課題とXDRの優位性

従来のSIEM技術を活用したセキュリティ製品には、収集したアラートや監視データを最新の脅威インテリジェンスと照合し、実際の攻撃グループの挙動と相関付ける機能が欠如していた。また、進行中の脅威を特定し、対応・修復するための指針となるセキュリティワークフローが内蔵されていないケースも多い。

セキュリティリスクを効果的に緩和するためには、キルチェーンプロセスをエンドツーエンドで網羅する必要がある。しかし、全社的な情報をすべてSIEMに一元化している場合、プロセスが分断されるリスクがある。さらに、複数のセキュリティツールを組み合わせても、100%の防御は不可能であり、攻撃グループが長時間にわたり潜伏し、甚大な被害を引き起こす可能性がある。

特に、セキュリティ運用チーム(SecOps)が疲弊している状況では、脅威の検知や封じ込めに必要な工数を確保することが難しくなる。このような環境下で、Cortex XDRはEDR/EPP、NDR、UBAなどの機能を統合し、データとツールのサイロ化を解消することで、包括的な脅威管理を実現する。エンドポイントからネットワーク、クラウド、認証基盤まで多様なデータソースを横断的に分析し、迅速なインシデント対応と詳細なフォレンジックを可能にする。

総括:データ主導のセキュリティ戦略へ

Cortex XDRの導入により、データ統合とAI活用による脅威検知の高度化、迅速な調査・対応の実現、セキュリティツールの統合による運用最適化が可能となる。これにより、企業はセキュリティリスクの低減だけでなく、運用コストの削減、業務効率の向上といった具体的なメリットを享受できる。

パロアルトネットワークスは3年連続で「SASE Partner of the Year」を受賞し、国内においても高い評価を受けている。同社のパートナーSE認定資格(CYBERFORCE)の保持者数も国内トップであり、導入検討の際には専門家の支援を受けることができる。データ主導のセキュリティ戦略を構築するうえで、Cortex XDRは有力な選択肢となるだろう。

XDRの定義と価値

XDR(Extended Detection and Response)は、次世代の統合型セキュリティソリューションとして2018年に登場しました。Gartner社はXDRを「複数のセキュリティ製品をネイティブに統合し、脅威検知とインシデント対応を実現する統合的なセキュリティオペレーションシステム」と定義しています。

XDRの主な特長

高効率なデータ統合・集約

エンドポイント、サーバー、ネットワーク、クラウド、メール、アプリケーションなど、複数の環境にまたがる監視データを統合。

ファイアウォール、侵入検知・防御システム、その他のセキュリティツールのデータを横断的に収集・活用。

脅威インテリジェンスを活用した分析・相関付け

収集した振る舞いデータを解析し、悪意のある活動を特定。

継続的なデータ分析により、リアルタイムでの脅威検知を強化。

機械学習とヒューマン・インテリジェンスの融合

機械学習を活用し、脅威検知の精度と感度を向上。

アナリストの知見を蓄積し、セキュリティ対応の最適化を実現。

インシデント対応の自動化・支援

内蔵のセキュリティ調査ワークフローを提供。

「修復プレイブック」に基づく自動修復アクションを実行。

XDRの優位性:EDRとの比較

XDRは従来のEDR(Endpoint Detection and Response)を発展させ、次の点で優れています。

データ収集の範囲拡大

EDRはエンドポイントの監視データに限定されるが、XDRはネットワーク、クラウド、アイデンティティシステム、メールなど、SIEMを介さずに広範なデータを統合可能。

脅威検知の進化

EDRはリアクティブ(既知の情報に基づく)な検知手法が中心。

XDRはプロアクティブ(先手を打つ)なアプローチで、進化する高度な脅威に迅速対応。

XDRとSIEMの違い

XDRとSIEM(Security Information and Event Management)には明確な機能差があり、XDRの登場によりSIEMの限界が浮き彫りになっています。

特徴XDRSIEM
データ統合ネイティブ統合外部データソースを収集
検知能力AI・機械学習によるリアルタイム検知ルール・シグネチャベースの検知                  
インシデント対応自動化・修復プレイブック活用手動対応が中心
運用負荷低(自動化が進んでいる)                     高(チューニング・運用負担が大きい)

 

XDRの導入検討ポイント

既存のSIEMを維持すべき組織

金融、ヘルスケアなど、厳格な規制を受ける業界で監査・コンプライアンス目的が主。

XDRを活用すべき組織

サイバー攻撃の増加に伴い、リアルタイムの脅威検知と迅速なインシデント対応を求める企業。

SecOpsのリソースが限られ、外部のインテリジェンスに依存する組織。

現行のSIEMを廃止予定、またはサイバーセキュリティ予算の見直しを進めている企業。

XDR導入のメリット

包括的なセキュリティ運用の実現

SIEMの高コスト・運用負担の軽減

SecOpsの生産性向上と業務負荷削減

XDRは、サイバーセキュリティの新時代において、SecOpsの基幹プラットフォームとして最適な選択肢となる可能性を秘めています。

XDRとSIEMの比較における重要なポイント

企業がXDR(Extended Detection and Response)とSIEM(Security Information and Event Management)を比較検討する際に考慮すべき重要なポイントは、以下の3つです。

1. コストとライセンスモデルの違い

SIEMのライセンスコストは通常、取り扱うデータ量に比例して増加します。そのため、多層防御を採用する場合や長期間のデータ保持が必要な場合、ライセンスコストが大幅に増大する可能性があります。加えて、SIEMは初期導入コストが高く、継続的な運用・チューニングが不可欠であり、追加のライセンスや保守費用が発生することもあります。

一方、XDRは、データ量ではなくエンドポイントやクラウド環境の保護対象を基準にコストが決定されることが多く、スケーラビリティの観点で優れたコスト管理が可能です。そのため、IT意思決定者は、長期的なコストの観点からもXDRとSIEMを比較し、ROI(投資対効果)を最大化する戦略を検討する必要があります。

2. セキュリティの考え方:個別防御 vs. 集団防御

一般的に、サイバーセキュリティは各組織ごとに個別に実践されるものと認識されがちですが、実際には集合知を活用した防御が求められます。SIEMは基本的に組織内のログデータを集約・管理するためのシステムであり、外部の脅威インテリジェンスとの連携は限定的です。

一方、XDRは相互接続されたセキュリティエコシステムとして機能し、複数の組織間で脅威情報を共有し、リアルタイムでの対応を可能にします。これにより、単一組織のセキュリティ対策が他の関連組織の防御力向上にも貢献する「集団的サイバー防衛」を実現します。

3. エコシステムとセキュリティカバレッジ

SIEMは、主に内部ログ管理と監査を目的としたシステムであり、基本的に孤立した環境で運用されるため、その守備範囲の外側にはリスクが残る可能性があります。

対照的に、XDRは相互接続型のエコシステムを形成し、ネットワーク、エンドポイント、クラウド、メールなど複数の攻撃経路を包括的にカバーします。これにより、リスクの波及を抑えながら、より統合的かつ自動化されたセキュリティ対策を提供します。

XDRとSIEMの違いを理解する重要性

XDRが市場で注目を集める背景には、企業が直面するサイバーセキュリティの新たな課題があります。

高度化・巧妙化するサイバー攻撃:従来のSIEMではログ分析に時間がかかり、リアルタイムの脅威対応が難しい場合があります。

クラウド・SaaS環境の拡大:クラウド環境が混在し、管理対象が増加することで、従来のSIEMでは対応が困難になるケースが増えています。

セキュリティ人材不足:専門人材の確保が困難な中、運用負荷の高いSIEMよりも、XDRのように自動化と統合分析を強化したソリューションが求められています。

コンプライアンスとリスク管理の強化:単なるログ管理ではなく、企業全体のセキュリティ態勢を強化する必要性が高まっています。

リモートワークの普及:境界防御の概念が崩れ、ゼロトラストを前提とした包括的な防御アプローチが求められています。

経営層の視点:セキュリティ侵害が企業のブランド価値や株価に与える影響を懸念する一方で、コストの最適化も求められるというジレンマが存在します。

これらの要因により、企業は従来のSIEMによるアプローチだけでなく、XDRを含めたセキュリティ戦略の見直しが不可欠になっています。

今後の意思決定に向けて

サイバーセキュリティのニーズとリソースの均衡が崩れつつある今、セキュリティリーダーは慎重な選択を迫られています。組織のリスクマネジメントを最適化するために、XDRとSIEMの特徴を正しく理解し、それぞれのメリット・デメリットを比較した上で、最も適したソリューションを導入する必要があります。

特に、SecOps(セキュリティ運用)チームのリソース効率を向上させる観点から、XDRの導入がより現実的な選択肢となる可能性が高まっています。意思決定者は、単なるコスト比較ではなく、組織の将来を見据えた持続可能なセキュリティ戦略を構築することが求められます。