クラウドサービスの活用は、効率やスケーラビリティを向上させる一方で、従来のオンプレミス環境では見られなかった新たなリスクを生み出します。データコンサルタントとして、これらのリスクを明確に理解し、適切な対応策を提案することが重要です。
クラウドサービスによる新たなリスク
クラウドサービスがもたらすリスクは、ITインフラの柔軟性やリソース管理の複雑化に起因します。主なリスクには、ソフトウェア資産管理の困難化、シャドーITの増加、およびトラブル発生時の原因追跡の難しさがあります。
「クラウドサービスの活用によって浮き彫りになるリスク
クラウドサービスの活用は、従来のオンプレミス環境に比べて、効率性や柔軟性を大きく向上させます。しかし、この変化に伴い、新たなリスクが生じることにも注意が必要です。特に次の3つのリスクが、クラウド活用において重要です。
ソフトウェア資産管理の難しさ
従来のオンプレミス環境では、ソフトウェアがどの物理サーバにインストールされているかを明確に管理することができました。しかし、クラウド環境では、物理サーバの情報がユーザー企業に直接提供されないため、ソフトウェア資産管理(SAM)が難しくなります。さらに、クラウドインフラのアジリティによってリソースが動的に変更されるため、特定の物理サーバに依存するソフトウェアライセンスの管理が複雑化します。これは、従来のライセンス管理手法では不十分になることを意味します。
シャドーITの増加
クラウドサービスの容易な導入は、組織内でのシャドーITの増加を助長します。部門ごとに独自のクラウドツールやアプリケーションを導入することが簡単になる一方で、中央管理が行き届かないことで、セキュリティリスクやライセンス違反が発生する可能性があります。特に、IT部門が管理していないリソースが急速に増加し、全体の統制が失われることが懸念されます。
問題発生時の原因追跡の困難さ
クラウド環境では、インフラの仮想化やリソースの分散化が進んでいるため、問題が発生した場合の原因追跡が難しくなる傾向があります。オンプレミス環境では、物理サーバやネットワーク構成を基にトラブルシューティングが比較的容易でしたが、クラウドでは仮想リソースが動的に変動するため、根本原因の特定には高度なツールや専門知識が必要です。」
リスクに対する対策提案
データコンサルタントとして、これらのリスクに対処するための具体的な対策を提案することが必要です。ソフトウェア資産管理を強化するためのSAMツールの導入や、シャドーITを防ぐためのポリシー整備、クラウド環境におけるトラブルシューティングの自動化・可視化ツールの導入が効果的です。
「リスクに対する効果的な対応策
これらのリスクに対応するためには、以下の施策を導入することが推奨されます。
SAMツールの導入
クラウド環境でのソフトウェア資産管理を効率化するためには、クラウド対応のSAMツールを導入し、リソースの動的管理やライセンス遵守を確保することが重要です。これにより、クラウド上で稼働しているソフトウェアの可視性が向上し、ライセンス管理の効率化が図れます。
シャドーIT対策の強化
シャドーITのリスクを最小限に抑えるためには、ポリシーの整備と監視ツールの導入が有効です。IT部門が統制を持ち、各部門が独自のクラウドサービスを利用する際にもガバナンスが効く仕組みを構築することで、無秩序なツール導入やセキュリティリスクを防ぐことができます。
トラブルシューティングの可視化と自動化
クラウド環境における問題発生時の迅速な原因特定には、ログ管理ツールや可視化ツールの導入が効果的です。仮想化されたインフラの動的な構成変化をリアルタイムで監視することで、問題の早期発見やトラブルシューティングがスムーズに行えます。また、自動化されたアラートシステムを導入することで、発生した問題に対する即時対応が可能となります。」
まとめ
リスクを管理しながらクラウドサービスを効果的に活用するためには、適切な管理手法とツールの導入が不可欠です。これにより、クラウドインフラの利点を最大限に活用しつつ、セキュリティリスクや運用コストを最小限に抑えることが可能です。
「クラウドサービスのリスク管理と最適な運用
クラウドサービスは、多大な利便性を提供する一方で、新たなリスクも伴います。これらのリスクを効果的に管理するためには、SAMツールの導入、シャドーIT対策、トラブルシューティングの自動化など、クラウド環境に特化した対応策を講じることが重要です。これにより、クラウドサービスの柔軟性とアジリティを活用しながら、セキュリティリスクや管理の複雑さを軽減し、最適なITインフラの運用を実現できます。」
データコンサルタントとして、クライアントがクラウドインフラの利点を最大化しつつ、リスクを適切に管理できるよう、段階的な対応策を提案しました。
クラウドサービスの導入により、柔軟で迅速なIT環境構築が可能になる一方、従来のオンプレミス環境ではあまり見られなかったリスクが新たに浮かび上がります。これらのリスクに対して、データコンサルタントの視点から具体的な対応策を提案することが重要です。
シャドーITのリスク
シャドーITとは、社内の許可を得ずにIT製品やサービスを利用する行為を指します。この行為はガバナンスが行き届かないため、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを高めることになります。クラウドサービスの特徴として、簡単に契約・導入ができる点があり、これがシャドーITを促進する要因の一つです。
「シャドーITがもたらすリスクと対応策
シャドーITとは、組織のIT部門の許可を得ずに従業員や事業部門がIT製品やサービスを勝手に導入・利用する行為を指します。クラウドサービスは契約や導入が容易なため、シャドーITの温床となりやすく、結果としてガバナンスの欠如やセキュリティリスクが高まる可能性があります。特に、ITリテラシーが低いエンドユーザーが適切なセキュリティ設定を行わずにサービスを利用すると、データ漏洩や不正アクセスのリスクが顕著になります。
クラウドサービスはインターネット接続さえあれば、社内ネットワークを経由せずに利用可能であるため、セキュリティが確保されていない場所からもアクセスができる状況が発生しやすいです。これにより、外部からの攻撃リスクが増大し、組織全体のセキュリティポリシーに影響を及ぼす可能性があります。」
シャドーITの管理と防止策
シャドーITによるリスクを最小化するためには、従業員教育やガバナンス強化が必要です。また、シャドーITを完全に排除するのではなく、監視・管理ツールを活用して可視化し、企業全体で統制を取ることが重要です。
「シャドーIT管理と防止策
シャドーITのリスクを軽減するためには、まず従業員が正しいITツールの利用方法やリスクについて理解していることが重要です。そのため、定期的なITセキュリティトレーニングや内部ガイドラインの策定が効果的です。また、シャドーITを完全に排除するのではなく、その存在を認識し、クラウドサービスの利用を可視化・管理するためのツールを導入することが推奨されます。
具体的には、クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)や統合ログ管理ツールを活用し、組織内でどのようなクラウドサービスが利用されているかを可視化し、適切なガバナンスを維持することが可能です。さらに、事前承認されたクラウドサービスをリスト化し、エンドユーザーに推奨することで、勝手な利用を減少させることができます。」
クラウドでのトラブルシューティングの課題
クラウドサービスを利用することで、ITインフラをユーザー企業が直接管理する必要がなくなりますが、その反面、問題発生時の原因特定が難しくなるという課題が生じます。クラウドベンダーに依存する部分が大きく、問題が発生してもベンダーからのフィードバックを待たなければならない場合があります。
「クラウド環境でのトラブルシューティングの課題
クラウドサービスは、ITインフラをユーザー企業が直接運用する必要がないため、運用コストや負担を軽減できますが、一方で問題発生時の原因特定が難しいという課題があります。特に、クラウドベンダーに依存する部分が多いため、問題が発生した場合でもブラックボックス化されてしまうケースがあります。
問題の原因をクラウドベンダーに調査してもらうことは一般的ですが、ベンダーが提供する調査結果に依存せざるを得ないため、トラブルシューティングに時間がかかる場合があります。特に以下のようなインシデントが発生する可能性があります:
サイバー攻撃によるシステムへの影響
クラウドサービスの設定ミスや誤操作
データセンター障害によるサービス停止
内部からの不正アクセスやデータ漏洩
クラウド上でのデータ消失や破損
これらのリスクに対して、クラウド監視ツールやログ管理システムを導入し、ベンダーに依存する部分を最小化し、リアルタイムでインシデント対応が可能な環境を整備することが重要です。」
リスク軽減策の提案
最後に、これらのリスクを軽減するための対策として、トラブルシューティングを効率化するツールの導入や、クラウドサービスの監視体制の強化を提案します。特に、複数のクラウドサービスを利用している場合には、統合的な監視・管理が必要です。
「リスク軽減策とクラウド監視の強化
クラウド環境における問題発生時の迅速な原因特定やリスク軽減のためには、クラウドネイティブの監視ツールや自動化されたインシデント対応システムを導入することが効果的です。これにより、ベンダー依存を最小限に抑え、問題発生時に迅速に対応することが可能になります。
また、複数のクラウドサービスを利用する場合には、統合的な監視ツールを活用して、一元管理できる環境を整備することが求められます。これにより、異なるクラウドサービス間で発生するインシデントも効率的に対応でき、全体の可視性が向上します。加えて、自動アラートシステムを活用し、リアルタイムで問題を検知し、早期に対応する体制を構築することで、クラウド環境での運用リスクを大幅に低減できます。」
クラウドサービスを活用するにあたり、データコンサルタントとしては、リスクを事前に見据え、適切な対策を講じることで、効率的かつ安全なクラウド運用を支援します。
ITリソースの導入とプロジェクトの遅延
新しいITリソースをビジネス部門へ提供する際、長期化する購買プロセスや、複雑で時間を要するテスト・導入手続きが、迅速なプロジェクト開始の妨げとなっています。物理環境での実装に依存すると、IT部門が迅速に対応できず、新たなビジネス機会を逃すリスクが高まります。この課題に対し、クラウドリソースや自動化プロセスを利用した柔軟なITリソースの提供が求められています。
アプリケーションのパフォーマンス維持と可用性
ユーザーのパフォーマンス要求が高まる中、物理サーバの保守やアップグレードによりダウンタイムが発生し、パフォーマンスの低下やユーザー不満が生じることがあります。仮想環境の導入やダウンタイムを最小限に抑えるリソーススケジューリングと自動化によるメンテナンス手法が重要です。
シャドーITの増加とセキュリティ課題
IT部門の提供に時間がかかる場合、業務部門は独自にSaaSサービスを導入することがあり、これはセキュリティやコンプライアンス上のリスクを引き起こします。これに対して、迅速なSaaSプロビジョニングや、セキュアなガバナンスフレームワークの構築が課題の解決策となります。
ITスタッフとリソース制約
物理サーバの管理は、各マシンに対して個別の対応が必要であるため、多大な人的リソースがかかります。CFOの要請により、より少ないリソースでの効率化が求められる中、仮想化技術やリモート管理ツールの活用が、運用負担を軽減する鍵となります。
根本原因の分析機能の不足
多数のアプリケーションやネットワークデバイスが稼働する環境では、パフォーマンス低下の原因を特定できないことが障害の連鎖を引き起こす要因となり得ます。そこで、根本原因分析(RCA)を支援する自動化ツールの導入や、異常検知を行うAIソリューションを活用することで、問題の早期解決を実現し、アプリケーション停止のリスクを抑えることが可能です。
このアプローチにより、ITリソースの柔軟な導入から効率的な運用管理まで、デジタルインフラの最適化が促進され、ビジネス価値の創出に寄与するでしょう。
シャドーITと「勝手マルチクラウド」:リスクと軽減策
テレワークの普及によるマルチクラウドとシャドーITの増加
テレワークの浸透に伴い、業務の効率化や迅速化を目指し、事業部門や従業員がIT部門の承認を得ずに独自にクラウドサービスを導入する「シャドーIT」が増加傾向にあります。このシャドーITが複数のクラウドサービスに分散することで、いわゆる「勝手マルチクラウド」が生まれ、管理の難しさが増すだけでなく、セキュリティリスクやコストの無駄を招くリスクもあります。
シャドーITのリスクを低減するアプローチ
シャドーITはリスクであると同時に、従業員の生産性向上や事業のアジリティを促進する可能性も秘めています。そのため、リスクの抑制のみを目指すのではなく、以下のような手法で透明性を高めつつ、安全なIT利用環境を整備することが効果的です:
クラウド利用状況の可視化
シャドーITとして導入されたサービスも含め、利用状況を可視化し、無許可のツール利用を防ぐ文化を育てます。可視化ツールやモニタリングシステムを導入し、業務の透明性を高めましょう。
クラウド利用のベストプラクティスの周知
IT部門から従業員へ、クラウドサービス利用におけるセキュリティベストプラクティスを周知することも重要です。これにより、リスクを意識した利用が進み、セキュリティの一体化が図れます。
事前の申請プロセスの構築
新たなITツールやクラウドサービスを導入する際、従業員が事前にIT部門に要望を提出するプロセスを構築することで、適切な管理の下で安全な利用が実現します。
マルチクラウド環境での無駄コストの発生と対策
マルチクラウド運用コストの最適化
複数のクラウドベンダーを利用するマルチクラウド環境では、サービスの重複や利用状況の把握不足から無駄なコストが発生しやすくなります。無駄コストを削減し、コスト最適化を図るためには、以下のようなプロセスを導入することが効果的です:
事前コスト評価と複数ベンダーの比較
各クラウドサービスの料金プランや機能は異なるため、利用開始前に複数の選択肢を評価し、自社のニーズに合ったプランを選定することが大切です。標準的な機能に大差がない場合は、コストの競争力が高いベンダーの選択が無駄コストの抑制に寄与します。
利用状況のモニタリングと管理
定期的に利用状況を監視する仕組みを導入し、クラウドサービスの重複や不要なリソースを削減することで、予算内でのクラウド運用を実現します。
クラウド環境におけるシャドーITと無駄コストの問題に対しては、透明性と一貫した管理を徹底し、リスク低減とコスト最適化を同時に進めるアプローチが求められます。
シャドーITへの対策:透明性を重視したクラウド環境の構築
シャドーITのリスク低減アプローチ
シャドーIT対策は、抑制や禁止だけでなく、従業員や事業部門が独自に導入したIT製品やサービスの利用状況を可視化し、透明性のある運用環境を育むことが重要です。この透明性が、独自導入によるリスクを管理しながらも従業員の生産性向上と事業のアジリティ(俊敏性)向上に貢献します。
透明性の向上と積極的な導入
従業員や部門が選んだIT製品やサービスの導入は、慎重に取り入れつつも、その利用状況を可視化し、IT部門が必要に応じてサポートを提供できる体制が理想的です。ベストプラクティスを徹底し、セキュリティ対策やガイドラインを周知することで、クラウド導入のリスクを減らします。
事前申請プロセスの整備
従業員が新しいクラウドサービスを利用する際、IT部門に事前申請する仕組みを整えることも、セキュリティやコスト管理の観点から有効です。このプロセスによって、マルチクラウドの利用状況が十分に可視化され、リスク管理も容易になります。
マルチクラウド管理とコスト最適化
マルチクラウド管理における無駄なコストの発生とその対策
適切なコスト管理は、マルチクラウド運用において不可欠です。管理が行き届かないと、競合サービスのコスト優位性を見逃し、不要なコスト負担につながります。以下の対策により、コストの最適化を進めることが可能です:
事前コスト評価とサービス選定
各クラウドサービスを導入する前に、コスト評価を実施し、自社ニーズに合うサービスを見極めることが重要です。特に、クラウドごとの特性を考慮し、必要な機能を持つ最も費用対効果の高いサービスを選定することで、運用コストの最適化が図れます。
既存のアプリケーションコスト評価と移行の検討
コストが問題化しているアプリケーションは、他のコストパフォーマンスに優れたクラウドサービスへの移行を検討します。運用の慣れを理由に固定のサービスを利用し続けることは避け、コスト削減の機会を積極的に検討しましょう。
相互運用性を考慮したマルチクラウド設計
マルチクラウド設計では、異なるクラウド間でのアプリケーション移行や運用がシームレスに行えるよう、相互運用性を重視することが重要です。適切な計画と管理により、クラウド間の移行効率を高め、柔軟でコスト効果の高いクラウド環境を構築できます。
これらの施策により、シャドーITによるリスクを抑え、クラウドの利用コストを最適化することが可能です。
「シャドーIT」による“勝手マルチクラウド”の拡大とそのリスク対策
マルチクラウドの活用と広がるリスク
複数のクラウドサービスを同時に運用する「マルチクラウド」は、各アプリケーションの要件に合わせた最適なサービスを選択する柔軟性を提供します。しかし、マルチクラウドの導入は、明確な戦略と管理がなければデータの重複やセキュリティリスク、コスト増を招くことにもなります。企業のIT環境が迅速なデジタル化に対応するなかで、パンデミック以降、クラウド利用が急増していることからも、この問題の重要性が一層高まっています。
調査から見るマルチクラウド導入の実態
データ保護企業Veeam Softwareの調査(2021年3月)では、回答者の91%がパンデミック初期にクラウドサービス利用を増加させ、60%がクラウドサービスをIT方針に加える計画であることが明らかになりました。一方で、経済的不確実性が大きな懸念材料であるとした回答者が40%に上るなど、運用効率やコスト管理の重要性が浮き彫りになっています。
「シャドーIT」が生む無計画なマルチクラウドのリスク
事業部門がIT部門の承認を得ずにクラウドサービスを導入すること、いわゆる「シャドーIT」は、特にテレワークの普及に伴い急速に増加しています。この無計画なマルチクラウドがセキュリティ上の盲点を生み、IT部門が把握していないサービスがセキュリティインシデントの原因となることも少なくありません。
マルチクラウド管理における4つの課題とリスク軽減のためのポイント
セキュリティリスク:シャドーITによる「勝手マルチクラウド」
事業部門が独自にクラウドサービスを導入することで、IT部門に可視化されていないクラウド環境が生まれ、セキュリティ管理に重大なリスクが発生します。これは、インシデントが発生した際にIT部門が対処できない場合を増やし、攻撃の標的ともなり得ます。
対策:IT部門による定期的なサービスの棚卸しと、エンドユーザー向けのクラウドセキュリティポリシーの周知を徹底し、シャドーITの影響を最小限に抑えるためのリスク可視化ツールを活用しましょう。
その他の課題としては、運用コストの予測と調整が重要なポイントとなります。
シャドーITと「勝手マルチクラウド」への対策:コスト管理と運用効率の最適化
コストの課題に対処するためのアプローチ
特定のクラウドアプリケーションで高コストが問題化している場合、費用対効果の優れた他のクラウドサービスに移行することを検討することが合理的です。使用慣れや既存の関係性に縛られることなく、コストと運用効率を重視して柔軟にサービスを見直すことが求められます。また、マルチクラウド戦略の設計においては、異なるクラウドサービスの相互運用性の確保が重要です。適切な計画と管理が行われれば、クラウド間のアプリケーション移行は、オンプレミスからの移行よりも高い効率性を実現できる可能性があります。
「シャドーIT」による「勝手マルチクラウド」のリスクと管理策
特定のベンダーへの依存を避けるため、用途に応じて複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド」を採用する企業が増えています。複数のサービスを活用することで、各アプリケーションに最適な機能を選択できるメリットがある一方、計画と管理が不十分なままでは、コストやセキュリティリスクの増大につながります。特に、パンデミック以降のリモートワーク拡大に伴い、「シャドーIT」が組織内で勝手にマルチクラウド構成を生み出し、知らない間に運用されているケースが多発しています。
調査結果とリスクの現状
データ保護企業Veeam Softwareの調査(2021年3月)によれば、IT意思決定者の91%がパンデミック初期にクラウドサービス利用が増加したと回答し、60%がIT製品方針にクラウドサービス追加を計画しています。しかし、40%が不安定な経済状況がクラウド利用に影響を及ぼしていると懸念しています。十分な可視性がない場合、データの重複やセキュリティリスクの増加、高コストが発生する可能性があるため、適切なモニタリングとコスト管理が不可欠です。
対策のヒント
コスト評価と見直し:利用するクラウドサービスの事前評価とコスト見直しを定期的に実施。
ポリシーの可視化と周知:エンドユーザーへのクラウドポリシー周知と、監視体制の強化により、シャドーITによる無計画なマルチクラウド化のリスクを軽減します。
シャドーITによるマルチクラウド管理の問題とリスク軽減策
マルチクラウド環境におけるリスクと管理ポイント
企業が複数のクラウドサービスを導入する際に注意すべき問題は、シャドーITによる「勝手マルチクラウド」がセキュリティリスクを高める可能性です。事業部門や従業員がIT部門の許可を得ずにクラウドサービスを使用することは一般的で、特にリモートワークの普及に伴い増加しています。シャドーITは、管理外のサービスが導入されることで、セキュリティや運用上のリスクが増大する傾向にあります。IT部門が把握した時点で問題が顕在化しているケースも多く、セキュリティインシデントが発生するリスクを高めます。
クラウド利用の簡便性とシャドーITのリスク
クラウドサービスは手軽に導入でき、ライセンス契約を結ぶだけで即座に使用できるため、事業部門や個人がIT部門の承認を得ずにサービスを利用しやすい環境です。例として、社員が規則に反して無許可のクラウドサービスを利用することは物理的な制約がなく、禁止しても完全に防ぐのが難しい状況です。特にITリテラシーが低いユーザーが独自に導入し、セキュリティ設定が不十分なまま利用する場合、外部からの不正アクセスやデータ漏洩のリスクが一層高まります。
シャドーITによるリスクが拡大する理由
この「勝手な利用」は、導入時のみならず運用面にも影響を及ぼします。特に、セキュリティが確保されていないネットワーク経由でクラウドサービスがアクセス可能な場合、リスクが増幅されます。例えば社外からのアクセスにより、企業の管理外で情報が扱われることで、セキュリティ脆弱性が増加し、不正アクセスリスクの高まりが懸念されます。
対策とリスク軽減のヒント
可視性の向上とガバナンス強化:エンドユーザーへのクラウド利用に関するポリシー教育と、管理外クラウドサービスの利用状況の可視化を図る。
定期的なセキュリティチェック:IT部門と各事業部門の協力のもと、使用されるクラウドサービスがガバナンスに沿っているか定期的に確認する。
アクセス制御の徹底:社外ネットワークからのアクセスに対し、適切な制限と認証プロセスを設けることで、情報漏洩リスクを最小限に抑える。
これにより、シャドーITがもたらす無許可のマルチクラウド利用によるリスクを管理しやすくなり、企業全体のセキュリティ強化とコスト管理に寄与します。
データコンサルタントの視点でのセキュリティ対策とシャドーITの課題
現在実施中のエンドポイントセキュリティ対策
アンチウイルス製品(EPP): 従来型のエンドポイント保護ソリューション。既知のマルウェアやウイルスに対する基本的な防御を提供します。
次世代型アンチウイルス製品(NGAV): AIや機械学習を活用して未知の脅威を検知し、従来のアンチウイルス製品では対応が難しい高度な攻撃からエンドポイントを保護します。
Endpoint Detection and Response(EDR): エンドポイントでの不審な活動をリアルタイムで監視し、インシデント発生時の迅速な対応を可能にします。これにより、攻撃の早期検出と対策を行うことができます。
無害化: 不正なファイルやデータを検知し、安全な状態に変換することで、エンドポイントやネットワークへの影響を最小限に抑えます。
ネットワーク分離: 重要なデータやシステムを隔離することで、攻撃が成功した場合でも被害の拡大を防止します。
シャドーITによる情報漏えいリスク
SaaSの管理不足によるリスク: 管理されていないSaaSの利用により、組織の情報が個人のストレージに保存され、不正な持ち出しや漏えいが発生するリスクがあります。また、禁止されている製品や組織のセキュリティ基準に合致しないSaaSの利用が、ウイルス感染や情報漏えいの原因となります。
シャドーITの主な課題と問題点
SaaS利用の実態把握の欠如: 従業員が使用しているSaaSの実態を把握できていないことが、組織のセキュリティ管理における重大なリスクとなっています。
私物デバイスの紛失による情報漏えいリスク: 従業員が私物のPCやスマートフォンで業務を行う場合、そのデバイスの紛失によって組織の情報が漏えいするリスクが高まります。
マルウェア感染によるネットワーク拡大のリスク: 私物PCがマルウェアに感染した場合、社内ネットワーク全体に感染が広がる可能性があります。
チャット・メール、オンラインストレージ経由の情報漏えい: チャットやメール、オンラインストレージを経由した情報漏えいが、シャドーITの主要なリスクとして挙げられます。
IT製品・サービス利用に関するガイドラインの未整備: 従業員が利用するIT製品やサービスに関するガイドラインが整備されていない場合、シャドーITのリスクを効果的に管理することが難しくなります。
シャドーIT対策のリソース不足: シャドーIT対策を行うための人員、ツール、予算が不足していることで、適切な対策が取れない場合があります。
データコンサルタントとしてのアプローチ
可視化と管理の強化: シャドーITに関連するリスクを軽減するため、従業員が利用するSaaSやデバイスの可視化を進め、組織全体でのセキュリティ管理を強化します。
自動化ツールの導入: リソース不足に対応するため、セキュリティ対策の一部を自動化するツールを導入し、管理の効率化を図ります。
ガイドラインの策定と教育: IT製品やサービスの利用に関する明確なガイドラインを策定し、従業員に対するセキュリティ教育を徹底します。
リスクベースアプローチ: シャドーIT対策においては、リスクの高い領域に優先的にリソースを投入し、最も効果的なセキュリティ対策を講じます。
マルチクラウド化とシャドーITの進展によるセキュリティリスクの高まり
近年、企業や組織がさまざまなクラウドサービスを活用するケースが増加し、業務がクラウド依存にシフトしています。クラウド上に保管されるデータやサービスが増えるにつれて、サイバー攻撃の標的となりやすくなり、クラウド環境を狙ったサイバー攻撃が急増しています。加えて、攻撃手法も高度化し、より深刻なリスクをもたらす状況です。
また、米国ITリサーチ企業によると、「2025年までにクラウドに関するセキュリティインシデントの99%は顧客側の設定ミスや管理不足が原因となる」と予測しています。この予測は、クラウドサービスの急速な普及が、適切なセキュリティ管理の欠如を伴う可能性を示しています。
マルチクラウド環境やハイブリッドクラウド環境が普及する一方で、IT部門の管理範囲を超えた「シャドーIT」の増加が、セキュリティ管理の難易度をさらに高めています。オンプレミスとは異なるクラウド固有の課題も存在し、これらを踏まえたセキュリティ対策が不可欠となっています。
クラウドセキュリティの強化:どこから手をつけるべきか
こうした背景から、多くの企業や組織にとってクラウドセキュリティの強化は喫緊の課題となっています。しかし、複数のプラットフォームやサービスプロバイダーを組み合わせた複雑なクラウド環境では、セキュリティポリシーを統一的に適用することが難しく、インシデント検知の遅れも懸念されます。
クラウドセキュリティの対策は、ネットワーク、アプリケーション、データ保護、アクセスやアイデンティティ管理と広範囲に及びます。クラウドの利便性とセキュリティを両立させるためには、各要素に合わせたセキュリティ課題の理解と管理が求められます。
「クラウドファースト」が進む中、どのようにクラウドセキュリティを強化するかは、企業のビジネス成長と信頼の維持において重要な戦略課題です。