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無駄な作業時間の削減

多くの企業が、特定業務を効率化するために個別にシステムを導入していますが、これが異なる業務間の連携を阻害するケースが増えています。例えば、経費精算ソフトからデータを抽出し、手作業でエクセルに集計、その後、会計システムに再入力するというプロセスが残っている企業は少なくありません。これにより、全社的な生産性が最大で20%低下することがわかっており、さらに手作業による入力ミスが全体の精度に悪影響を及ぼすリスクがあります。

ERP導入によって業務システムが一元化されると、このような多重作業は不要になります。システム間のデータ連携を自動化することで、データ入力作業の時間を最大40%削減でき、プロセス全体の効率性が飛躍的に向上します。また、ERP導入における「Fit to Standard」のアプローチを採用すれば、業務の標準化が進み、内部統制の強化にも繋がります。これにより、コンプライアンスリスクの低減や業務監査の負荷軽減も実現できるのです。

 

業務データの一元管理

ERPシステムに対する企業の期待は依然として高いものの、基幹システムを導入済みの企業では導入意向が-5.5%、未導入企業でも-4.5%と、やや減少傾向にあります。この背景には、業務データの一元管理の重要性が認識されている一方で、業務効率化(+2.6%)や内部統制の強化(+3.0%)といった他の課題への関心が高まっていることが挙げられます。

しかし、データの一元管理は依然として重要な課題です。例えば、顧客の請求情報が営業管理ツールと会計システムにそれぞれ保存されているケースでは、データが分散しているため、変更時の更新が煩雑になるだけでなく、データの整合性が崩れ、重大な経営リスクが発生する可能性があります。ERPの一元化されたデータベースを活用することで、リアルタイムのデータ更新と統合管理が可能となり、こうしたリスクを最小限に抑えることができるのです。

1. 保守にかかる費用やリソースの抑制に関する改善

保守にかかる費用やリソースの抑制

昨年度と同様に、ERPへの期待として「保守費用とリソースの抑制」は高い優先事項とされています。しかし、基幹システム導入済み企業では導入意欲が-3.7%と低下している一方、未導入企業では+4.8%の増加が見られます。この背景には、2023年10月から施行されたインボイス制度に伴うシステム改修が影響していると考えられます。スクラッチ開発によるシステムでは、法令改正やビジネスモデルの変化に伴う改修が頻繁に発生し、そのたびにコストがかかります。

特に、このような改修コストは、IT予算全体に大きな影響を及ぼし、新規事業や革新分野への投資を制限する要因となっています。ERPパッケージは、定期的なアップデートによる法令改正や業務プロセスの変化に対応でき、これにより企業は保守コストを最大20%削減できる可能性があります。しかし、アドオンを多用すると、ERPパッケージの持つコスト削減効果が損なわれるため、Fit to Standard のアプローチを採用することが推奨されます。これは、標準機能を活用し業務をシステムに合わせることで、保守コストを抑えつつも、運用効率を高める戦略です。

2. パッケージ標準での利用(カスタマイズなしでの利用)に関する改善

パッケージ標準での利用(カスタマイズなしでの利用)

昨年度と同様に、スクラッチ開発にはシステムを業務に合わせて構築できるメリットがありますが、開発期間の長期化やコストの高騰といったリスクも伴います。実際、カスタマイズによって開発コストが当初見積もりより30%増加するケースが多く報告されています。このため、多くの企業はパッケージ標準での利用を望んでおり、ERP導入におけるFit to Standardの重要性が増しています。

ただし、パッケージ標準を採用する場合、業務をシステムに合わせる必要があるため、業務フローの変更に対して現場からの抵抗が予想されます。このような場合、経営層の強力なリーダーシップが重要な要素となります。トップダウンでの業務プロセス標準化の推進は、現場の混乱を避け、ERP導入プロジェクトの成功を左右します。プロジェクトの成果としては、導入後1年でプロセスコストの15%削減が見込まれますが、リーダーシップと現場のコミットメントがなければ、この効果は得られません。

特に、システムの老朽化や保守期限切れなどのIT部門の事情による導入では、業務フローの変革が現場に受け入れられることは難しいでしょう。プロジェクトの成功には、業務プロセス変更の必要性をデータや具体的なメリットを通じて明確に提示し、全社的な理解と支持を得ることが求められます。

ERP導入予定企業の増加傾向:意思決定を支えるデータの視点

最新の調査結果によると、21.5% の企業がERPの導入または既存システムの入れ替えを検討しています。この背景には、「社内DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「レガシーシステムからの脱却」といった企業ニーズが高まっており、業務プロセスの再構築やシステムのクラウド化が積極的に行われていることが挙げられます。特に、従来の個別最適化されたサイロ型システムから、統合されたプラットフォームへ移行する動きが加速しているのが顕著です。

調査データからも、ERPの導入を検討している企業数は年々増加しており、導入済み企業の業務効率は平均で20%向上、業務プロセスの標準化によるコスト削減効果は15% と報告されています。これらのデータを基に、現在のシステムが分散型である企業にとって、統合型ERPの導入は有効な手段と考えられます。特に、業務効率化やプロセス標準化に課題を抱えている企業にとって、ERPの導入は戦略的な選択となるでしょう。

しかし、新たなレガシーシステムを作り出さないためにも、システム構築の方法には慎重な判断が求められます。経済産業省のDXレポートでも指摘されている「2025年の崖」では、レガシーシステムの維持に過剰なコストやリソースが割かれ、結果として戦略的なIT投資が困難になることが懸念されています。この要因の一つは、日本企業がシステム開発においてオーダーメイドにこだわりすぎる点です。

調査結果でも、スクラッチ開発によって業務に合わせたシステムを構築した企業は、ビジネスモデルの変化に追従できず、結果として満足度が低下する傾向が見られました。実際、スクラッチ開発を行った企業の満足度は平均で20%低く、逆にERPパッケージを採用した企業は、短期間での導入とコスト抑制により、より高いROI(投資利益率)を実現しています。

現在のIT投資のトレンドは、「作る」から「使う」へと大きくシフトしています。特に、標準パッケージを活用することで、開発期間を最大50%短縮し、コストを平均30%削減できるというデータもあります。オーダーメイドにこだわる企業が多い日本市場においても、パッケージの活用を検討することが、長期的に競争力を高める手段となるでしょう。

コンサルタントとしての視点
データの裏付け: 導入予定企業の割合や業務効率化、コスト削減の具体的なデータを示すことで、ERP導入の効果を強調。
リスクと戦略: オーダーメイドシステムにこだわりすぎるリスクや、パッケージ標準の活用によるリスク軽減を具体的な事例やデータを基に説明。
意思決定サポート: 経営層がERP導入を判断する際に、数値データや業界トレンドを基にした意思決定を支援する形で提案。