1. サイバーハイジーンとは?
サイバーハイジーン(サイバー衛生管理)は、社内のIT環境や個人PCのセキュリティを健全な状態に保つための基本的な活動です。物理的な衛生管理が日常生活の健康を維持するのと同様に、サイバーハイジーンは企業の情報資産を守るための重要な土台です。
現代では、様々なサイバーセキュリティ対策が求められており、特にIT資産の脆弱性を狙った攻撃に対する対応が急務となっています。基本的な対策として、最新のセキュリティパッチの適用や、不正インストールの防止が含まれますが、これらを徹底できている企業は少数にとどまります。
2. なぜサイバーハイジーンの徹底が難しいのか?
セキュリティパッチ適用の徹底は、多くの企業で課題となっています。その理由は次の通りです:
危機感の欠如:サイバー攻撃のリスクが具体的に目に見えないため、対策が後回しにされがちです。
業務への影響:パッチ適用中に業務が停止したり、システムが不安定になることを恐れる企業が多いです。
人的リソースの不足:セキュリティパッチ適用には人手が必要であり、IT部門の負荷が増えることから優先順位が下がることがあります。
これらの要因により、企業は基本的なセキュリティ対策すら徹底できないケースが増えています。
3. 未知のマルウェアへの備えは可能か?
未知のマルウェアへの対策は、基本的にはその存在を事前に予測することが困難であり、従来のセキュリティ手法だけでは十分ではありません。一般的には、未知のマルウェアに対する事前の予防策は難しいとされています。
しかし、サイバーハイジーンの基本的な対策に加え、被害の最小化や復旧プロセスの迅速化に重点を置くことが重要です。これには、侵入検知システムや異常検知の強化、データのバックアップを定期的に行うなどの対策が含まれます。未知の脅威に対する完全な防御は難しいものの、リスクを最小限に抑えるためのプロアクティブな施策が求められます。
4. サイバーハイジーンの重要性と実際の損害事例
サイバーハイジーンは、基本的なセキュリティ対策を徹底することで、感染や情報流出といった被害のリスクを最小限に抑える役割を果たします。多額の投資を行っても被害が発生する原因として、次の要因が挙げられます:
サイバー攻撃の高度化:外部からの攻撃手口が日々進化し、防御の難易度が増しています。
人的ミスや内部不正:従業員の不注意や不正行為による情報流出も見逃せないリスクです。
これらの要因により、多くの企業がサイバーインシデントに見舞われていますが、基本的なサイバーハイジーンを徹底することで、被害の発生確率を大幅に低減できる可能性があります。特に、定期的なシステム更新や監視体制の強化を行うことで、リスクの早期発見と対処が可能になります。
デバイスハイジーンの確立
効果的なデバイスハイジーンを実現するためには、まず明確に定義されたセキュリティ要件を満たすデバイスのみがビジネスリソースにアクセスできる仕組みを構築することが不可欠です。これには、データ駆動型のプロアクティブなアプローチを採用し、デバイスに存在するソフトウェアの脆弱性に対して、オペレーティングシステムやアプリケーションに自動的にパッチを適用できる仕組みを取り入れる必要があります。また、脆弱なデバイスをリアルタイムで隔離する仕組みを導入することで、リスクを低減することが可能です。
これにより、データセキュリティの向上が期待でき、組織の攻撃対象領域を縮小することができます。一方で、デバイスハイジーンが適切に管理されていない場合、組織はランサムウェアなどのサイバー攻撃のリスクが増大します。特に、デバイス管理が不十分な組織では、専用のセキュリティソリューションを導入するだけでなく、IT部門がデータの脆弱性を積極的に追跡し、サイバー攻撃から保護する責任を負うことが重要です。
モバイルデバイスのハイジーン
従業員の71%がモバイルデバイスを仕事に不可欠と考えている一方で、セキュリティリーダーは、リモートワーカーがオフィスワーカーに比べてリスクにさらされやすいと指摘しています。しかしながら、セキュリティ専門家の75%は、利便性の圧力によりモバイルデバイスのセキュリティを犠牲にしています。このような状況は、データ保護において重大なリスクを生じさせます。
強固なモバイルデバイスハイジーンを確立することは、デバイスの脆弱性(ジェイルブレイクやルート化の検知、脆弱なOSバージョンなど)、ネットワークの脆弱性(中間者攻撃や安全でないWi-Fi接続など)、アプリケーションの脆弱性(高リスクアプリやサイドロードされたアプリなど)を検出し対処するために重要です。
さらに、モバイルデバイスハイジーンの確立により、以下のメリットが期待できます:
リスクベースのインテリジェンスによる自動化:データ分析を活用した実行可能なリスクインテリジェンスにより、ヒューマンエラーを削減し、IT投資の最適化が可能となります。
ゼロデイ攻撃の検出と修復:データを基にしたゼロデイ脅威の早期検出および修復により、未知のリスクに対する事前対策が可能になります。
オフラインデバイスの監視:接続されていないデバイスについても、リスクの検出と修正が可能となり、データ漏洩リスクを低減します。
攻撃対象領域の縮小:モバイルデバイスの管理を強化することで、組織のデータ、リソース、およびブランドの保護が促進されます。
結論
デバイスやモバイルハイジーンを適切に確立することで、組織はサイバー攻撃のリスクを大幅に減少させ、データの保護と業務の継続性を確保できます。データに基づいたインテリジェントなソリューションの導入は、将来の脅威に対する効果的な防御策として機能します。
デスクトップ/ノートパソコンのハイジーン
ランサムウェア攻撃やデータ漏洩の脅威は今後も継続すると考えられるため、組織はこれに対する効果的な防御策を講じる必要があります。その中でも、共通脆弱性識別子(Common Vulnerabilities and Exposures/CVE)に対するパッチ適用は、ランサムウェア攻撃に対抗するための重要な手段の1つです。
しかし、Ivantiの調査によると、ITおよびセキュリティ専門家の71%が、パッチ適用を過度に複雑で時間がかかると感じています。この原因の1つには、膨大な数の脆弱性が存在することが挙げられます。米国の**脆弱性情報データベース(NVD)**には、10万件を超える脆弱性がリストされていますが、そのうちランサムウェアに直接関連する脆弱性はごく一部です。さらに、実際に攻撃に使用されるエクスプロイトも限られているため、どの脆弱性が組織にとって最もリスクが高いのかを特定することが課題となっています。
Ivantiのレポートによると、2018年から2020年にかけて、CVSS v3スコアリングを使用して重要な脆弱性のみにパッチを適用した場合、ランサムウェアに対するカバー率はわずか35%にとどまるという結果が出ています。これを踏まえ、自動化されたリスク情報に基づくパッチ適用が、デスクトップやラップトップのデバイスハイジーンにおいて不可欠です。
デスクトップ/ノートパソコンのハイジーンの確立によるメリット
自動化されたリスクベースのインテリジェンス
モバイルデバイスのハイジーンと同様に、デスクトップやラップトップの管理においても、リスクベースのインテリジェンスを自動化することで、ヒューマンエラーを削減し、IT投資の最適化が可能になります。
実際のリスクに基づいたCVEパッチ適用
組織にとって最もリスクが高い脆弱性を特定し、戦略的にパッチを適用することで、ランサムウェア攻撃のリスクを大幅に軽減します。
脅威の優先順位付けによる最適化
自動化された脅威の優先順位付けを活用し、パッチ適用プロセスを戦略化することで、リソース配分を最適化します。これにより、重要な脆弱性に迅速に対応することが可能です。
対応の自動化による防御力強化
パッチ適用にとどまらず、対応プロセス全体を自動化することで、人の介入を必要とせず、迅速かつ効率的に脅威に対抗できる環境を構築できます。これにより、攻撃対応の迅速化とセキュリティ態勢の強化が図れます。
結論
デスクトップおよびノートパソコンのハイジーンは、ランサムウェアやデータ漏洩から組織を保護する上で重要な要素です。自動化されたリスクベースのインテリジェンスとパッチ適用プロセスを導入することで、組織はより効果的に脆弱性に対応し、データの安全性を確保することができます。
デスクトップ/ラップトップデバイスハイジーンにおける注目すべき機能
デスクトップやラップトップデバイスのセキュリティを強化するためには、脆弱性を排除、または最小化するために定期的なソフトウェアのアップデートが不可欠です。特に、膨大な数のパッチを適用する必要がある場合、これを効率的に管理することは重要です。リスクを自動的に評価し、行動可能なインテリジェンスを提供し、最も緊急度の高い脆弱性に優先順位を付けることができるソリューションは、パッチ適用を効率化するための強力なツールとなります。
リスクベースの優先順位付けによって、組織のデジタル環境内で最もリスクの高い弱点を可視化することが可能です。これにより、最も重要なパッチ適用が必要な領域を明確にし、リソースを効率的に割り当てることができます。特に、脆弱性を現実の脅威に基づいた情報にマッピングするアクティブな脅威コンテキストは、ITやセキュリティチームにとって非常に有用です。これにより、最も影響力の大きい脅威を優先して対策を講じることができ、結果的にリスク軽減に貢献します。
デジタルレジリエンスの重要性
現代の企業は、システムやソフトウェアの障害を最小限に抑えるための戦略を導入していますが、特にトップクラスの企業は、障害に備えたソフトウェア設計を重視しています。これには、カオステストや自動復旧といった技術を取り入れ、システムの**レジリエンス(復元力)**を強化するアプローチが含まれます。こうしたレジリエンス強化は、企業が顧客のニーズや市場の変化に即座に対応できる柔軟性を持つために重要です。
データからも明らかなように、リーダー企業はこれらのアプローチを積極的に採用しており、カオステストの実施率が77%、自動復旧システムの導入率が89%と高い数値を示しています。これに対して、遅れを取っている企業は、カオステストの実施率が30%、自動復旧システムの導入率はわずか5%にとどまっています。
このようなレジリエンスへの取り組みは、実際に成果を上げています。例えば、リーダー企業の83%では、1ヵ月間に発生する大規模なシステム停止の回数が5回未満です。一方、遅れを取っている企業では同様の回答をした割合はわずか3%です。また、問題解決に要する時間においても、リーダー企業の75%が「平均解決時間が30分未満」と回答しているのに対し、遅れを取っている企業ではわずか1%に過ぎません。
結論
デスクトップやラップトップのハイジーンとデジタルレジリエンスの向上は、企業がランサムウェアやその他のサイバー脅威に対して強固な防御を構築するための鍵となります。自動化されたリスク評価や脅威優先順位付け、カオステストや自動復旧といったソリューションを導入することで、組織はデータの安全性を保ちつつ、迅速な対応力を持つシステムを維持することが可能になります。
パフォーマンス、エンドユーザーエクスペリエンス、ネットワーク動作の包括的な可視化の欠如によるリスク
システムのパフォーマンスを最適化するためには、エンドユーザーエクスペリエンス、パフォーマンス、ネットワークの動作を一貫してモニタリングする必要があります。しかし、これが十分にできていない場合、新しい変更がシステム全体に与える影響を正確に評価することが難しくなり、盲点が生まれます。このような状況では、結果としてパフォーマンスが低下し、業務効率やユーザー体験に悪影響が及ぶ可能性があります。
問題検出から解決までの非効率性
新しいコードや設定、アップデートの適用時には、必ず別のシステム部分に予期せぬ影響が発生するリスクがあります。これにより、遅延、エラー、異常な挙動が生じ、カスタマーエクスペリエンスやビジネス成果に悪影響を及ぼすことがあるのです。特にクラウドネイティブな環境では、多数のサービスが連携して動作しており、問題のアラート、切り分け、解決には非常に多くの時間と労力を要します。
従来の監視ソリューションでは、データをサンプリングして可視化するため、システム全体の問題を捉えきれず、問題の根本原因の特定に時間がかかることが多いです。さらに、従来のソリューションは、ユーザーエクスペリエンスの可視化にも限界があり、特にブラウザ上で動作する最新アプリケーションに対しては、その欠点が顕著になります。
システムレジリエンスとイノベーションのバランス管理の課題
エンジニアリングリーダーは、システムのレジリエンス強化とイノベーション推進の間で優先順位を決定するという難しい選択を迫られることが多くあります。新機能の導入はビジネスの成長に不可欠ですが、同時にシステム全体の安定性を低下させるリスクも伴います。多くの監視ソリューションはアラート生成や可用性監視を提供していますが、顧客向けアプリケーションでは稼働時間の監視だけでは不十分です。サービスの安定性と、ユーザーエクスペリエンスを考慮したパフォーマンス管理が必要です。
優先順位の最適化によるチーム負担の軽減と顧客体験の向上
チームの負担を軽減し、カスタマーエクスペリエンスとビジネス成果を健全に保つためには、正確な優先順位付けが重要です。これには、単なるアラートや稼働時間の監視にとどまらず、システム全体のリスクを包括的に評価し、自動化された問題解決フローを導入することが必要です。これにより、チームのリソースを最適に活用しつつ、ビジネスの成長とシステムの安定性の両立が可能となります。
結論
システム全体の可視性や迅速な問題解決は、現代の分散システムにおいて不可欠な要素です。リスクベースの監視と自動化されたトラブルシューティングを導入することで、組織はイノベーションとレジリエンスのバランスを保ちながら、より高い顧客満足度とビジネス成果を実現することが可能です。
高度化するサイバー攻撃と巧妙化する脅威
現代の企業は、インターネットに接続している限り、常にサイバー攻撃のリスクにさらされています。Webサービスを公開するだけで、1秒に1回以上の攻撃が発生しているのが現実です。さらに攻撃手法は日々進化しており、ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS(Ransomware as a Service)」の登場により、攻撃がより容易に、かつ巧妙になっています。
脆弱性の増加とセキュリティ担当者の負担
年間25,000件以上の脆弱性が発見されており、これに対応することはセキュリティ担当者にとって非常に大きな負担となっています。特に、未知の脆弱性を悪用するゼロデイ攻撃の増加がセキュリティ対応の遅れをさらに深刻化させており、現場では防御策が追い付かない状況が続いています。
「サイバーハイジーン」と「サイバーレジリエンス」で防御力を強化
こうした脅威に対処するため、企業には2つの重要なアプローチがあります。
1つ目は「サイバーハイジーン」で、これはセキュリティパッチの適用や脆弱性への対応を徹底し、IT環境を常に安全な状態に保つことを意味します。基本的なセキュリティ対策を確実に実施することで、攻撃リスクを大幅に軽減できます。
2つ目は「サイバーレジリエンス」です。これは万が一攻撃を受けた場合でも、迅速に検知し、被害を最小限に抑えて迅速に復旧する能力を指します。システム障害やデータ漏洩の影響を最小限に抑えることが、ビジネス継続性を保つ上で重要です。
データコンサルタントからの提案:具体的な実施方法
「サイバーハイジーン」と「サイバーレジリエンス」を強化するためには、適切なツールと専門知識の活用が不可欠です。例えば、SBOM(ソフトウェア部品表)対応が可能な脆弱性管理クラウドを導入することで、システム内の脆弱性を効率的に把握・管理し、迅速な対応を促進します。また、セキュリティ専門家による第三者視点でのクラウドセキュリティ評価サービス「Assured」を活用することで、自社のセキュリティ対策を客観的に評価し、見落としていたリスクを特定することが可能です。
この提案が特に有効な企業の課題例
- 脆弱性対応に追われ、新たな対策に手が回らない
- セキュリティ対策の全体像と、それに対応する適切なソリューションがわからない
- クラウドサービスの活用を進めたいが、セキュリティリスクに不安がある
ポイント:
- 具体化・可視化: 企業が抱える課題やリスクをより明確にし、脆弱性や攻撃手法の変化に対する具体的な対応策を提示。
- データドリブンなソリューション提案: データやツールの利用を重視し、Assuredなどの具体的なソリューションを提案。