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脱クラウド(3)

脱クラウドを引き起こす「3つの主要問題」と、オンプレミス回帰に伴う「3つのコスト」とは?

クラウドサービスに一度移行したシステムをオンプレミスインフラに戻す「脱クラウド」は、なぜ発生するのか。また、オンプレミス回帰を進める際にどのようなコストが発生するのか。これらの疑問について、専門家の意見を踏まえながら分析します。

脱クラウド・オンプレミス回帰を招く「クラウドの3つの主要問題」

企業がオンプレミスからクラウドサービスへシステムを移行する動きが加速する一方で、クラウドに特有の課題も明らかになってきています。これらの課題が、最終的に「脱クラウド」を促進し、重要な業務システムをオンプレミスに回帰させる要因となります。では、クラウドのどのような問題が脱クラウドを引き起こしているのでしょうか。

問題1. 不十分なシステム設計

クラウドの真の価値を引き出すには、従来のオンプレミスインフラで稼働していたレガシーシステムをそのままクラウドに移行するのではなく、根本的にシステム設計を見直す必要があります。しかし、多くの企業はこのステップを軽視し、単に「リフト&シフト」戦略に頼ってクラウドに移行しています。その結果、予期せぬコストが発生し、クラウドサービスの費用対効果が低下しているといえます。

例えば、想定外の有償オプションが追加され、運用コストが膨らんだケースが報告されています。IT部門がシステム設計の見直しをせず、クラウド移行に踏み切った経験は珍しくなく、さらに事業部門がクラウド移行を決定した場合、技術的な誤算が生じることが多いです。

問題2. スキルのミスマッチ

クラウドサービスの運用には、従来のオンプレミスインフラとは異なるスキルセットが求められます。運用チームが適切なトレーニングを受けていない場合、この違いに対応できず、トラブルが発生する可能性があります。人材市場では「クラウドエンジニア」や「クラウドアーキテクト」といった専門職の需要が高まる一方で、供給が追いつかない現状があります。このスキルのギャップは、クラウド運用の難易度をさらに引き上げる要因となっています。

問題3. システムのミスマッチ

クラウドサービスにおいては、すべてのシステムがクラウド上で最適に動作するわけではありません。特定のシステムにはパフォーマンス、稼働時間、メンテナンス、セキュリティといった特別な要件があり、こうしたシステムはクラウド環境では非効率となる場合があります。これにより、企業はこうしたシステムを対象に「脱クラウド」を進めることが多くなっています。

脱クラウドを引き起こすクラウド課題
クラウド運用におけるスキルのミスマッチの原因
クラウド移行を再評価する理由は?
クラウド移行におけるシステム設計の課題
システム設計の見直しなしでクラウド移行
リフト&シフト戦略 利点 欠点
クラウド環境におけるシステムの非効率性

脱クラウドとハイブリッドクラウドにおけるインフラ管理

クラウドベンダーが提供する「脱クラウド」対応ソリューション
クラウドベンダーは、「脱クラウド」のトレンドに対応し、パブリッククラウドの機能をオンプレミスのインフラで活用できるサービスを提供しています。代表的なものに、Amazon Web Services (AWS) の「AWS Outposts」、Google の「Anthos」、Microsoft の「Azure Stack」などがあります。Forrester ResearchのLauren Nelson氏は、「これらのサービスは、同一のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を通じてオンプレミスインフラとクラウドサービスを統一的に管理できるため、ハイブリッドクラウドにおける効果的な解決策の一つとなり得る」と述べています。

データコンサルタントの視点:

APIベースの統合管理: クラウドとオンプレミス環境を同じAPIで管理できることで、運用管理の一貫性と効率性が向上します。企業が複数の環境を同時に管理する際、統一的な管理フレームワークが整っていることは、スキルセットの効率的な活用と運用コストの削減につながります。
柔軟な運用体制: これらのソリューションは、オンプレミスとクラウド間のスムーズな移行や併用を可能にするため、企業のニーズに応じた柔軟なインフラ運用が実現可能です。

ハイブリッドクラウドの前提としての将来予測
企業ごとのインフラ運用方針は異なりますが、Nelson氏は、今後は一定程度「ハイブリッドクラウド」を前提にした設計が必要になると予測しています。これまでは、オンプレミスとクラウドを別々に扱うことが一般的でしたが、システムの高いポータビリティ(可搬性)や統一性が求められる中で、統合的な管理の選択肢が増加していくでしょう。

データコンサルタントの視点:

統合的なインフラ戦略の推進: デジタル化が進む現代において、オンプレミスとクラウドを完全に分離するよりも、両者をシームレスに統合することがますます重要になります。特にデータのポータビリティやアプリケーションの柔軟な運用を可能にするインフラ戦略が求められています。
適切なシステム設計: ポータビリティの向上は、業務の変動や新たな技術導入に対応するための柔軟なインフラ基盤を提供します。そのため、企業ごとに最適なハイブリッドクラウドのアーキテクチャを設計することが今後の鍵となります。

データ統合とデータファブリックの重要性
ハイブリッドクラウドの運用管理を簡素化するためには、データ統合やデータファブリック(異なる場所に点在するデータを統合的に扱うアーキテクチャ)も重要です。特に企業のシステムが多岐にわたる場合、異なるデータソースからデータを抽出して統合する機能は、運用効率の向上に不可欠です。

データコンサルタントの視点:

データファブリックの活用: データが分散している環境において、データファブリックの導入により、一元的なデータ管理が可能になります。これにより、異なるシステム間でのデータアクセスや運用が容易になり、企業はリアルタイムに重要なデータを活用することができるでしょう。
データ統合によるビジネス価値の向上: データの統合により、企業は全体の視点からデータを活用でき、業務プロセスの改善や迅速な意思決定が可能になります。このような統合アーキテクチャの構築は、特にデータドリブンな企業にとって競争力を高める要素となります。

エッジコンピューティングの台頭とハイブリッドクラウドの多様化
IDCのアナリスト、Deepak Mohan氏は、今後はエッジ(データが発生する場所)の重要性が高まり、それに伴いインフラの在り方が変わると予測しています。彼は、「エッジデバイスやデータにコンピューティング機能を近づけるアーキテクチャが拡大している」と述べ、クラウドとエッジの接続が進むにつれて、ハイブリッドクラウドの構成も一層多様化すると考えています。

データコンサルタントの視点:

エッジコンピューティングの役割: エッジコンピューティングは、リアルタイムデータ処理を必要とするビジネスユースケースにおいて非常に効果的です。クラウドのバックエンドシステムとエッジデバイスが統合されることで、より迅速で効率的なデータ処理が実現します。
新たなハイブリッドクラウドモデル: エッジコンピューティングが広がる中で、クラウドとエッジを統合した新しいハイブリッドクラウドモデルが必要になります。この新しいモデルでは、クラウドのスケーラビリティとエッジのリアルタイム性を組み合わせ、企業がより迅速にデータを活用する基盤を提供します。
 ハイブリッドクラウドの未来とデータ管理の最適化

ハイブリッドクラウドは、オンプレミスとクラウドの両方のメリットを活かしながら、今後ますます多様化していくと予測されます。エッジコンピューティングの成長や、APIベースの統合管理の普及により、企業はシステムの柔軟性と効率性を高めつつ、データ管理を最適化していく必要があります。データコンサルタントとしては、こうした技術動向を踏まえ、企業ごとに最適なインフラ設計を提案し、データ活用の最大化を支援することが重要です。

エッジコンピューティングとハイブリッドクラウド統合
データ管理戦略における影響と実装の複雑さ
ハイブリッドクラウド戦略におけるシステム柔軟性とデータ管理の最適化
ハイブリッドクラウドソリューションの比較
ハイブリッドクラウド戦略におけるシステム設計と統合のバランス
ハイブリッドクラウド運用におけるデータ統合の課題
脱クラウドの原因とコスト
エッジコンピューティングとハイブリッドクラウドの
データ管理戦略における影響と実装の複雑さ

データコンサルタント視点から見るデータ資産の配置戦略:オンプレミス vs パブリッククラウド
データコンサルタントとして、企業のデータ資産をどこに保管し、どのように処理・管理するかという意思決定は、データセキュリティ、データガバナンス、データ処理パフォーマンス、およびコスト効率に大きな影響を与える戦略的な課題であると認識しています。アプリケーションのみならず、その基盤となるデータの特性と要件を十分に考慮せずにオンプレミスまたはパブリッククラウドを選択すると、データ管理の非効率性や、データおよびワークロードをパブリッククラウドからオンプレミスに戻す「脱クラウド」といった、追加のコストと複雑性を伴う結果を招きかねません。本稿では、オンプレミスとパブリッククラウドのデータセンターにおける、データ管理に関する長所と短所をデータ視点から解説します。

1. オンプレミス環境におけるデータ管理の特性
長所(データガバナンスと可視性):
オンプレミス環境においては、企業がシステム全体を完全に管理下に置くことができます。これは、機密性の高いデータ資産に対する厳格なデータセキュリティポリシーやデータガバナンス要件を適用し、業界規制や法令遵守(コンプライアンスに関連するデータ)を容易にする上で大きな利点となります。自社で導入するシステム構成要素を詳細に決定できるため、データ処理パイプラインやインフラストラクチャ全体のデータパフォーマンス(データスループット、リソース利用率など)に関する極めて高い可視性を得ることが可能です。これにより、データ処理のボトルネックを特定し、パフォーマンスデータを分析して最適化を直接行うことができます。

短所(コストと運用負担データ):
一方で、オンプレミス環境は初期投資(CapEx)がパブリッククラウドと比較して高額になる傾向があります。加えて、設備の老朽化、ハードウェアの故障、ソフトウェアの陳腐化などにより発生する改修やアップグレードにかかる費用が運用コストデータとして積み上がっていく傾向にあります。データセキュリティ対策についても、自社で全てを管理する必要があり、セキュリティエンジニアのトレーニング費用や、最新の脅威情報に基づいたセキュリティ対策への継続的な投資が運用負担データとして増加します。

2. パブリッククラウド環境におけるデータ管理の特性
長所(コスト効率とスケーラビリティ):
パブリッククラウドの最大の利点は、使用したデータストレージ容量、データ転送量(ネットワーク帯域幅)、およびデータ処理に使用したコンピューティングリソースに基づいた従量課金モデルにより、初期投資(OpEx)を抑えられる点です。また、仮想化されたインフラストラクチャを必要に応じて利用できるため、データ量やデータ処理ワークロードの変動に迅速に対応したシステムのリソース拡張または縮小(スケーラビリティ)が容易に行えます。クラウドベンダーがインフラストラクチャのメンテナンスや基本的なセキュリティ対策の一部を担うことで、データ管理に関する運用コストを削減できる可能性もあります。

短所(コスト管理の複雑性とカスタマイズの限界):
しかし、使用するデータ量、データ転送量、および計算リソースの変動が、月々の利用料金の変動データとして現れるため、特に大規模なデータ処理や高頻度なデータ転送を行うワークロードでは、コスト管理が複雑になり、コスト予測が困難になる場合があります。パブリッククラウドのサービスは一般的に、特定のデータ処理パターンやサービス提供モデルに基づいて設計されているため、企業の固有のデータ処理ニーズやカスタム要件への対応に限界がある場合がある点も考慮が必要です。

データ資産配置の意思決定における総合的な判断
オンプレミスとパブリッククラウドには、それぞれデータ管理に関する明確な長所と短所が存在します。どちらの選択肢が最適であるかの最終的な判断は、組織が扱うデータの種類(機密性、量、リアルタイム性)、データセキュリティ要件、データガバナンスおよびコンプライアンス要件(関連する規制データ)、そして予算(コストデータ)といった、データに基づいた複数の要素を総合的に考慮して行う必要があります。

ハイブリッドクラウドによるデータ活用の最適化
現実の多くのシナリオにおいては、オンプレミスとパブリッククラウド双方のデータ管理上のメリットを享受するために、両者を組み合わせたハイブリッドクラウド環境を導入する動きが広がる傾向にあります。ハイブリッドクラウドを導入することで、例えば、機密性の高いデータ資産を厳格なデータガバナンスの下でオンプレミスに保管しつつ、データ分析や一時的なデータ処理のためにパブリッククラウドの柔軟なスケーラビリティを活用することが可能になります。これにより、データセキュリティを確保しながら、データ処理能力の拡張性、アプリケーションの応答時間といったパフォーマンスデータに基づいた改善、および全体的なコストの最適化(コストデータ)を実現できます。これは、データ特性とビジネス要件に合わせて最適なデータ保管・処理場所を選択する、データ駆動型のアプローチと言えます。データコンサルタントとして、お客様の固有のデータ環境とビジネスニーズを深く理解し、最適なデータ基盤戦略としてのハイブリッドクラウド構成とそのデータ管理方法を提案することを重視しています。