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データ駆動型コンテナ環境におけるAKSコントロールプレーンの運用データ監視と分析

データ駆動型アプリケーションがKubernetesクラスタ上で実行される場合、その基盤となるAKSコントロールプレーンは、データワークロードのデプロイ、管理、およびスケーリングを担う重要なコンポーネントです。Azureがユーザーに代わってAKSコントロールプレーンを管理してくれるマネージドサービスであっても、そこから生成される運用データ(監査ログ、パフォーマンスメトリクスなど)を収集・分析することには、データコンサルタントの視点から見ても大きな意味があります。これらのデータは、Kubernetesクラスタ全体の健全性、リソース管理、そしてコンテナ化されたデータワークロードの円滑な実行に関する重要な指標となります。

APIサーバーは、クラスタの状態に対するすべての変更(例:Podのデプロイ・削除、サービス設定の更新といったデータワークロードに関連するイベント)を処理する中心的なコンポーネントです。また、コントロールプレーンの他の部分からCluster Autoscalerのようなサービスに至るまで、内部外部のさまざまなコンポーネントからの要求を処理します。これらのアクティビティはすべて、Kubernetesの監査ログという形で詳細な運用データとして記録されます。また、コントロールプレーンのコンポーネント自体も、スケジューリングやデータワークロードのオーケストレーションに関する問題をデータに基づいて検出するのに役立つパフォーマンスメトリクスを出力します。

監査ログとコントロールプレーンメトリクスからのデータに基づいた洞察
監査ログとコントロールプレーンメトリクスは、クラスタの重要な変化に関する情報を提供し、データワークロードの円滑な実行を妨げる前に深刻なボトルネックを検出するのに役立ちます。監査ログを分析することで、誰が、いつ、どのような操作をクラスタに対して行ったかといったデータワークロードの管理履歴を追跡し、予期せぬ変更やセキュリティ関連のイベントをデータに基づいて特定できます。パフォーマンスメトリクスは、コントロールプレーンの各コンポーネントがどれだけ効率的に動作しているかを示し、処理の遅延やリソースの飽和といった潜在的な問題を運用データから検出します。

APIサーバー運用データの分析:データアクセスパターンと効率性
「ユーザーごとの累積APIクエリ時間」という運用メトリクスは、APIサーバーに対するデータアクセスパターンと効率性を示す重要な指標です。APIサーバーの応答が遅いといった運用上の問題が発生した場合、このメトリクスを分析することで、どのユーザーまたはクライアント/アプリケーションが最も多くのデータアクセス要求を送信し、最も遅い応答を受け取っているかをデータに基づいて詳細に調査する必要があります。Azureでは、このようなAPIサーバーへの不要なトラフィックを削減できる機会を特定することを推奨しており、これはデータアクセスパターンの分析に基づいた効率改善と言えます。例えば、APIサーバーに頻繁にポーリングクエリを実行する代わりに、クラスタの変更を自動的に通知するウォッチャーを使用する方法は、データ取得の効率を高め、APIサーバーのデータ処理負荷を軽減する効果的な手段です。

Datadogなどのモニタリングサービスを利用すれば、Kubernetesの監査ログからAPIクエリの時間情報を抽出し、ユーザー別に指標化することができます。これにより、特定のクライアントによるデータアクセス要求の過負荷をデータに基づいて容易に特定し、クラスタ全体のデータ処理能力に影響が及ぶ前に問題を修正するための強力な分析ツールとして活用できます。

スケジューラー運用データの分析:データワークロード配置の効率性
「スケジューリング期間」と「スケジューリング試行回数」というメトリクスは、スケジューラーがデータワークロード(Pod)を、その要件(必要なデータ処理能力、メモリなど)を満たすことができるノードに配置するプロセスの効率性を示す運用データです。スケジューリング期間メトリクスが高い場合、スケジューラーがノードにPodを配置するのにデータに基づいて時間がかかっている可能性を示唆しており、これはデータワークロードが適切な容量(データ処理能力)で実行されていない(必要なPodが起動できていない)可能性があることを意味します。このようなデータが観測された場合は、ノードのリソース不足(運用データに基づくキャパシティ不足)、スケジューリング制約の誤設定、またはその他の問題がデータワークロードの配置を妨げている可能性をデータに基づいて調査する必要があります。

AKSコントロールプレーンから生成されるこれらの運用データを継続的に収集・分析することで、クラスタの健全性、リソース管理、およびデータワークロードの実行に関する深い洞察を得ることができます。データコンサルタントとして、これらのデータに基づいた運用監視と分析が、コンテナ化データワークロード基盤の安定稼働とパフォーマンス最適化に不可欠であると強く推奨します。

AKSにおけるコンテナ化データワークロードのリソース管理と運用データに基づく最適化

データ駆動型アプリケーションのコンテナ化が進むAzure Kubernetes Service (AKS) 環境において、コンテナ化されたデータワークロードの実行効率と安定性を確保するためには、リソースの適切な管理と、そこから得られる運用データの継続的な分析が不可欠です。データコンサルタントとして、私たちはPodのリソースリクエストとリミットの定義が、コンテナ化されたデータワークロードが使用できるCPUやメモリといった「データ処理能力」をデータとして設定するものであると捉えており、これらの設定がデータワークロードの実行パフォーマンス、可用性、そしてコストに直接影響することを強調します。

リソースリクエストとリミット:データワークロードのパフォーマンスとコストに関わるデータ設定
AKSはベストプラクティスとして、Podのリソースリクエストとリミットを定義することを推奨しています。CPUリクエストは、そのPodが安定して実行されるために割り当てられるべきCPUまたはメモリの「最小量」、すなわち「データ処理能力の最低保証値」をデータとして指定し、リミットはPodが使用できるそのリソースの「最大量」、すなわち「データ処理能力の上限値」をデータとして定義するものです。

Kubernetesのスケジューリングプロセスの間、コントロールプレーンは、データワークロードであるPodの起動を決定する際に、そのPodの最小リソースリクエスト(マニフェストのリクエストとしてデータとして指定)を満たすのに十分なデータ処理能力が利用可能なノードが存在するかどうかをデータに基づいてチェックします。もしPodがデータ処理要求に対してあまりにも多くのリソースを要求したり、あるいは使用できるリソース数に適切な制限(リミット)をデータとして設定しなかったりすると、スケジューラーはそれらをホストするのに十分なリソースを持つノードを見つけられなくなり、結果としてPodがPending状態のままになったり、適切なノードに配置されなかったりすることで、アプリケーションのデータ処理パフォーマンスと可用性がデータに基づいて低下する可能性があります。Cluster Autoscalerなどのユーティリティは、クラスタ全体のデータ処理要求の増加に合わせて、新しいPodをホストするためのノードをデータに基づいて自動的に追加するのに有用ですが、個々のデータワークロードにとって最適なリソースリクエストとリミットがデータに基づいて適切に設定されているかを確認するために、リソースメトリクスを継続的に監視しておく必要があります。

リソースメトリクスと運用データ分析:データに基づいたキャパシティプランニングとトラブルシューティング
メモリ使用率、CPU使用率といったリソースメトリクスは、AKSノードおよびPodにおけるデータ処理能力の利用状況を示す重要な運用データです。これらの運用データを継続的に監視・分析することは、データワークロードに必要なデータ処理能力が十分にプロビジョニングされているか(データに基づいたキャパシティプランニング)を確認し、リソース不足に起因するデータワークロードのパフォーマンス問題や可用性低下をデータに基づいて早期に検出し、トラブルシューティングを行うために不可欠です。

メモリ使用率: ノードのメモリ不足(運用データ上の異常値として観測されます)が発生した場合、Kubernetesはリソースを解放するためにPodの退避(データワークロードの停止または再配置)を開始することがあります。定義されたリソース要求よりも多くのメモリを使用しているPodは、優先的に退避の対象となります。これは、リソース設定がデータ処理ワークロードの安定性に直接影響することを示しています。さらに、Podにメモリリミットをデータとして設定しなかった場合、単一のデータ処理ワークロードがノード上のすべてのメモリを占有し、同ノードで実行されている他のすべてのデータ処理ワークロードのパフォーマンスが低下する可能性があるため、クラスタ全体のデータ処理の安定性を確保するためには、データに基づいた適切なメモリリミットの設定が重要です。メモリリミットを定義する際には、Kubernetesそのものだけでなく、システムデーモンを実行するためにノードが確保する必要があるメモリ量も考慮に入れる必要があります。AKSでは、デーモン用のメモリ量に関する詳細なガイドラインをデータとして提供しています。
CPU使用率: Podが定義されたCPUの上限(データ処理能力の上限)を超えた場合、ノード上のkubeletはリソースを節約するためにPodをスロットルします。CPUスロットルはデータ処理のパフォーマンスを低下させる可能性があるため、PodがCPUリミットに近づいていないか(運用データ上でCPU使用率がリミット設定値に近づいているか)をデータに基づいて継続的に監視する必要があります。メモリリミットと同様に、CPUリミットを定義する際には、ノードがKubernetesとシステムデーモンを実行するために必要なCPUリソースも考慮に入れる必要があります。VMのサイズによって予約すべきCPU量が異なる点は、データ処理基盤の規模に応じたデータに基づいたリソース設定の重要性を示唆しています。
DatadogによるAzureコンテナ環境の運用データ監視
Azure Kubernetes ServiceまたはAzure App Serviceのどちらでコンテナ化アプリケーションを実行する場合であっても、Datadogのような統合モニタリングプラットフォームは、動的な環境からリアルタイムで運用データを収集・可視化するための強力なツールです。次のセクションでは、Datadogがどのようにこれらの運用データ(リソースメトリクス、ログ、トレースなど)の収集、分析、可視化を支援し、データコンサルタントがデータに基づいた運用判断を行う方法について詳細に説明します。

AKSにおけるコンテナ化データワークロードの安定した実行とパフォーマンス最適化は、リソースリクエストとリミットのデータに基づいた適切な定義と、メモリ使用率、CPU使用率といったリソースメトリクスを含む運用データの継続的な監視・分析にかかっています。これらのデータに基づいた運用判断を行うことで、データワークロードに必要なデータ処理能力を効率的に提供し、AKSクラスタの価値を最大限に引き出すことが可能となります。

データ駆動型コンテナ環境における多様な運用データの包括的監視と分析

データ駆動型アプリケーションの基盤として広く採用されているコンテナ環境において、アプリケーションの健全性、パフォーマンス、およびリソース利用状況を正確に把握するためには、そこから発生する多様な運用データを包括的に収集し、データに基づいて分析することが不可欠です。データコンサルタントとして、私たちはDatadogのような統合モニタリングプラットフォームが、これらのプロセスを効率化し、コンテナ化アプリケーションの運用をデータ駆動型のアプローチで支援することを認識しています。

Datadogは、Azureサービス(AKS, App Service, Azure DevOps, Azure SQL Database, Azure VM Scale Setsなど)、Kubernetes(kube-state-metrics, Metrics Serverなど)、アプリケーション(Apache, Redisなど)、そしてカスタムソースから、メトリクス、トレース、ログといった多様な種類の運用データを収集・統合する機能を提供します。この運用データの統合は、コンテナ化アプリケーション環境全体のデータに基づいた包括的な可視化と分析を可能にする基盤となります。ダッシュボードやサーバーレスビューといった可視化機能を使用してこれらの運用データを追跡することは、システム全体の健全性、パフォーマンス、およびリソース利用状況をデータに基づいて把握するための基本的なアプローチです。また、コンテナ化アプリケーションの問題を運用データ上の異常に基づいて自動的にアラートで知らせる機能は、データに基づいたプロアクティブな問題検知と、迅速な対応によるデータ処理の可用性維持を可能にします。さらに、潜在的なセキュリティ脅威や設定ミスを、運用データ(セキュリティログ、構成変更ログなど)の分析によって検出できる可能性にも言及できます。

Azureコンテナ環境からの運用データ収集と詳細分析
Datadogは、Azureコンテナ環境から運用データを収集し、詳細なデータ分析を可能にします。

AKSデータの統合: Azure Kubernetes Service (AKS) のノード、Pod、コンテナから運用データを収集する機能は、コンテナ化されたデータワークロードの実行環境に関する詳細な運用データを把握するために重要です。Datadogは、AzureとKubernetesのデータソース(kube-state-metricsからのクラスタ状態に関するデータ、Metrics Serverからのリソース使用に関するデータ、コントロールプレーン監査ログからの管理操作に関する運用データなど)を統合し、データに基づいたAKSクラスタの詳細な可視化と分析を可能にします。
App Serviceデータの収集: Azure App Serviceプランで実行されるコンテナ化Webアプリから運用データを収集する機能は、アプリケーションレベルのデータ処理パフォーマンスや健全性を把握するために重要です。
Datadog Agentと自動検出: オープンソースのDatadog AgentをAKSワーカーノードにデプロイすることは、AKSコンテナ、Pod、ノードから分散トレースやログといった詳細な運用データを収集するための主要なメカニズムです。Agentに搭載された自動検出機能は、Apache、Redisといったデータ処理やキャッシュに関わるサービスを自動的に検出し、監視チェックをデータに基づいて設定できるため、運用データ収集の設定負荷を軽減し、新しいサービスがデプロイされた際にも迅速にデータ収集を開始できます。
運用データの可視化と分析ツール
Datadogは、収集した運用データを効果的に分析・可視化するための様々なツールを提供します。

即時使用可能なダッシュボード: Kubernetes、Azure App Service、およびその他のAzureサービス向けのすぐに使えるDatadogダッシュボードは、環境に関する主要な運用データの概要を即座に表示し、データに基づいた迅速な問題検出と解決を支援するツールです。Datadogは、Azure MonitorやKubernetesのラベルなどのソースからメタデータをタグとして自動的にインポートします。この機能は、収集された運用データをデータ分析の観点から効率的にフィルタリングし、特定のサブセット(特定のアプリケーション、特定のノードプールなど)に関する情報をデータに基づいて精選して表示することを可能にする重要なデータ組織化手法です。これらのダッシュボードを複製・カスタマイズし、補完サービスからの運用データを含めることで、特定のデータ活用シナリオやビジネスニーズに合わせたデータ分析環境を構築できます。
サーバーレスビュー: 特定のコンテナ化されたApp Serviceアプリの運用データ(エラー、リクエストスループット、レイテンシなど)をリアルタイムで調査するための専用ツールであり、データ分析を通じてアプリケーションのデータ処理パフォーマンスや健全性を詳細に把握することを支援します。
分散トレースと APM: アプリケーションパフォーマンスに関する運用データ(応答時間、エラー率など)を測定し、マイクロサービスやPaaSサービスをまたがるリクエストのパスをエンドツーエンドで可視化する機能は、データ処理フローにおけるボトルネックをデータに基づいて特定し、パフォーマンス最適化に貢献することを強調します。Azureプラットフォームのログ収集と組み合わせることで、データ処理エラーの根本原因分析も効率化されます。
Azureコンテナ環境から発生する多様な運用データを包括的に収集・分析し、そこから得られるインサイトを活用することは、コンテナ化アプリケーションのパフォーマンス最適化、可用性向上、そしてコスト管理といった、データ駆動型運用改善に直接的に繋がります。Datadogのような統合モニタリングプラットフォームは、この運用データ活用のプロセスを効率化し、データに基づいた意思決定を支援します。

従来のITインフラがデータ活用にもたらす課題とクラウド移行への期待

データ駆動型ビジネスへの変革が進む中で、従来のオンプレミスITインフラがデータ収集、処理、分析、そして活用といったデータライフサイクル全体にもたらす課題が顕在化しています。かつての企業システムは、オンプレミスのサーバー上に構成された仮想化基盤が一般的でした。アプライアンス型HCIを利用している組織もありましたが、基本的な運用モデルは類似しており、いずれもハードウェアのトラブルや故障への対応といった運用が煩雑になりがちで、データ活用のための基盤運用負荷増大がIT管理者の主要な課題でした。

サーバーやHCIを設置するデータセンターの維持も、データ活用基盤を運用する上で大きな課題となります。スペースを借りるだけでも高コストになりがちで、機器の設置やメンテナンスといった現地での作業が必要な場合は、データ分析基盤の拡張や新たなデータ活用ツール導入のためのIT投資を圧迫する要因となっていました。また、オンプレミスにデータが存在することによるデータ所在地の固定化と、パブリッククラウド上のデータ、あるいはクラウドサービスとの連携において、遠隔地にあることによる遅延や帯域の問題は、リアルタイムデータ処理や大容量データ転送といったデータ活用シナリオにおけるボトルネックとなり、ビジネススピードの鈍化を招いていました。

クラウド化ニーズの高まりとデータ活用高度化への期待
クラウドサービスが主流になりつつある昨今、こうしたオンプレミスシステム、特にデータ活用基盤をクラウド化したいというニーズが高まっています。パブリッククラウドの利用が広がり、既存のシステムとの連携も増えてくるにつれて、オンプレミスにデータを置いたままでは遅延や帯域の問題がデータ活用における大きな課題として立ちはだかります。オンプレミス上のワークロード、特にデータ処理に関わるワークロードをできるだけパブリッククラウドの近くへ寄せて、快適にデータを利用する方法はないだろうか、という問いへの答えが求められています。

オンプレミスシステムのクラウド化は、多くの企業がデータ収集、処理、分析の柔軟性や拡張性を高めつつ、運用負荷を下げたいというデータ活用高度化への期待を込めて積極的に検討を進めている改革の一つです。既にSaaSを利用していたり、IaaSの検証環境を試したりしている組織は、データ収集・処理の効率化や、データ分析環境構築の容易さといったデータ活用のメリットを特に感じており、いち早く移行したいと考えているはずです。高コストなデータセンターを撤廃し、既存のデータ資産を拡大しつつあるパブリッククラウド環境へ近接させることで、データの柔軟性や可用性を高め、低コストでパフォーマンスの良い統合的なデータ活用環境として活用したいという期待が大きくなっています。

「リフト&シフト」:既存データ基盤のクラウド移行アプローチ
データ活用基盤のクラウド化の第一歩として「リフト&シフト」、特に「リフト」というアプローチを考えることがあります。これは、既存のオンプレミス仮想化環境上に構築されたデータ基盤(VMware vSphere上のデータベース、データウェアハウス、分析サーバー、データ処理アプリケーションなど)を、できるだけシンプルに、小さな負荷で、スピーディーにクラウドへ移動させる方法です。本稿では、この「リフト」に焦点を当て、その方法を考えます。

仮想化基盤クラウド移行におけるデータ移行・再構築の課題
オンプレミスシステムのクラウド化は、データ活用高度化への期待が大きい一方で、一筋縄ではいかない側面も持ち合わせています。特に仮想化基盤のクラウド移行においては、多くの企業が課題に直面しています。オンプレミスのデータ管理・運用モデルとパブリッククラウドのモデルは根本的に異なるため、データ移行に伴うデータ構造の変更、データ形式の変換、そしてデータ抽出・変換・ロード(ETL)パイプラインの再構築といったデータエンジニアリング作業が必要になる場合が多くあります。

VMware vSphere基盤は、オンプレミスシステムとして多くの企業で利用されており、サーバー仮想化技術・製品として広く普及しています。VMware vCenterなどの運用ツールが整っており、仮想化環境の管理という点ではデータコンサルタントの視点から見ても利便性の高いシステムであると言えます。しかし、オンプレミス特有のハードウェアやファシリティの問題はデータ基盤の運用負荷として解決が難しい課題でした。

vSphere基盤をクラウド化する方法は幾つか考えられます。もちろん、一足飛びにアプリケーションの機能をパブリッククラウドのマネージドデータサービス(例:クラウドデータウェアハウスサービス、データレイクサービス、マネージド分析サービス)に置き換えるという方法も可能です。しかし、そのためにはデータ処理ロジックの再設計、データモデルの変更、そして既存データ資産の新たなサービスへの移行といった大掛かりなデータエンジニアリング・開発が必要か、あるいは既存のデータワークロードによっては置き換えることができないというケースの方が現実的には多いでしょう。そうした取り組みにチャレンジする組織もありますが、まずは小さな負荷でスピーディーに既存のデータ基盤を「リフト」する方法を考えたいというニーズがあります。

次に考えられるのは、既存の業務アプリケーションをIaaS上に載せる方法です。これはごくシンプルな考え方で、よく実践される方式といえます。しかし、オンプレミスのvSphere基盤とパブリッククラウドのIaaSは似て非なる構造であり、基盤上で稼働するOSが同じであっても、ストレージ連携、ネットワーク構成、仮想化の仕組みといった構造はまるで異なります。そのため、アプリケーションが扱うデータの入出力処理、データ連携方法、データストレージへのアクセスといったデータ関連の側面で、アプリケーションを改修したり、場合によってはデータ処理部分を完全に作り直したりしなければならない場合があります。改修したアプリケーションがデータを正確に処理・活用できるかどうか、データに基づいた入念な検証も欠かせません。

VMware Cloud on AWSへの注目:データ移行負荷の軽減
では、どうすれば簡単に、小さな負荷で、スピーディーに既存のvSphere基盤をクラウド化できるというのだろうか。そこで注目したいのが、Amazon Web Services (AWS) を活用する「VMware Cloud on AWS」です。このソリューションは、既存のvSphere基盤を、データ構造や運用ツールに大きな変更を加えることなくAWS環境へ移行できる可能性を提供します。これは、データ移行に伴うデータ形式変換やETLパイプラインの再構築といったデータエンジニアリング負荷を大幅に軽減し、オンプレミスで運用されている既存のデータ基盤(vSphere上のデータベース、分析サーバーなど)を、データ活用のためのリソースとして早期にクラウド上で利用可能にできるという点で、データコンサルタントの視点から見ても大きなメリットとなります。

データからの変革的価値抽出とデジタル企業が取り組むべきデータ戦略:AWSによる支援

データ量の爆発的な増加とAI、機械学習(ML)、生成AIといった先端技術の進化は、データからの変革的な価値抽出をデジタル企業にとって不可欠なものとしています。データコンサルタントとして、私たちはデータからの価値抽出こそが、モダナイゼーション、イノベーション、そして卓越したカスタマーエクスペリエンス提供の核心にあると強く認識しています。データ駆動型ビジネスを成功させるために、デジタル企業は以下のデータ戦略的な取り組みを推進する必要があります。

プロダクト主導の発想でビジネス成果を明確に定義する: データ分析やAI活用によってどのようなビジネス成果(例:顧客解約率低下、売上増加、運用コスト削減)を達成したいかをデータに基づいて明確に定義し、データ戦略をビジネス目標に紐づけることが重要です。
データサイロによる複雑さを軽減し、すべてのデータを連携させて活用する: 組織内外に散在するデータサイロは、統合的なデータ分析や全社的なデータ活用を阻害します。これらのデータサイロを解消し、データレイクやデータウェアハウス、データファブリックといったアーキテクチャを通じてすべてのデータを連携・統合し、データに基づいたインサイト抽出を可能にすることが不可欠です。
包括的で統合され、ガバナンスが効いたエンドツーエンドのデータ戦略を策定する: データの収集、保管、処理、分析、活用、そして廃棄に至るデータライフサイクル全体をカバーし、データ品質、データセキュリティ、データプライバシー、データコンプライアンスに関するルール(データガバナンス)が確立されたデータ戦略を策定することが、データ資産を信頼性高く管理し、安全に活用するための基盤となります。
機械学習、AI、生成AIを活用しやすくする: データサイエンティストだけでなく、データアナリストやビジネスユーザーを含む幅広い層が、データに基づいた予測分析や高度なデータ処理を容易に行える環境を整備することが、データからのインサイト抽出とイノベーションを加速させます。
AWSは、これらのデータ戦略的な取り組みを支援し、データとAIを活用したイノベーションを促進するために必要な専門知識と定評あるテクノロジーを提供します。AWSは、企業の現状分析から、将来にわたって活用できるエンドツーエンドのデータ戦略(データレイク、データウェアハウス、データマート、データパイプライン、データガバナンスフレームワークなどを含む)の立案までをデータコンサルタントの視点から支援します。AWSのデータサービス群には機械学習、AI、生成AIの機能が組み込まれており、これによりデータ管理(データクリーニング、変換、特徴量エンジニアリングといったデータエンジニアリング作業)にまつわる多くの負荷を軽減できます。その結果、データがさらに使いやすく、直感的に扱いやすく、そしてデータ分析や活用に必要なユーザーにとってアクセスしやすくなります。例えば、生成AI搭載アシスタントであるAmazon Qを使用すると、自然言語でデータベースに対するクエリ実行(データ分析)、データ統合パイプラインの作成(データエンジニアリング)、Amazon QuickSightダッシュボードの作成(データ可視化)を容易に行うことができます。これは、技術的なバックグラウンドを持たないビジネスユーザーによるデータ活用を促進し、データからの価値創出スピードを加速させます。AWSを導入することで、データ管理にかける時間(データ準備、基盤運用、ガバナンス適用など)を減らし、データからの価値創出(データ分析、インサイト発見、AIモデル開発・展開)にかける時間を増やすこと、すなわちデータチームのリソースを最適化し、ビジネスインパクト創出に集中できる環境を整備できます。

さらに、企業が特定のデータソリューションの「調達」をご希望の場合は、AWS Marketplaceの様々なベンダーの中から、自社のデータ戦略や特定のデータ分析ニーズに合った統合型データソリューションを、データコンサルタントの支援を受けて選定し、迅速に実装することも可能です。

AWS導入デジタル企業におけるデータ活用能力の強化
AWSを導入したデジタル企業は、提供されるデータ分析ツール、機械学習サービス、データ管理サービス、そしてデータ活用に関するトレーニングやベストプラクティスを通じて、「データをより有効に活用する方法を理解」し、データからのインサイト抽出やデータに基づいた意思決定能力を高めることができます。AWSは、データパイプラインの高速化、リアルタイム分析、そしてデータ分析結果に基づいたビジネスプロセスの自動化や新サービス開発といった、リアルタイムのデータドリブンなインサイトから有意義なイノベーションを実現できるよう支援します。AWSが提供する世界有数のプロフェッショナルサービスおよびパートナーネットワークは、データ戦略立案、データ基盤構築、データ移行、そして高度なデータ分析や機械学習の実装といった、データ活用における各段階で専門知識と技術サポートを提供します。

新しい日本語ガイド「リーダーにとって重要な8つのデータドリブンソリューション領域」は、AWSのデータサービスを活用したデータ戦略における具体的な実行領域(データ分析、機械学習、データベース、ストレージ、データ統合、データガバナンスなど)を紹介しています。このガイドでは、企業がAWSのデータサービスをどのように利用しているかの事例と、データに基づいたカスタマーエクスペリエンスの向上(顧客データ分析に基づくパーソナライズ)、イノベーションと意思決定の加速(データ分析・MLによる迅速なインサイト獲得)、将来を見据えたアプリケーションの設計(データ駆動型アーキテクチャ設計)などに組織のデータを役立てた具体的な成功事例を紹介しており、データ戦略実践のための実践的なヒントを提供しています。

既存vSphere基盤クラウド化方法とデータ移行・再構築の手間
既存のVMware vSphere基盤をクラウド化する方法としては、アプリケーション機能をクラウドのマネージドデータサービスに置き換えたり、既存の業務アプリケーションをIaaS上に載せたりなど、幾つかのアプローチが考えられます。データコンサルタントとして見ると、これらの方法はそれぞれデータ移行、データ構造変更、アプリケーションのデータ処理ロジック改修といったデータエンジニアリングに手間がかかるのが実情です。アプリケーション機能をマネージドデータサービスに置き換える場合は、データ処理ロジックの再設計やデータモデルの変更といった大掛かりなデータエンジニアリングが必要になるケースが多く、既存の業務アプリケーションをIaaS上にリフトする場合も、オンプレミスのvSphere基盤とパブリッククラウドのIaaSでは、データ入出力、データ連携方法、データストレージアクセスといったデータ関連の構造が異なるため、アプリケーションのデータ処理部分を改修したり、場合によっては完全に作り直したりする必要が生じます。多くのケースで、アプリの改修やサービスの停止が不要ではないという現実が存在します。データコンサルタントとしては、これらのデータエンジニアリング負荷を十分に評価し、最適な移行戦略を選択することが重要です。

データからの変革的な価値抽出を実現するためには、データ戦略を基盤としたクラウド導入と、AWSのようなパートナーによるデータとAIを活用したイノベーションの促進が不可欠です。

既存データ資産のクラウド移行戦略におけるVMware Cloud on AWSの評価
既存の仮想化基盤上に存在するデータ資産をクラウド環境へ円滑に移行・活用することは、データコンサルタントおよびデータアナリストにとって重要な検討課題です。VMware Cloud on AWSは、ヴイエムウェアとアマゾン ウェブサービスが共同開発したサービスであり、この課題に対し有効なアプローチを提供します。

本サービスは、AWS上にvSphere基盤を構築し、ヴイエムウェアがマネージドサービスとして提供します。これにより、ハードウェア保守、VMware製品のライセンス管理やアップグレードといった基盤運用業務から解放されます。データコンサルタント/アナリストの視点からは、これによりインフラストラクチャの維持管理に割かれていたリソースを、データ戦略の立案、データ分析環境の最適化、あるいは新たなデータソースの統合といった、より付加価値の高い業務へシフトさせることが可能となります。基盤上のOS、アプリケーション、そしてそれらが扱うデータや仮想ネットワークは、利用者の責任範囲として自由に管理・利用できます。

VMware Cloud on AWSの重要な特徴は、オンプレミスのvSphere基盤とアーキテクチャ的に完全に互換性がある点です。これは、OSやアプリケーションレイヤーから見ると、オンプレミス環境と同一であると認識されることを意味します。既存のvSphere基盤上で稼働しているシステム、特にデータの生成、処理、蓄積に関わるワークロードやデータパイプラインは、大きな変更を加えることなくそのまま移行し、稼働させることが期待できます。

データ移行における潜在的な障壁の一つに、IPアドレスの変更に伴う影響があります。データ連携、アプリケーション間の通信、あるいは分散データ処理フレームワークにおいては、IPアドレスの変更が広範な設定修正を要求し、移行プロジェクトの複雑性やリスクを増大させるケースが少なくありません。

しかし、VMware Cloud on AWSでは、ユーザーのオンプレミスネットワークとAWS環境を透過的に接続するL2延伸技術を利用できます。これにより、既存システムの仮想マシンが利用するIPアドレスを変更することなくAWSへ移行することが可能となります。データアクセス経路や既存のネットワーク構成に依存するアプリケーションにとって、IPアドレス変更の回避は、データ移行に伴う改修範囲を劇的に削減し、プロジェクトの実現可能性を高める上で極めて有効です。

このシームレスな移行を実現する主要ツールが「VMware HCX」です。HCXはネットワーク延伸機能に加え、効率的なデータレプリケーションやvSphere vMotionによるオンライン移行機能を提供します。これにより、既存の仮想マシンとその上で稼働するアプリケーション、そしてそれらが利用するデータのクラウドへの移行プロセスを自動化・効率化できます。データコンサルタントの視点からは、HCXの活用により、移行期間中のサービス停止を最小限に抑え、データ整合性を維持しながら計画的な移行を実行できる点が評価できます。状況によっては、システムを停止させることなく移行を完了させることも理論上可能です。オンプレミス環境でのシステム更新に近い感覚でクラウド移行が進められる操作性は、移行プロジェクトにおける技術的ハードルを低減させます。

オンプレミスvSphere基盤との高い互換性、および高性能な移行ツールであるHCXの組み合わせは、既存仮想化基盤の「クラウドリフト」、すなわち現在の構成を維持したままクラウドへ移行する際の負荷を極めて小さくします。これは、データ資産を迅速にクラウド環境へ配置し、次のステップに進むための強力な足がかりとなります。

ただし、単なるクラウドリフトは、将来的なデータ戦略における最終目標ではありません。VMware Cloud on AWSによって既存データ資産をAWSエコシステム内に配置した後は、AWSが提供する豊富なデータサービス(Amazon S3、Amazon Redshift、Amazon SageMakerなど)との連携を通じて、データの集約、高度な分析、機械学習の活用、リアルタイム処理基盤の構築といった、次世代のデータ活用に向けた取り組みへと繋げていくことが、データコンサルタント/アナリストとしての重要な役割となります。VMware Cloud on AWSは、そのための堅牢かつ互換性の高い基盤を提供するものです。

データ戦略の要件を満たすITインフラストラクチャとしてのLinuxONE

データコンサルタントやデータアナリストにとって、データ戦略の実行を支えるITインフラストラクチャの選定は極めて重要です。特に、ミッションクリティカルなデータや機密性の高いデータを扱う環境においては、その基盤が提供するセキュリティ、可用性、そしてデータ処理能力がデータ戦略の成否を左右します。本レポートでは、どのようなデータ関連の課題を抱える組織において、LinuxONEがITインフラの選択肢となり得るのか、IDCの見解に基づき考察します。

LinuxONEの提供価値を評価する際、まず挙げられるのはハイブリッドクラウド環境下でのデータとアプリケーションに対する高度なセキュリティ要件への対応能力です。また、オープンソース技術(Linux、コンテナ等)を活用したデータ処理基盤の構築や、ワークロード集約によるデータ関連インフラのTCO(Total Cost of Ownership)最適化を目指す組織にとっても、LinuxONEは検討に値するプラットフォームとなります。

特に、運用および技術的な観点からデータ活用基盤の課題を深く考察する際、以下の10項目に該当する状況が見られる場合、LinuxONEが効果的な解決策を提供する可能性があります。データコンサルタント/アナリストとしては、LinuxONEの採用がハイブリッドクラウド環境におけるデータガバナンス強化やデータ関連コストの全体最適化にどの程度寄与するかを、TCOの観点から多角的に評価する必要があります。

データ可用性および処理継続性の向上:
ミッションクリティカルなデータ処理におけるSLA(Service Level Agreement)水準を引き上げたい。
計画的なメンテナンスによるデータ処理システム停止の時間や頻度を削減し、データに基づく迅速な意思決定を維持したい。
計画外停止によるデータ供給の中断が、ビジネスオペレーションや顧客満足度低下につながるリスクを回避したい。
データ処理能力とコスト効率の最適化:
運用しているデータ処理用サーバー台数が多く、それに伴う設置スペースや電力のコストが大きい。
プロビジョニングしたCPUリソースの平均使用率が低く、データ処理能力に対してリソースが無駄になっている。
データ量の増大や処理の複雑化に伴い、スケールアウトでは性能向上が見込めないデータ処理システムが存在する。
サーバー間で行われる大量のデータ転送速度を高速化し、データ処理全体のボトルネックを解消したい。
データセキュリティとコンプライアンスの強化:
外部からの侵入やマルウェア感染といったデータ侵害のリスクに対する運用負荷を軽減し、データ保護体制を強化したい。
機密性の高いデータの暗号化を必須としつつも、データ処理のパフォーマンス低下を避けたい。
データ関連ソフトウェアコストの適正化:
データ処理や分析に関連するソフトウェアライセンスコストが、データ活用の足枷となっている。
日本IBMの市場機会と課題

今日のテクノロジー変革は、データから新たな価値を引き出すイノベーションを加速させています。DXや事業戦略の遂行にはITインフラの積極的な活用や刷新が不可欠ですが、国内企業においては、複雑化・ブラックボックス化したミッションクリティカルシステム(多くの場合、重要なデータが格納されている)の刷新や、データ活用の前提となる業務自体の見直しが遅れている現状があり、これがデータドリブンな経営への移行を阻害し、大きな機会損失につながる可能性をデータコンサルタントは認識しています。世界的にイノベーションが増大する中で、国内企業が成長し、競争力を維持するためには、従来のITインフラを、経済性、迅速性、柔軟性に優れ、データ活用のニーズに即応できるものに変革していく必要があります。

日本IBMのLinuxONEは、一般的なx86サーバーとは異なり、ハードウェアレベルでデータに対する高度なセキュリティと高可用性を実現しています。現状、ハイブリッドクラウド環境を構成するITインフラにおいてx86サーバーが主流である中、高セキュリティ・高可用なデータ処理基盤としてのLinuxONEは、データコンサルタントやDX推進を担うシステムインテグレーターにとって、x86サーバーベースとは一線を画す、付加価値の高いデータ基盤ソリューションとして提案できる大きな市場機会が存在します。

一方、日本IBMの課題は、LinuxONEが単なる高性能サーバーではなく、ITインフラの運用管理をデータ視点で一元化し複雑性を軽減すること、新たに開発するデータ活用アプリケーションの設計・運用を簡素化することで、データライフサイクル全体に関わるTCOを削減し、OPEXを最適化するためのソリューションであるという認知度をさらに高めることです。IBMは無償のTCOアセスメントを提供しており、データコンサルタントやIT意思決定者に対し、このアセスメントの認知度と活用を促進し、ITインフラ選定の俎上にLinuxONEを確実に載せることが課題となります。つまり、データ取得コスト(TCA: Total Cost of Acquisition)だけでなく、データ停止によるビジネス機会損失コスト、セキュリティインシデントによる損害コスト、将来的なデータ活用拡大を阻害する潜在的コストといった、データに関連する隠れたコストを含めたTCOの観点から、LinuxONEが提供する真の価値を分かりやすく訴求することが求められます。

分散データ時代のインフラ戦略:Edge-to-Cloudとミッションクリティカルデータ基盤としてのLinuxONE

データがエッジデバイス、オンプレミスのデータセンター、そしてパブリッククラウドに分散する現代において、データコンサルタントやデータアナリストは、従来の「クラウドかオンプレミスか」といった二者択一のデータ管理手法では対応しきれない複雑な課題に直面しています。個々の環境の利点を享受しつつ、データ全体を効率的かつセキュアに管理・活用するためには、新たなインフラ戦略が必要です。

Edge-to-Cloudプラットフォームは、この課題に対する一つの回答となり得ます。これは、パブリッククラウド、エッジコンピューティング、コロケーション施設、そしてコアデータセンターを連携させ、データが存在する場所によらず一貫したクラウドエクスペリエンスを提供する概念です。このアプローチにより、オンプレミス環境が提供するセキュリティとコスト管理の優位性と、クラウドが提供するセルフサービス、従量課金、マネージドサービスによる運用負荷軽減といった利点を組み合わせた、分散型のデータインフラストラクチャを実現できます。データコンサルタントとしては、データの発生源や処理要件に応じて、一部のアプリケーションやデータをパブリッククラウドに配置し、レイテンシが重要なデータや機密性の高いデータをエッジやプライベート環境に保持するといった柔軟なデータ配置戦略が可能になる点を評価します。これにより、データの所在に依存しない、より効率的でセキュアなデータ処理パイプラインの構築が期待できます。

ゼロダウンタイムプライベートクラウド基盤

Edge-to-Cloud戦略における「コアデータセンター」や「セキュアなプライベートクラウド」を担うプラットフォームとして、特にミッションクリティカルなデータや機密性の高いデータを扱う場合に注目すべきなのがLinuxONEです。LinuxONEは、高い連続稼働性と優れた集約性を誇るプライベートクラウド基盤を提供します。最新モデルであるLinuxONE III(2019年9月現在、最大190コア、最大40TBメモリー搭載可能)は、単体でx86サーバー1,000個以上の処理能力を統合できるケースもあり、データ処理インフラのシンプル化と効率化に大きく貢献します。

単一筐体へのワークロード統合は、データコンサルタントの視点から見ても大きなメリットがあります。異なるデータワークロードの処理ピークが異なるため、統合することでCPUリソースをより有効に活用でき、データ処理のスループットを向上させることが可能です。さらに、I/O専用プロセッサーによる高速バススイッチングやサーバー通信に使用する高速内部ネットワークは、大量データ処理におけるボトルネックを解消し、データスループットを飛躍的に向上させます。LinuxONEは、その設計思想として「信頼性と高可用性」および「高度なセキュリティ」をハードウェアレベルで実現しており、オンプレミス、オフプレミスを問わず、ハイブリッドクラウド向けITインフラに求められるデータ関連の要件を考慮した場合、以下の価値を提供するといえます。

無停止運用を可能にする信頼性/高可用性: LinuxONEは、CPU、メモリー、電源など、すべての主要コンポーネントが徹底的に冗長化されたフォールトトレラント設計を採用しています。これにより、ハードウェア障害発生時も自動的に予備系へ切り替わり、データ処理の中断を防ぎます。また、部品交換やファームウェア適用といったメンテナンス作業もシステムを停止させることなく実施可能です。データアナリストにとっては、これにより24時間365日安定したデータ供給やリアルタイム分析環境が保証され、データに基づく継続的なビジネスオペレーションが可能となる点は極めて重要です。
高度なセキュリティ: LinuxONEは、ハードウェアレベルでデータに対する強固なセキュリティ機能を提供します。これにより、ITスタッフの運用管理におけるセキュリティに関する負荷を軽減しつつ、サーバー乗っ取り、人為的な設定ミスによるセキュリティ事故、機密データの漏洩、メモリーダンプからの情報漏洩、そしてマルウェア侵入といった多様なデータセキュリティリスクに対処します。データコンサルタントとしては、特にGDPRやCCPAといったデータプライバシー規制への対応が求められるデータや、企業の知的財産に関わる機密データを扱う場合に、LinuxONEが提供するハードウェアベースのセキュリティが、データ保護体制の強化とコンプライアンス維持に不可欠な基盤となる点を高く評価します。これにより、データ活用の幅を広げつつ、潜在的なセキュリティインシデントによるデータ資産への損害リスクを最小限に抑えることが可能となります。
Edge-to-Cloudプラットフォームという概念は、現代の分散データ環境におけるデータ管理と活用の複雑性に対処するための重要な戦略を示しています。その中でも、LinuxONEは、特に可用性、セキュリティ、そして大規模データ処理能力が要求されるミッションクリティカルなデータ領域において、強固で信頼性の高い基盤を提供する選択肢と言えます。データコンサルタントおよびデータアナリストは、自組織のデータ戦略と照らし合わせ、LinuxONEが提供するハードウェアレベルの優位性が、データ資産の保護、安定的なデータ供給、そして効率的なデータ処理の実現にどのように貢献するかを慎重に評価すべきです。