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BCP・DR(5)

サイバーリスクとデータレジリエンス: データコンサルタントの視点からの分析

サイバー脅威の進化と事業インパクト
現代のサイバー侵害は単なるIT問題ではなく、財務報告の遅延やサプライチェーンの機能停止など、ビジネスの核心部分に甚大な影響を及ぼします。データ分析の視点から見ると、攻撃ベクトルの多様化は以下の要因に起因しています:

デジタルトランスフォーメーションの加速: 新たなデータ接点の創出
クラウド環境への移行: データ境界の曖昧化
サードパーティ連携の拡大: データ共有経路の複雑化

データ駆動型のサイバーレジリエンス戦略
経営層のリスク認識は向上しているものの、データに基づく現実的な脅威評価が不足している傾向があります。効果的なサイバーレジリエンスには、以下のデータ活用アプローチが不可欠です:

脅威インテリジェンスの高度活用

リアルタイムデータ分析によるアノマリー検知
セクター別脅威情報の統合分析
攻撃パターンの予測モデル構築

データ復元力の最適化

RTO(Recovery Time Objective)の定量的設定と測定
RPO(Recovery Point Objective)達成のためのデータバックアップ戦略
RLO(Recovery Level Objective)に基づく優先データの特定

経営層と現場のデータギャップ解消
インシデント対応の失敗原因として、経営層と現場間のデータ認識ギャップが顕著です。このギャップを解消するためには:

サイバー危機管理訓練の体系化

シナリオベースの定量的リスク評価
訓練結果データの分析による脆弱性の可視化
データに基づく資源配分の最適化

クロスファンクショナルデータ共有

各領域SIRTとのリアルタイムデータ連携体制の構築
統合データダッシュボードによる状況認識の統一
インシデント対応メトリクスの共通定義

進化するサイバーBCPのデータ要件
従来のIT-BCPはシステム可用性の回復に焦点を当てていましたが、現代のサイバーBCPはより広範なデータ管理戦略を必要とします:

証拠保全とデータフォレンジック

デジタルフォレンジックのためのデータ収集プロセス
インシデント証拠の法的要件を満たす保存方法
データチェーン・オブ・カストディの確立

ステークホルダーコミュニケーション

データ漏洩範囲の正確な特定と分類
開示すべきデータと機密保持すべきデータの線引き
法的要件に基づく開示データの準備

組織横断的データガバナンス

データオーナーシップの明確化
データ分類・保護基準の統一
復旧優先度に基づくデータ資産の階層化

データに基づく継続的改善サイクル
サイバーリスクの変動性に対応するため、BCPは静的文書ではなく、データ駆動型の継続的改善プロセスとして位置づける必要があります:

インシデント対応データの定量分析
外部脅威情報との相関分析によるリスク再評価
訓練結果に基づくKPIの更新と目標再設定

金融庁や厚生労働省などの規制当局による要求の高まりを受け、サイバーBCPの重要性は業界全体で認識されつつあります。データコンサルタントとして、クライアント組織のデータ資産を保護しつつ、ビジネス継続性を確保するための体系的アプローチを提供することが、今後ますます重要になるでしょう。

大規模災害とサイバー攻撃の頻発が示す、BCP対策の再構築の必要性

2024年1月に発生した最大震度7の能登半島地震や、同年8月の宮崎県を震源とする地震、さらに南海トラフ地震への注意喚起など、日本企業はかつてない自然災害リスクに直面しています。加えて、これらの混乱に乗じるかのように、標的型メールやランサムウェアといったサイバー攻撃の件数も増加傾向にあります。

こうした「複合リスク」の下、企業は単一リスクごとのBCP(事業継続計画)では対応が難しくなってきており、自然災害・サイバー攻撃の両面に対応可能な統合的なBCP設計が求められています。

システム復旧だけでは不十分、見落とされがちな「情シスBCP」
多くの企業では、ITシステム障害やサーバーダウンに備えた「IT-BCP」が整備されてきました。しかしながら、実際の事業継続においては**「情シス部門」そのものの業務継続性**も極めて重要です。
たとえば、インフラ復旧後に設定変更・ユーザー権限管理・アカウント発行等を担う情シス業務が止まったままでは、復旧したIT基盤を活かすことができません。

これはつまり、「システムは稼働しているが業務は再開できない」状態を生み出し、結果として企業全体の損失リスクを高めることにつながります。BCP策定時には、「IT-BCP」と「情シスBCP」を切り分けて考える視点が不可欠です。

緊急時の情シス継続に求められるリモート対応の条件とは
では、緊急時においても情シス業務を止めないためには、どのような体制・ツールが必要なのでしょうか。

本セミナーでは、以下の観点から「情シスBCP」の要諦を解説します:

リモートアクセス環境の構築条件

ゼロトラスト環境下におけるセキュアな情シスオペレーション

多拠点や在宅体制下でも可能な情報資産管理・障害対応フロー

情シス部門における業務可視化と業務継続シナリオの策定方法

従来のシステム復旧中心のBCP対策に加え、**「情シス業務の継続性をどう確保するか」**という視点が、今後の事業継続戦略の鍵となります。