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データドリブン・データ活用・RPA(13)

プランニングのデータ活用と高度なモデリング機能

データに基づいた営業プランニング: 営業データとキャパシティ関連データを分析し、営業リソースを最適化することで、パフォーマンス向上と受注予測精度改善を実現します。過去および現在の受注データ、担当者の活動データ、パイプラインデータに基づいたキャパシティモデリングを行うことで、受注目標達成に向けた戦略立案を支援します。適切なノルマ設定や、収益ポテンシャルおよび顧客データに基づいたバランスの取れたテリトリー設定も、データ分析を通じて行えます。What-Ifシナリオ分析に対応することで、市場や戦略の変更が営業成績に与える影響をデータでシミュレーションし、データに基づいたコラボレーションを促進します。営業プランと財務プランをデータ連携させることで、組織全体で参照する信頼できる唯一のデータソースを確立します。

オペレーショナルデータモデリング: 固有の業務プロセス、業界特性、地理的条件に合わせたデータモデルとプランニングドメインを柔軟に構築できます。オペレーションキャパシティプランニング、市場の需要創出モデリング、プロジェクトベースのプランニングなど、様々な運用シナリオをデータモデル上で再現可能です。運用の詳細に関する豊富なデータにリアルタイムでアクセスできるため、データに基づいた全社的なプランニングを制限なく行うことができます。これにより、オペレーションの非効率性をデータで特定し、改善策の効果をシミュレーションすることが可能になります。

高精度なデータモデリング(Elastic Hypercube モデリング エンジン): ビジネスニーズに最適なデータ構造でモデル化を実現するElastic Hypercube モデリング エンジンは、大規模なデータ集約型モデルを効率的に管理します。必要なデータを適切なタイミングで取得し、実質無制限のディメンションやバージョンを用いて精緻なプランを策定することを可能にします。収益、キャッシュフロー、運用コストなど、あらゆる業務領域におけるエンドツーエンドのプランニングをデータ連携の観点から実現する包括的な機能を提供します。各部門がそれぞれの事業特性に合わせた独自のデータモデルを利用できるため、事業に即した詳細なプランを策定できると同時に、これらのデータを全社の財務プランに統合し、全社的なデータ整合性を保つことができます。

データによるWhat-If シナリオ モデリング: ビジネスのアジリティを実現する上で重要なのは、様々なデータに基づいた成果予測や軌道修正策の計画を迅速に策定できる能力です。強力なシナリオプランニング機能を活用することで、ある変更が事業の他の領域にどのような影響を及ぼすかを、データモデル上で詳細にシミュレーションできます。例えば、「採用日を3週間延期した場合、ワークフォース関連コストや生産性データ、そしてそれに起因する営業収益データにどのような影響があるか?」といった問いをデータで検証できます。このような変更がテリトリープランニングにどのようなデータ上の調整を必要とするか、あるいは四半期末の財務状態データにどのような影響を与えるかなど、具体的なデータ変動を予測します。各部門がそれぞれの事業領域におけるデータシナリオを検証することで、組織全体としてデータに基づいた各シナリオを統合し、全社戦略をデータに基づいて最適化できるようになります。

不確実性の時代を勝ち抜くデータ戦略:データのサイロ化克服から全社的な活用文化の醸成へ

序論:なぜ今、データ戦略が経営の最重要課題なのか
グローバル競争の激化、原材料や物流コストの高騰、そしてAIをはじめとする破壊的技術の進展。現代の企業経営は、かつてないほど不確実性の高い環境に置かれています。この状況下で競争優位性を確立・維持するためには、経営層から現場の第一線に至るまで、組織の誰もが信頼できる同一のデータに基づき、迅速かつ正確な意思決定を下せる仕組み、すなわち高度なデータ活用能力が不可欠です。

特に製造業においては、工場で日々生成・蓄積される稼働状況、品質、エネルギー消費といった膨大な「現場データ」が、極めて重要な経営資産となります。これらのデータを適切に活用することは、生産プロセスの最適化や品質向上といった現場レベルの改善に留まらず、サプライチェーンの混乱や地政学リスクといった複雑な経営課題に対応するための基盤そのものとなります。

第1部:データ活用を阻む「三重の壁」とその構造的問題
しかし、多くの企業において、この貴重なデータ資産が有効活用されず、結果として意思決定の遅延やビジネス効率の低下を招いているのが実情です。データ活用が進まない背景には、根深い構造的問題が存在します。我々はこの問題を「三重の壁」として定義します。

データの壁(サイロ化):
工場の設備やシステム単位でデータが閉じており、全社横断での分析が不可能な状態。さらに、各担当者が個人保有するExcelファイルなど、非構造化データが社内に散在し、データの全体像把握を困難にしています。

人材・ツールの壁(スキルギャップ):
データをビジネス価値に転換できる専門人材が慢性的に不足しています。高機能なBIツールを導入したものの、現場のITスキルが追いつかず、一部の専門家しか使いこなせない「宝の持ち腐れ」状態に陥っているケースも散見されます。

連携・戦略の壁(実行障壁):
データ活用の重要性を認識しつつも、それを実行に移す段階で壁に直面します。具体的には、①中長期的なデータ活用計画を描けない**「戦略の課題」、②既存のレガシーシステムとどう連携させるかという「ITの課題」、③データ連携に伴い、既存の業務プロセスをいかに変革するかという「業務の課題」**の3つです。

第2部:壁を乗り越えるための戦略的アプローチ
これらの「三重の壁」を乗り越え、全社的なデータ活用を実現するには、段階的かつ戦略的なアプローチが求められます。

フェーズ1:データ基盤の確立 ― 全社データの統合とリアルタイム可視化
最初のステップは、組織内に散在・サイロ化したデータを統合し、一元的に管理・活用できるデータ基盤を構築することです。特に製造現場の膨大なリアルタイムデータを扱うには、リアルタイムデータの統合基盤である**「PI System」**の活用が有効です。これにより、工場やライン、設備ごとに分断されていた現場データを全社レベルで統合し、全体最適に向けた分析の土台を築きます。
UBEの情報システム部門を母体とする宇部情報システムは、製造現場の知見を活かし、設備のデータ接続から分析・活用までをワンストップで提供する専門性を有しています。

フェーズ2:データ活用の民主化 ― 全社的な分析文化の醸成
強固なデータ基盤の上で次に目指すのは、専門家でなくとも誰もがデータを活用できる「データ活用の民主化」です。特定の社員の高度なスキルに依存するのではなく、ビジネスの現場担当者自身が直感的に操作できる全社展開可能なBIツールを選定・導入することが重要です。
さらに、ツール導入と並行し、実践的なデータ活用人材の育成プログラムを実施することで、組織全体のデータリテラシーを底上げし、データに基づいた改善活動が自律的に生まれる文化を醸成します。

フェーズ3:データ連携の拡張 ― 企業間協調による新たな価値創出
社内のデータ活用が定着した先には、サプライヤーやパートナー企業とのデータ連携による、より大きな価値創出の可能性があります。企業間のデータ連携を推進するには、セキュリティや標準化といった新たな課題が生まれますが、**企業間協調プラットフォーム「CBP」**のようなソリューションは、企業間取引におけるデータ連携の障壁を取り払い、サプライチェーン全体の最適化といった、一企業だけでは成し得ない協調的な価値創造を実現します。

これらのアプローチを通じて、データに関する最新のITトレンドを捉えながら、戦略・IT・業務の各課題を統合的に解決していくことが、不確実な時代における持続的な成長の鍵となります。

データ活用の「最後の壁」を越える:IT部門の疲弊を防ぎ、事業部門主導のセルフサービス分析文化を醸成するアプローチ
1. データ活用推進における理想と現実のギャップ

データドリブンな意思決定が企業競争力を左右する現代において、IT部門は全社的なデータ活用を推進する中核として、その役割に大きな期待が寄せられています。

しかし、その期待とは裏腹に、多くの企業でデータ活用の現場は深刻な課題に直面しています。IT部門が主導して高性能なBIツールを導入したにもかかわらず、事業部門での活用が定着しない。結局、事業部門は使い慣れたExcelでの個別集計を続け、結果としてデータのサイロ化が再生産される。IT部門が善意で作成したダッシュボードは、「現場の感覚と合わない」「この切り口では見たいものが見えない」といったフィードバックと共に差し戻され、修正依頼が殺到する。

このような状況は、IT部門の努力が報われないだけでなく、組織全体のデータ活用能力の停滞を意味します。

2. 問題の根源:IT部門の「レポート作成工場」化という構造的欠陥
この問題の本質は、単なるツール選定の失敗や部門間のコミュニケーション不足ではありません。それは、IT部門と事業部門間における「データと業務の深い断絶」と、それに伴うIT部門の「レポート作成工場」化という構造的な欠陥にあります。

事業部門の詳細な業務知識やKPIの背景を持たないIT部門が、依頼された通りのレポートやダッシュボードを”作成”することに終始してしまう。これにより、IT部門はデータ基盤の整備・運用という本来注力すべき役割から逸脱し、皮肉にも**「データ活用のボトルネック」**として機能してしまいます。

一方で、事業部門は自らの業務に必要な分析の要件をIT部門に正確に定義できず、結果として「使えない」アウトプットに不満を抱く。この負のスパイラルが、IT部門の疲弊とデータ活用への幻滅を招いているのです。

3. 解決への道筋:「セルフサービスBI」へのパラダイムシフト
この根深い構造的課題を解決するには、役割分担を根本的に見直し、**事業部門自身がデータを分析・可視化する「セルフサービスBI」**へのパラダイムシフトが不可欠です。

IT部門の新たな役割 ― 信頼できるデータ基盤の「供給者」へ
IT部門の責務は、レポートを作成することではありません。全社で信頼できる唯一の真実(Single Source of Truth)となるデータウェアハウス(DWH)やデータマートを構築・提供し、データガバナンスを効かせることで、セキュリティとデータ品質を担保する**「守りのIT」**に徹することです。

事業部門の新たな役割 ― ビジネス価値を創出する「活用者」へ
事業部門は、IT部門から提供された信頼性の高いデータを基に、自らの業務知識を最大限に活用し、BIツールで自由に分析やダッシュボード作成を行います。データから得られたインサイトを日々の業務改善や新たな施策立案に繋げる**「攻めの活用」**の主役となるのです。

4. セルフサービスBI文化を醸成するための成功の鍵
このパラダイムシフトを成功に導き、事業部門での活発なデータ活用を実現しつつ、IT部門の負担を解消する方法は存在します。データ活用の壁を乗り越えた企業の事例から、成功の鍵となる具体的なアプローチを解説します。それは、単なるツール導入に留まらない、組織的な仕組みの構築にあります。