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ストレージ(4)

ITインフラの多様化とその運用の最適化

現代の企業ITインフラは、クラウド、オンプレミス、エッジのさまざまな環境に分散しています。ここでは、代表的なインフラ構成とその利活用方法について解説します。

1. オフプレミスおよびオンプレミスのインフラ選択肢

オフプレミスクラウドコンピューティングインフラ (IaaS/PaaS): クラウドベースのIaaSやPaaSの導入は、アプリケーションの迅速な展開とスケーラビリティを可能にし、ハードウェア管理の負担を軽減します。

Hardware as a Service (HaaS): 必要に応じて物理ハードウェアをリースし、リソースの拡張を柔軟に行えるHaaSは、コスト効率を求める企業にとって有効な選択肢です。

オンプレミスのHPCやスーパーコンピューティング: 科学技術計算やシミュレーションなど、高度な処理を必要とするワークロード向けに、オンプレミスHPCは安全性とパフォーマンスの観点から理想的です。

オンプレミスサーバハードウェア (ラック、ブレード、タワー): データプライバシーや高速アクセスが求められる業務に適し、物理的なセキュリティの確保が容易です。

量子コンピューティング: 研究開発や未来志向の計算環境として、量子コンピューティングは、データ解析能力を次世代レベルに引き上げる可能性を秘めています。

GPUやAIワークロード向けサーバ: 高速なグラフィックス処理やAIモデルの学習・推論処理に特化したGPUは、AI、機械学習、ディープラーニングの分野で不可欠なインフラです。

2. エッジおよびハイブリッド環境の利活用

ハイブリッドクラウドおよびマルチクラウド戦略: ハイブリッドクラウド環境は、クラウドとオンプレミスを組み合わせ、システムの柔軟性と運用コストの最適化を図ります。さらに、マルチクラウド戦略を活用することで、ベンダーロックインの回避やリスク分散も可能です。

エッジコンピューティングインフラ: IoTデバイスやデータ処理のリアルタイム性が求められる環境で活用され、遅延の低減と帯域幅の効率的な使用を実現します。

オンプレミスのハイパーコンバージドインフラ: サーバ、ストレージ、ネットワークを統合し、従来の物理的なインフラよりも高い柔軟性を提供します。これにより、管理の効率性を高めるとともに、IT環境の自動化が促進されます。

3. ストレージ容量と用途別の最適化

ストレージ容量:

10TB未満~10PB以上:企業の規模やデータの成長に応じて、ストレージ容量を段階的に拡張することが重要です。

主な用途別のストレージ活用:

サーバ用データ領域:安定した性能が求められる一般的なファイル保管。
仮想化基盤およびVDI(仮想デスクトップ):複数の仮想マシンが効率的に利用できる高可用性のストレージ。
データベースおよびファイルサーバ:大量データの管理と高速なアクセス性能が求められるデータ基盤。
データ分析およびディープラーニング基盤:計算負荷の高い分析や学習用の高パフォーマンスストレージ。
まとめ

企業のインフラ戦略は、ワークロードに応じた柔軟な構成を整えることで、その価値が最大化されます。IaaSやPaaS、HPC、エッジ、ハイブリッドクラウドなどの各ソリューションを適切に組み合わせ、データの活用を効率化し、セキュリティおよびコスト管理の最適化を図ることが求められます。

ストレージ利用の現状と課題整理

企業のストレージ環境は多岐にわたる用途に対応しており、それぞれの役割が事業継続の基盤を支えています。以下は主な用途です:

サーバ用データ領域
ファイルやアプリケーションデータを格納する中心的な用途。
仮想化基盤(VDI含む)
リソースの効率的な配分とユーザーの柔軟なアクセスを可能にする。
データベースおよび分析基盤
ビジネスインテリジェンスやデータドリブン経営の中核となる用途。
ディープラーニング基盤
高速なデータアクセスが求められる計算集約型の環境。

課題ポイント:
こうした多目的な利用に伴い、セキュリティやデータ保護に対する要求が一層高まっています。特にランサムウェアなどの高度なサイバー攻撃が増加する中、ストレージシステムに対する保護が重要です。

ランサムウェア攻撃に対するストレージの役割

ランサムウェアの進化

従来型の暗号化攻撃だけでなく、「二重恐喝」や「ノーウェアランサム」などの新たな手法が登場。
日本国内でも報道事例が増加し、対策の必要性が高まっている。

イミュータブル・ストレージが注目される理由

変更不可性(Immutability): データの改ざんや削除ができない仕組みにより、攻撃の影響を最小化。
事業継続性の強化: 攻撃後の復旧プロセスを確実にするための重要な要素。
適応性: 既存のストレージ環境やバックアップ戦略に容易に統合可能。
最新のバックアップ戦略と改善提案

従来の「3-2-1ルール」からの進化
従来のバックアップ戦略である「3-2-1ルール」(3つのバックアップ、2つの異なるメディア、1つはオフサイト保存)は、ランサムウェアの高度化により限界が見えています。

「3-2-1-1ルール」への移行:
最新の戦略では、上記の要素に加え、以下の要素を追加します:

1つはイミュータブル・ストレージで保護する
これにより、復旧可能なバックアップデータを確保。
1つはエアギャップ(ネットワーク分離)を採用する
ネットワークから完全に切り離された保存方法で、攻撃リスクをさらに軽減。
データコンサルタントの視点による具体的アクション
1. 適切なストレージの選定と統合
各ストレージ用途に応じた最適なソリューションを選定。
例:VDI基盤には高パフォーマンスを重視したストレージ、データ分析基盤には大容量かつ柔軟性のあるストレージ。
イミュータブル・ストレージを既存環境に統合し、データ保護を強化。
2. サイバーセキュリティ体制の見直し
リスクアセスメントの実施: ランサムウェア攻撃への脆弱性を洗い出し、優先課題を特定。
多層防御の構築: イミュータブル・ストレージと従来のバックアップソリューションを組み合わせ、復旧力を強化。
3. バックアップ戦略の再構築
従来の「3-2-1ルール」から「3-2-1-1ルール」への移行を検討。
クラウドバックアップやエアギャップ技術の活用でデータ保護を強化。
4. 定期的なトレーニングとシミュレーション
復旧プロセスの実地演習を行い、攻撃後の対応スピードと正確性を向上。
IT部門全体で最新のセキュリティ動向を共有し、即応力を高める。

まとめ:
ランサムウェアなどの高度な攻撃に対処するには、ストレージ用途ごとの適切なソリューションを選定するとともに、データ保護戦略の進化が不可欠です。特に「イミュータブル・ストレージ」を活用し、最新のバックアップ戦略「3-2-1-1ルール」を採用することで、企業のデータセキュリティを強化し、事業継続性を確保することができます。

イミュータブル・ストレージ導入の課題と留意点

イミュータブル・ストレージはランサムウェア対策として注目されていますが、その導入にはいくつかの課題も伴います:

データ蓄積による運用コストの増大

データが変更・削除できない性質上、長期間使用するほどストレージ容量が膨大化し、ストレージ拡張に伴うコストが増加します。

データ管理の複雑化

不変性を維持するためには、適切なポリシー設定と運用プロセスの構築が不可欠です。これにより、運用管理の負荷が増加する可能性があります。

システムとの連携性

既存のITインフラや他のバックアップシステムとの統合が課題となる場合があり、導入計画の段階で技術的検討が必要です。
製品選定における重要な観点:イミュータブル・ストレージの特徴比較

イミュータブル・ストレージを選定する際には、以下の点を考慮する必要があります:

データ保護のアプローチ

各ベンダーが提供する不変性の範囲や、ランサムウェア攻撃に対する具体的な保護機能を比較します。

セキュリティ要件

アクセス制御の厳格性や、管理者権限の保護機能を評価します。

システム統合性

他のバックアップソリューションやクラウド環境との連携性、将来的な拡張性を確認します。

コスト構造

初期導入費用と運用コストのバランス、ストレージのスケーラビリティを比較します。

ユースケースの適合性

自社規模や業務課題に最適な製品を選定するため、導入事例を参考にします。
中堅・中小企業向けの推奨ソリューション例:Synology NAS

ランサムウェア対策として、中堅・中小企業に適したコスト効率の高いソリューションとして「Synology NAS」をご提案します。

特徴と利点

コスト効率: 導入・運用コストが抑えられ、予算が限られた組織にも適合。
高いデータ復元力: バックアップデータを安全に保管し、迅速な復元を可能にします。
導入実績: 複数の企業が、感染被害後の復旧プロセスに成功したユースケースを持つ。

ユースケース

某中小企業では、ランサムウェア攻撃を受けた際、Synology NASのスナップショット機能を活用して迅速に業務データを復元。結果として、ダウンタイムを最小限に抑えました。
次のステップ:セミナーでの解説内容

ランサムウェア対策やバックアップ手法に関心をお持ちの方に向けたセミナーでは、以下の内容を解説します:

ランサムウェア攻撃の最新動向と課題
主要イミュータブル・ストレージ製品の機能比較
Synology NASを活用した実践的な対策事例
導入・運用時の注意点とベストプラクティス

このセミナーは、特にランサムウェア対策の強化を検討している企業のIT管理者やデータ保護責任者にとって、有益な情報を提供する場となります。

まとめ:
イミュータブル・ストレージはランサムウェア対策の要ですが、その導入には運用コストや管理の複雑化といった課題があります。各企業の規模や課題に合ったソリューションを選定することが、運用効率とセキュリティの両立を実現する鍵です。中小規模の組織にはSynology NASのようなコストパフォーマンスに優れた製品が適しており、その効果的な活用法を検討することをお勧めします。

クラウドストレージをおすすめする3つの理由

1. 自動化されたバックアップでデータ保護を強化
クラウドストレージでは、サービス提供者が高度なバックアップ体制を整えており、ユーザーが手動でバックアップを取る必要はありません。これにより、ヒューマンエラーやバックアップの漏れによるデータ喪失のリスクが大幅に低減されます。データ復元の迅速化や多層的なデータ保護によって、ビジネスの継続性を強化できる点が大きな利点です。

2. IT管理負担の軽減とコスト削減
オンプレミス型のサーバーや外部記憶装置の管理には、運用やメンテナンスに多大なリソースが必要です。クラウドストレージは、サービス提供者がインフラの管理を担当するため、ユーザー側のIT管理にかかる業務負担が大幅に軽減されます。また、運用コストの削減やダウンタイムの防止に貢献し、より効率的なIT運用が可能となります。これにより、ITチームは戦略的な業務に専念できるようになります。

3. 場所を選ばない業務の柔軟性と効率化
クラウドストレージは、インターネット環境さえあれば、どこからでもアクセス可能であり、リモートワークや出張先からもスムーズにデータにアクセスできます。これにより、業務の柔軟性が高まり、場所にとらわれない働き方が実現できます。さらに、リアルタイムの共同作業やデータの即時共有が可能となり、チーム間のコラボレーションやプロジェクトの進行が加速されます。

既存ストレージの有効活用

新たなストレージ投資は不要です。多くの企業が既存のストレージ環境を最大限に活用することができます。特にHPC(高性能コンピューティング)システムは、現在のストレージ環境で使用しているデータやアプリケーションを引き続きサポートします。

ただし、将来的にストレージの変更や拡張を計画している場合は、Software Defined Storage(SDS)環境の導入を検討することが重要です。SDS環境では、HPCの要求とその他のデータセンター要件を単一のシステムで効率的に管理でき、柔軟なスケーラビリティとコスト効率を実現します。

ミドルウェアの適切な選定

HPCのパフォーマンスに最も大きな影響を与えるのはミドルウェア層です。ワークロードスケジューラーやMessage Passing Interface(MPI)などのツールを通じて並列コンピューティングを最適化することが求められます。これらのツールは、かつては各ベンダーから提供されていましたが、現在ではオープンソースとしても利用可能です。

SUSEは、これらのツールをパッケージ化して提供しており、SUSE Linux Enterprise Server for High Performance Computingは、HPCソフトウェアパッケージ(並列ファイルシステムなど)を含み、複数のMPIをサポートしています。これにより、企業は高い柔軟性とパフォーマンスを維持しつつ、コストを抑えた運用が可能になります。

HPCクラスターの管理

HPCクラスターの運用には、効果的な並列クラスター管理ソリューションが不可欠です。代表的なオープンソースソリューションとしてはSLURMがあり、SUSE Linux Enterprise Server for High Performance ComputingにはSLURMが組み込まれています。また、一部のHPC環境ではコンテナー管理が重要な役割を果たします。Singularityなどの人気のコンテナー管理ソリューションもSUSEパッケージハブで提供されており、HPCクラスターの柔軟な運用をサポートします。

拡張計画の重要性

HPCインフラの拡張は、ビジネスの成長とともに必然的に求められます。特にAIシステムの活用が進むにつれて、データ量の増加が予想され、スピードとパフォーマンスの向上が不可欠です。これに伴い、HPCインフラストラクチャの拡張計画を早期に策定し、将来のニーズに対応できる柔軟なインフラを構築することが求められます。