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オブザーバビリティ(可観測性)(7)

複雑化するクラウド環境におけるセキュリティと監視の課題
現代のIT環境がクラウドやコンテナ技術によって複雑化する中、多くの組織のIT部門は従来の監視やトラブルシューティングの方法では十分な対応ができないことに気付き始めています。最新の調査では、現行の監視ツールに満足している意思決定者はわずか10%程度であり、この不満の背景には、既存の監視ツールがレガシーインフラやモノリシックなアプリケーション向けに設計されている点が挙げられます。

レガシーシステムの限界とクラウドネイティブ環境への対応
レガシーシステムでは、数分ごとにバッチ処理を行いデータを更新することで十分なケースが多くありました。しかし、クラウドネイティブな環境では、コンテナが短時間でスピンアップおよびスピンダウンされるため、従来のバッチ処理では対応が追いつかないのが現状です。さらに、クラウドネイティブ専用のツールも万能ではなく、多くの組織が新旧システムを同時に運用している現実を踏まえると、両方の環境を横断的に可視化し、対策を講じる能力が求められます。

クラウドプロバイダーのツールの限界
クラウドサービスプロバイダーが提供するネイティブツールも進化を遂げてはいるものの、その主な目的は自社のサービスの可視化にあります。つまり、マルチクラウドやハイブリッドクラウド環境全体を管理するには不十分です。企業がこうした環境に移行し、その利点を最大限に活用したいと考えるならば、データバックボーンを導入し、全体を統合的に管理することが重要です。

オブザーバビリティの重要性
最新のテクノロジー環境に対応するデータバックボーンには、ITチームにオブザーバビリティを提供するツールが不可欠です。また、セキュリティプロフェッショナルがシステム全体をエンドツーエンドで監視、分析し、迅速に対応するための可視性も必要です。従来の監視アプローチを超えて、組織はオブザーバビリティを実現することが求められています。

監視とオブザーバビリティの違い
監視はシステムが正常に稼働しているかどうかを確認するための手段であり、予測可能な障害に対するアラートを提供します。一方、オブザーバビリティは、システムがなぜ稼働していないのかを深く掘り下げ、システム全体の障害や部分的な障害を包括的に理解するための情報を提供します。このように、監視とオブザーバビリティは補完的な関係にあり、組織がマルチクラウドやハイブリッドクラウド環境全体を可視化し、運用管理を高度化するためには、両者の統合が必要不可欠です。

オブザーバビリティと統合ビューの構築
システムのオブザーバビリティを実現することで、企業は複雑なクラウド環境全体を一元的に可視化し、セキュリティとパフォーマンスを高いレベルで維持できます。すべてのシステムを単一のビューに集約して表示し、ハイブリッドインフラ全体に分散するデータを標準化して管理することで、セキュリティ担当者は調査結果の管理、アラートの優先順位付け、調査プロセスの効率化を一元的に行うことが可能になります。

このような進化が求められる中、組織は従来の監視手法から脱却し、オブザーバビリティを中心に据えたITインフラの管理体制を整えることが急務です。

オブザーバビリティリーダー的組織の定義と評価基準

オブザーバビリティにおけるリーダー的組織の定義は、成熟度の4つの重要な指標に基づいています。これらの指標は、データコンサルタントが顧客のデジタル戦略において最適化を支援する際に、データ活用の深さや技術的な統合度を評価するための基準となります。

経験: オブザーバビリティの実践期間です。24カ月以上の経験を持つ組織がリーダーとされ、12カ月未満の組織はビギナーと分類されます。
データ相関付けの規模: オブザーバビリティツール全体で、異なるデータソースから得られる情報をどれだけ効率的に相関付けているか。
ベンダー統合の進捗: 異なるベンダーのツールやシステムの統合度合い。ここでは、サイロ化されたデータやツールをどれだけ統合できているかが評価されます。
AI/機械学習の活用: オブザーバビリティツールにAIや機械学習を活用し、異常検知やパフォーマンス最適化にどれだけ寄与しているか。

この4つの指標すべてで高い成熟度を持つ組織を「リーダー」、3つの指標で高水準に達している組織を「取り組み中」、2つ以下の場合を「ビギナー」と分類しました。

データの分析と成熟度の変化

前年の調査から成熟度別の割合は大きく変わっていませんが、背景には重要な変化が潜んでいます。2021年の調査では、リーダー的組織が全体の11%、ビギナーが60%を占めていました。2022年の調査では、リーダー的組織が9%とやや減少し、ビギナーは59%とほぼ横ばいでした。しかし、注目すべきは、オブザーバビリティの導入が12カ月未満のビギナー組織が大幅に増加した点です。2021年の12%から2022年には24%と倍増しました。

急増するビギナー組織の影響

ビギナー組織の増加は、オブザーバビリティを新規に導入する企業が急増していることを意味しますが、一方で全体の成熟度別割合には大きな変化が見られません。これは、導入後すぐには成熟度が向上しないという複雑な状況を反映しています。多くの組織が新たにオブザーバビリティを導入している一方で、運用の高度化や技術の習熟には時間を要するため、全体の成熟度に大きな変化が現れないのです。

データコンサルタントとしては、これらの結果を踏まえ、顧客企業が効率的にオブザーバビリティの成熟度を高めるために、データ統合戦略やAI活用のガイドラインを提供することが重要です。また、ツールの導入だけではなく、従業員のスキルアップや運用プロセスの最適化にも注力する必要があります。特に、新規導入段階にある組織に対しては、データ相関の自動化やベンダー間の統合を早期に進めることで、早期にリーダーレベルに到達できる支援を行うことが求められます。

オブザーバビリティにおける人材不足の課題

今回の調査で最も顕著に浮かび上がった課題の一つが、オブザーバビリティ分野における優れた人材の確保が非常に難しいという点です。特に、インフラやアプリケーションの可用性を管理・監視するIT運用担当者の不足は深刻であり、回答者の95%がこの課題を認識しています。内訳としては、人員不足が36%、スキル不足が13%、両方が問題であると答えた組織は46%にのぼります。

アプリケーション開発においても同様であり、十分な開発者を確保できず、人員不足やスキル不足が大きな課題となっています。これは、オブザーバビリティの成熟度にかかわらず、どの組織でも共通して直面する課題です。

人材不足による組織への影響

人材やスキル不足により、以下のような問題が各組織で発生しています:

適切なスキルを持たない人材がリーダーに任命されることにより、プロジェクトやイニシアチブが遅延または失敗する。
プロジェクトの進行遅延や失敗によって組織全体の効率が低下。
燃え尽き症候群によるスタッフの離職、そして残されたスタッフの負担増加により、さらなる人員不足が加速。
回答者自身が離職を検討するほどの負担増加が発生。

特にリーダー的組織では、燃え尽き症候群による離職が問題視されており、複数回発生したと回答した割合は56%と、他の組織(取り組み中の組織では46%、ビギナー組織では35%)を上回っています。

リーダー組織が直面する追加の課題

リーダー的組織では、すべてのカテゴリで課題が複数回発生する割合が高いという特徴が見られます。これは、高度なオブザーバビリティの目標に挑戦しているため、標準的な運用課題を克服しても、さらなる難易度の高い問題に直面していることが背景にあると考えられます。そのため、人材不足の影響がより顕著に現れる傾向があります。

具体的な例を挙げると、リーダー的組織の50%が複数のプロジェクト遅延を経験しており、これは**取り組み中の組織(41%)やビギナー組織(34%)を上回っています。また、リーダー的組織の40%が複数のプロジェクト失敗を経験しており、これも取り組み中の組織(37%)やビギナー組織(29%)**より高い割合です。

まとめ

このデータからは、オブザーバビリティを高度に導入している組織ほど人材不足の影響を強く受けやすいことが示されています。リーダー的組織は、より複雑で高度な目標を追求するため、技術的な進歩に比例して人材の確保が一層重要になっていると言えます。これに対処するには、人材の確保・育成戦略を強化し、スキルギャップを埋めるための継続的な教育とトレーニングが必要不可欠です。

最終的に、オブザーバビリティの成功は、単に技術やツールだけでなく、適切な人材をいかにして確保・育成するかが決定的な要因となります。

イノベーションとデジタルトランスフォーメーションの加速
オブザーバビリティに優れた組織は、革新性においても目立った成果を上げています。特に、アプリケーション開発チームが開発した新しい製品や収益モデルは、昨年だけで60%増加し、具体的なイノベーションの実現数は8回に達しています。ビギナー組織では、同じ期間で5回の増加にとどまっています。

イノベーションのスピードは、ビジネスの成長を測る重要な指標です。Splunkが2021年に発表した『データイノベーションの現状』レポートでは、進んだ組織は従業員の生産性を2倍にし、新しい市場への参入や売上の増加が未成熟な組織に比べて2倍になると報告されています。これらのデータは、イノベーションが企業の競争力強化に直結していることを示しています。

加えて、デジタルトランスフォーメーションのスピードもこれまでにないほど加速しています。企業は、顧客体験の向上や、業務効率の最適化、新しい市場戦略の立案に取り組んでおり、これが新たな顧客や優秀な人材の確保に直接つながっています。特に2022年には、デジタルトランスフォーメーションが単にビジネスをサポートする存在ではなく、ビジネスそのものへと変わり、競争力の源泉となっています。

データの視点からの成功要因
オブザーバビリティに優れた組織の中では、デジタルトランスフォーメーションが「非常に成功している」と回答した割合が72%と高く、前年の50%から大幅に向上しています。対照的に、ビギナー組織で同様に回答した割合は32%にとどまっており、オブザーバビリティがデジタルトランスフォーメーションの成果に大きく影響することが明らかです。データ活用の成熟度が組織の競争力と直結していることが、ここでも見て取れます。

このように、データの視点で強調することで、組織のデジタルトランスフォーメーションの成功におけるオブザーバビリティの重要性を明確にしました。

オブザーバビリティの重要性とビジネスへの影響

オブザーバビリティ(可観測性)は、データドリブンなアプローチを推進する上で、現代のITインフラにおいて不可欠な要素となっています。特にハイブリッドやマルチクラウド環境の普及に伴い、従来の監視手法では不十分な可視化の課題に直面する企業が増加しており、オブザーバビリティは単なるトレンドではなく、堅牢なIT基盤としての位置づけが強まっています。COVID-19の影響によるクラウドの急速な導入は、この流れを一層加速させました。

データコンサルタント視点の洞察

Splunkが実施した調査によると、オブザーバビリティを高度に実践している組織(リーダー的組織)は、アプリケーションのパフォーマンス低下やダウンタイムを迅速に検出・解決する能力を持ち、結果として平均69%の解決時間短縮を達成しています。さらに、これらのリーダー的組織は、ビジネスクリティカルなアプリケーションのダウンタイムによるコストを抑制し、年間コスト削減に成功していることが報告されています。

これに対し、オブザーバビリティの導入が遅れている組織(ビギナー組織)では、問題の検出や対応が遅れ、結果的に高額なダウンタイムコストや、パフォーマンス低下の影響がビジネスに悪影響を及ぼしています。このようなギャップは、データの観測・分析能力の成熟度に起因しており、ビジネスの競争力に直結する重要な要因です。

オブザーバビリティ導入のメリット

オブザーバビリティを強化することで、単なるシステムパフォーマンスの改善に留まらず、以下のような多面的なメリットが得られます。

セキュリティの強化: 異常検知や脅威の早期発見が可能となり、セキュリティインシデントのリスクを大幅に低減します。
コスト削減: ダウンタイムやパフォーマンス低下によるビジネスインパクトを最小限に抑え、年間運用コストの削減が期待できます。
競争力の向上: 高い可視化能力により、ITインフラ全体の効率を向上させ、ビジネス全体の迅速な意思決定と運用の最適化を実現します。

オブザーバビリティは、まだ普及段階にあるものの、既にその価値が大きく認識されています。今後も、より多くの企業がデータドリブンなアプローチの一環として、オブザーバビリティを取り入れることで、競争優位を獲得していくことが予想されます。企業は、ITインフラの可視化を徹底し、データを活用したインテリジェントな運用を推進する必要があります。

データコンサルタントの視点では、ビジネス成果への直結やデータ活用の重要性を強調し、導入による具体的な効果を論じることがポイントです。

新興企業と中小企業の成長におけるオブザーバビリティーの利点

急速に成長している新興企業や中小企業にとって、オブザーバビリティーは競争優位性を得るための重要なツールです。システムが複雑化する中で、これらの企業は新たな課題や障害のリスクに直面します。オブザーバビリティーを早期に導入することで、システムの状態を可視化し、トラブルシューティングを効率化する基盤を構築することが可能です。これにより、システム成長がスムーズに進み、予期しないダウンタイムや重大な障害のリスクを大幅に軽減できます。

マイクロサービスアーキテクチャにおける複雑性の管理

特に、マイクロサービスアーキテクチャを採用している企業では、オブザーバビリティーが不可欠です。各マイクロサービスは独立して機能するものの、その間の相互依存関係がシステム全体の複雑さを急速に増大させる可能性があります。このような環境では、リクエストのフローをサービス間で追跡し、遅延の原因を特定し、パフォーマンスのボトルネックを明確にするために、リアルタイムの可視化が必要です。オブザーバビリティーがあれば、複雑なアーキテクチャ内の問題を迅速に検出し、解決へ導くことが可能です。

開発者へのインサイト提供

個々の開発者にとっても、オブザーバビリティーは開発プロセスを最適化するための貴重なツールです。リアルタイム監視を活用することで、開発中やテスト中のアプリケーション動作に関するイベントやメトリクスを即座に確認でき、早期に問題を発見・解決できます。これにより、より堅牢で信頼性の高いアプリケーションを構築することが可能となり、開発サイクル全体の効率を向上させます。

重要な事例:金融業界におけるオブザーバビリティーの役割

オブザーバビリティーの重要性を示す事例として、2012年に金融サービス会社が経験した大規模な損失があります。この事件では、ソフトウェアのグリッチにより、わずか1時間で4億ドル以上の損失が発生しました。原因はコードデプロイメントのエラーであり、これはオブザーバビリティーが金融システムのような高リスク業界で不可欠であることを示しています。小さなエラーが深刻な結果を引き起こすリスクがあるため、金融機関や同様の業界では、システムの完全な可視化が求められます。

オブザーバビリティーの原則と統合

オブザーバビリティーの基本的な役割を理解し、適切な原則を採用することで、複雑なアーキテクチャにおいてもスムーズに統合できるようにすることが重要です。組織全体でオブザーバビリティーを適用し、システムのパフォーマンスと信頼性を高めることで、デジタルトランスフォーメーションを成功に導くことができます。

このバージョンでは、新興企業から金融機関まで、異なる組織におけるオブザーバビリティーの利点を具体的に説明し、導入の重要性を明確にしています。また、データに基づいた意思決定の必要性も強調し、企業の成長と信頼性向上にどう貢献するかを示しています。

オブザーバビリティ(可観測性)の推奨取り組み

優秀な人材を引きつける環境作り

適切なツールやプラクティスは、優秀な人材を惹きつけ、組織の競争力を高めます。例えるなら、ミシュランガイドに掲載されるシェフがホットドッグスタンドで働きたいと思うでしょうか?当然ながら、優秀なオブザーバビリティのエキスパートも、適切なツールや最新のプラクティスが揃っている環境を望んでいます。それは彼らの仕事が効率的に進むだけでなく、スキルやキャリアの向上にもつながるためです。

対照的に、古いツールや非効率なプロセスでは、従業員は疲弊し、結果として他社に優れた人材を奪われるリスクがあります。組織としては、IT担当者のスキルを継続的に向上させるために教育への投資を積極的に行うことが求められます。現在、IT教育に投資する予定の組織は半数に及びますが、その半数に入ることが重要です。

また、組織のオブザーバビリティの成熟度に応じて、必要な人材のタイプを正確に把握することも不可欠です。例えば、オブザーバビリティプラクティスを構築する専門家は、構築フェーズに興味を持ち、その後の監視フェーズでは退屈してしまう可能性があります。構築段階の人材と運用段階の人材は異なるスキルセットが必要であり、これらを区別して管理することが効果的です。

AIを活用して増大するデータに対処する

AIOps(AIによる運用管理)は、データの量と複雑性に対応するための強力なソリューションです。ただし、まだ市場で統一された定義がない新しい概念であり、過度に期待することは避けるべきです。それでも、異なるデータストリームをリアルタイムで統合し、意味のある情報に変換する能力は、非常に効果的なアプローチです。

初心者レベルの組織では、AIOpsの最大の期待はMTTD(平均検知時間)の短縮や、根本原因分析の迅速化にあります。手動で複数のダッシュボードを切り替えてデータを解釈するのは非効率であり、AIアルゴリズムがデータをリアルタイムで解析することで、問題解決までのスピードが向上します。

一方で、リーダー的な組織では、データ相関を活用したアプリケーションやインフラの健全性予測に重点を置くことが多く、初心者組織を大きく上回る結果を示しています。

戦略としては、まずはMTTDの短縮に焦点を当て、その後データ相関による予測分析に進む段階的なアプローチが理想的です。

このように、オブザーバビリティの取り組みには、人材の獲得と育成、そしてデータ管理におけるAI活用が重要な要素となります。組織の現状と目指すべきゴールに応じて、段階的にアプローチを進めることが成功の鍵です。

目的の明確化と現状の把握
今が転換期

オブザーバビリティ(Observability)の普及は、これから本格化します。過去2年間で急速に関心が高まり、アナリストもこの概念を積極的に評価しています。今後、クラウド環境の高度化を進める組織では、オブザーバビリティソリューションの需要がさらに増加すると見込まれます。それに伴い、B2Bソフトウェアベンダーもこの市場に続々と参入するでしょう。

データドリブンな視点の追加
複数の調査データによれば、オブザーバビリティの価値はすでに証明され、その認識も広がりつつあります。しかし、急速に変化するインフラ環境で、可視性と問題対応の能力をどのように維持・向上させるかが新たな課題です。過去にAIや機械学習が流行した際と同様、「オブザーバビリティ機能」を標榜するツールが急増し、市場が一種の「オブザーバビリティの洪水」に直面することが予想されます。

ソリューション選定の重要性
今後、多くのベンダーが「オブザーバビリティ機能」を備えた製品を謳うでしょう。しかし、それらの機能が実際に価値を提供しているかを見極めることが重要です。実際の効果を評価する際は、単なる機能の有無だけでなく、運用にどう貢献するか、データの可視性が具体的な行動にどのように繋がるかを検証する必要があります。

データ主導の意思決定と信頼性の評価
ベンダーやパートナーから提供されるソリューションの詳細を慎重に分析し、可視性が実際の業務にどのように貢献するかを明確にすることが不可欠です。データに基づいた意思決定を行い、ツールが実際に組織の課題を解決し、運用の改善に寄与するかどうかを確認する必要があります。

結論と次のステップ
今後、オブザーバビリティの需要が急増する中で、真に求められているのは、現実的なニーズに応じたソリューションです。マルチクラウド環境での複雑さが増す中、従来の監視手法では対応できない運用チームは、オブザーバビリティの価値を実感し、最適なソリューションを模索することになります。これにより、より効果的な可視性と問題解決が可能となるでしょう。

この改訂版では、データコンサルタントとしての視点を強調し、データに基づいた分析、意思決定、およびソリューション選定の重要性を明確にしています。また、具体的なアクションを示すことで、企業がオブザーバビリティを適切に活用できる道筋を描いています。

1. 分散トレースとオブザーバビリティーの価値

 分散トレースを活用したオブザーバビリティーは、開発者に対してアプリケーションのリクエストフロー全体を可視化し、パフォーマンスのボトルネックを特定するための強力なツールとなります。具体的には、トレース分析を通じて各コンポーネントの処理時間を測定し、データに基づいた最適化を行うことで、システムの効率を向上させることが可能です。

2. インストルメンテーションとデータの収集

 開発者は、効果的な監視とオブザーバビリティー機能を統合することで、コードのインストルメンテーションを実現できます。これには、戦略的に配置されたインストルメンテーションポイントを設け、アプリケーション全体でログステートメントを収集することが含まれます。このアプローチにより、開発者はリアルタイムで運用データやインサイトを取得し、パフォーマンスのボトルネックやエラーを迅速に特定・修正することが可能となります。

3. ログの監視とエラーハンドリング

 アプリケーションログの継続的な監視は、開発者がコード内のエラーや例外を迅速に発見し、修正するために不可欠です。ログ集約ツールと分析ツールを組み合わせることで、特定のエントリを迅速に検索し、問題の根本原因をデータに基づいて特定し、改善策を講じることが可能です。このプロセスにより、システムの安定性とパフォーマンスの向上が期待できます。

4. オペレーション・チームの役割

 オブザーバビリティーを活用することで、オペレーションチームはシステム全体のメトリクスを監視し、異常な動作に対して早期にアラートを設定できます。具体的には、CPUやメモリの使用率、ネットワークトラフィックを追跡し、パフォーマンスの急上昇やボトルネックの発生を迅速に検知し、対応することが可能です。

5. リアルタイム監視と障害検出

 リアルタイム監視と可視化ツールを用いることで、オペレーションチームは分散システムの正常性を継続的に監視し、異常や障害の早期検出を行えます。特定のイベントがシステムに与える影響を迅速に把握し、問題が拡大する前に対応することで、システムの安定性と稼働率を維持することができます。

データコンサルタントとして、オブザーバビリティーやログ管理、インストルメンテーションの重要性を強調し、開発者やオペレーションチームがデータ駆動のアプローチを通じてパフォーマンス改善を行えるプロセスに焦点を当てました。また、具体的なツールやプロセスに基づいた解説を追加することで、現実的な実践方法を提案しています。

ベンダー統合とデータ相関における課題

オブザーバビリティの成熟度に関する調査では、ベンダー統合の面で初心者と評価された組織が35%に達し、前年の25%から有意に増加しました。これは、オブザーバビリティの導入を始めたばかりの組織が急増していることを反映しています。しかしながら、データの相関付けでは大きな差が見られず、AI/機械学習の活用においては、初心者レベルの割合が逆に減少していることが確認されました。これは、技術的な成熟が異なる速度で進むことを示しており、組織が特定の分野で成長しながらも、他の分野で課題に直面していることを浮き彫りにしています。

データ相関付けの成熟度別割合では、初心者組織が「ほとんどまたは全くデータを相関付けできていない」とされ、これは特に複雑なクラウド環境での課題として現れています。

クラウド環境の複雑化とオブザーバビリティの普及

オブザーバビリティの需要が急速に高まった背景には、クラウドの普及とその複雑化があります。クラウドへの移行は10年以上前に始まりましたが、近年ではハイブリッドアーキテクチャやマルチクラウドの運用が一般的となり、多くの組織がその運用の複雑さに直面しています。調査によると、約70%の組織が複数のクラウドサービスを利用しており、そのうち55%は有効に活用していますが、45%は主に予備的に使用しているにすぎません。このような背景から、複雑化したITエコシステムに対応するためにオブザーバビリティが不可欠となっています。

複雑化の影響を受ける組織

さらに、75%の組織が複数の環境(例えば、複数のパブリッククラウドやオンプレミスとクラウドの組み合わせ)でクラウドネイティブアプリケーションを運用しています。リーダー的組織では、この複雑な運用形態が標準となっている割合が92%に達しており、初心者組織の68%を大きく上回っています。加えて、36%のリーダー組織が3つ以上のパブリッククラウドを利用しており、今後24カ月以内に67%がそうする予定です。これらの調査結果は、データコンサルタントとして、企業のクラウド戦略が進化する中で、いかに複雑なインフラ管理が求められているかを示しており、オブザーバビリティの導入が今後ますます重要になることが予測されます。

ここでは、データコンサルタントの視点を強調し、組織が直面する技術的な課題に焦点を当てつつ、オブザーバビリティの重要性を示しています。