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データコンサルタント/データアナリストの視点からの考察:グローバルなクラウド導入トレンドとデータ管理インフラとしてのクラウドERPの価値

データ管理・処理インフラとしてのクラウド導入は、グローバル市場において現在も拡大傾向にあります。調査・アドバイザリ企業のMarkets and Markets社によるデータ予測では、クラウドサービスに対する世界の支出は、2021年のデータポイントである4,453億米ドルから、2026年には9,473億米ドルへと大幅に拡大すると見込まれています。Zippia社のデータによると、北米では2020年までに企業の61%が業務システムをクラウドへデータ移行しており、北米の企業ITインフラの67%が既にクラウドベースのデータ管理・処理環境となっています。米国単独でも、クラウド・コンピューティングおよびホスティング市場は、2010年から2020年のデータ期間で535%という顕著な成長を示しました。欧州におけるクラウド・コンピューティングへの支出データは、2021年には630億ユーロに達し、2030年までには5,600億ユーロに達するとデータ予測されています。

近年、多数の組織がクラウドおよびクラウドベースのデータ管理・処理アプリケーションへの移行を進めていますが、地域によってその導入率データには差が見られます。例えば、日本およびアジア太平洋地域における組織のクラウドへのデータ移行は、他の地域と比較して遅いペースで推移していましたが、この状況も変化しています。Cisco社とBoston Consulting Groupによるデータ分析レポート『The Future of Cloud in Asia Pacific』によると、アジア太平洋地域におけるクラウド投資のデータは2018年以降、年平均成長率20%を超えており、クラウド投資総額は2024年までに2,000億米ドルに達するとデータ予測されています。オーストラリア/ニュージーランド(ANZ)地域では、データ管理インフラとしてのクラウド採用がかなり進んでいます。『Infosys Cloud Radar 2021』のデータによると、ANZでは2020年までにITシステムの43%がクラウドへデータ移行し、2022年末にはこの数字が52%に達したとデータ報告されています。

なぜデータ管理・処理基盤としてクラウドがこれほど注目されているのでしょうか。簡単に言えば、クラウドを利用することで、オンプレミス環境のデータ管理に必要なインフラ構築・運用コストや、高度なデータ管理・分析スキルを持つ技術者への投資負担を軽減しつつ、あらゆる規模の組織が高度なデータ管理・活用ツールをデータに基づいた手頃なコストで利用できるようになるためです。クラウドシステムのデータ管理・活用に関する利点は、組織において最も重要となる財務および業務プロセスのデータ領域において、とりわけ明確になります。

組織は通常、財務、在庫、注文管理、サプライチェーン管理、人事といった主要な業務プロセスデータを管理するためにエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムというデータ統合基盤を利用しており、ERPを適切に活用している組織のデータでは、95%で業務プロセスの改善が見られています。そしてERPというデータ統合基盤の場合、いくつかの重要なデータ管理・活用に関する理由により、クラウドシステムはオンプレミス環境よりも優れたメリットを提供します。クラウドERPシステムは、場所や時間を選ばずに事業データにアクセスでき、データ統合基盤として常にオンライン状態を維持し、データ管理のメンテナンスやデータモデル/機能のアップグレードに必要な組織のITリソース負担を軽減します。クラウドERPはまた、オンプレミスのデータ管理システムと比較してコスト効率が高く、データ処理パフォーマンスも優れている傾向にあります。データ保護とデータアクセスの観点から、クラウドERPはビジネスチームが重要な事業データに安全かつ効率的にアクセスできるようにする、最も効果的なデータ統合ソリューションであると言えるでしょう。

データが示すクラウドの明確なメリットや、クラウド導入に関するデータ統計は非常に説得力がありますが、CIOの中にはそれでもクラウドERPデータ統合基盤への移行にデータ管理やセキュリティの観点からためらいを感じている人も存在します。本ドキュメントでは、CIOがクラウドサービス、特にデータ管理やセキュリティ、既存データとの連携といったデータ関連の側面に対して抱いている一般的な懸念をデータに基づき分析し、それらの懸念が適切なクラウドERPシステムおよびデータプロバイダを選択することによってどのように払拭され、組織がクラウドERPがもたらすデータ管理・活用メリットを享受できるようになるかを考察します。

データ駆動型変革とデータ管理モダナイゼーションのエージェントとしてのクラウド

クラウド技術は、世界中の組織のデータ管理・活用能力に大きな影響をもたらしています。データ収集・分析の迅速化を通じて組織のアジリティを高め、データに基づいた意思決定による競争力の向上に繋がります。また、データ管理コストの最適化や、災害発生時におけるデータ復旧およびデータ可用性の向上といった重要な事業継続データに関する機能向上に繋がることもよくあります。そしておそらく最も決定的な点は、クラウドがデータに基づいた新たな技術(AI/機械学習、IoT等)の導入やデータ管理環境の近代化を容易にすることで、データ活用を通じた将来へのよりよい備えを提供することです。

データコンサルタント/データアナリストの視点からの比較分析:クラウドERPにおけるデータモデル更新と統合のアーキテクチャ
データモデルおよび機能の更新:NetSuiteのデータ統合基盤の更新はバックグラウンドで自動的に行われ、システムのデータ安定性やデータ利用可能性(アップタイム)に影響を与えません。一方、Microsoft Business Centralの場合、組織が自動更新を選択している設定であっても、更新されたソフトウェアのデータモデルや処理機能が既存のデータモデル変更(カスタマイズ)と引き続きデータ整合性を保って動作することを確認するため、オンプレミスERPシステムの場合と同様の手動によるデータ検証プロセスが必要となります。データ整合性が保たれない場合、データモデル変更(カスタマイズ)の修正が必要になります。データバージョンアップの方法も、ソフトウェアのデータモデル設計方法によって違いが生じます。NetSuiteは、コアとなるデータ管理コードをロックダウンし、データモデル変更(カスタマイズ)の影響を最小限に抑える設計思想を採用することにより、ソフトウェアのデータバージョンアップに伴うデータ整合性確認のストレスを排除しています。また、データモデルを直接変更するコーディングによるカスタマイズではなく、データモデルの構造は維持しつつ事前定義済パラメータを変更する構成(コンフィグレーション)に重点を置いて設計されています。組織はデータモデル変更(カスタマイズ)を行うことも可能ですが、これは基盤となるデータベースデータ構造ではなく、データ入力・表示インターフェースやビジネスロジックを制御するアプリケーション・レイヤーのデータ処理部分でのみ可能です。これにより、ソフトウェアベンダーは、カスタマイズされたデータレポート定義やデータ処理スクリプト、ワークフローに影響を及ぼすことなく、コアとなるデータ管理コードの更新を行うことができます。

データ連携と統合:他のシステムとのデータ連携の容易性は、選択するクラウドERPデータ統合基盤ベンダーによって異なります。Microsoft Dynamics 365を構成するすべてのデータ管理・処理アプリケーションが、統一されたデータコードベースを使用しているわけではありません。例えば、CRM関連のデータ管理モジュールは主にMicrosoftによって独自に構築されており、買収した技術に大きく依存していないため、大部分が企業の買収によってデータ統合されたDynamics 365 Financeプラットフォームとは異なるデータコードベースを持っています。そのため、これらはデータ管理・処理において別個のアプリケーションとして機能し、データ入力・表示のユーザーインターフェースも異なります。財務関連データとCRM関連データのアプリケーション間でデータの受け渡しや、データに基づいたワークフローを実行するには、Microsoft社のDataVerseというデータ連携ミドルウェアを別途導入・構成する必要があります。

これに対し、NetSuiteでは、全機能領域におけるすべてのモジュールが単一のデータコードベース上に構築されているため、データモデル変更(カスタマイズ)の管理が比較的容易であり、データ連携のための別途ミドルウェアも不要です。また、新しいデータバージョンのリリースがあるたびに、データモデル変更(カスタマイズ)部分のデータ整合性をテストする必要性が最小限に抑えられるため、データバージョンアッププロセスもスムーズになります。

NetSuiteはまた、オープンAPIやサードパーティによって提供されるデータコネクタを通じて、Microsoft社のデータ管理関連テクノロジー(Microsoftスタック)とのデータ連携も可能です。そのため、Microsoft社の技術を中心にデータ管理ITシステムを構築してきた組織が、ERPシステムとのデータ相互運用性や、データ連携管理のための人的リソースの雇用・配置が必要となるかを過度に心配する必要はありません。(詳細については、NetSuite vs. Microsoft Dynamics 365のデータ管理・活用に関する比較資料をご参照ください)。これら以外にも、データモデルのアップグレード/拡張性や、他のシステムとのデータ統合方式においてデータ管理上の違いがあります。次はその例です。

データに基づいたクラウドベースERPがもたらすデータ管理・活用に関するメリットの享受方法

クラウド技術は、今日のデータ駆動型世界経済において不可欠なデータ管理・処理基盤としての役割を担っています。クラウドサービスは2000年代前半から半ばにかけてデータ管理・処理インフラとして急成長し、幅広い組織でデータ活用基盤として導入されるようになりました。その後、2020年のCOVID-19パンデミックによって、データアクセス・データ共有要件が変化し、クラウドの導入がさらに加速しました。多くの組織は、データに基づいたリモートワーク環境を可能にし、データへの継続的なアクセスを通じて事業継続性を高めるため、データ管理基盤のクラウドへの移行を加速しました。クラウドベースERPは、データ管理・運用の効率化、データアクセスとデータ共有の柔軟性、データ保護・セキュリティ強化、そしてデータに基づいた分析・意思決定の加速といった多くのデータ管理・活用に関するメリットをもたらします。

データコンサルタント/データアナリストの視点からの考察:ERPデータ統合基盤導入におけるデータ駆動型組織文化醸成と継続的データ活用

組織の従業員は、日常業務において慣れ親しんだデータ入力・処理プロセスや、それに紐づくデータに基づいた業務遂行スタイルを変えることに対して抵抗を感じる場合があります。特にERPデータ統合基盤のように、広範な業務プロセスデータに影響を及ぼすシステムの変更となると、データに基づいた変更の必要性が十分に理解されていない場合、容易に受け入れられないケースも見られます。ここで重要なのが、「データ駆動型マインドセットへの変革」です。ERPは、購入後に手軽にセットアップして完了となるコンピュータのような固定資産ではなく、データに基づいた環境や業務プロセス、データ活用スタイルを積極的にプラスに変えていくためのデータ統合システムです。ERPの導入は、特定の業務プロセスデータだけでなく、組織全体の業務プロセスデータフローに影響を及ぼします。

組織は従業員をデータ活用の観点から積極的に関与させ、次のような重要なデータに関する質問に答えられるよう、意識の準備を促す必要があります。組織がERPデータ統合基盤を導入・活用することがデータに基づき重要である理由は何か? ERPはデータ収集・分析を通じてどのように生産性を向上させられるか? ERPはバックオフィス業務のデータ処理を自動化し、データに基づいた時間節約をどのように実現してくれるか?

データに基づいたブレインストーミングセッションを重ね、ERP導入がもたらすデータ活用のメリットやデータに基づいた業務変更に関する関連事項の進捗データを随時共有・更新し、従業員のデータに関する疑問を解決することによって、従業員のデータ活用に対する自信が高まり、プラスのデータ駆動型変革へと導くことができます。データに基づく変革は組織全体のデータ活用に関する変革であり、従業員にそのデータに基づいたメリットを肯定的に伝えることで、データ活用の促進が容易になります。ERPは、全従業員がデータ駆動型マインドセットへの変革を受け入れ、データ活用を積極的に行うようになった時点で初めて、データ統合基盤として最適な結果を提供できるからです。したがって、従業員のデータ活用に関するコンセンサスと信頼を築き上げることで、ERPデータ統合基盤への移行をデータに基づきスムーズかつ成功裏に行えるよう、データ駆動型組織文化醸成への十分な注意を払う必要があります。

データ活用スキルの習得支援(トレーニング)

データ分析によると、ERP導入後、21%の組織においてデータに基づいた期待される利益(ROI)が得られていないという報告があります。その原因の一つとして、データ活用に関するトレーニングが不十分な従業員によるERPシステムの操作や、データに基づかない非効率な作業プロセスが挙げられています。データ活用スキルの習得支援(トレーニング)は、ERPデータ統合基盤実装プロセスの最も重要な側面のデータの一つです。特にERPデータ統合基盤が組織内で初めて導入される場合には、データ活用に関する適切なトレーニングによって、データ入力ミスやデータ処理エラーといった問題発生を抑制し、データに基づいた導入成功の可能性をより高めることができます。

組織は、社内のITサポート担当者にベンダーが提供するデータ管理・運用に関する技術トレーニングを受講させることが重要です。また、現場のスタッフも可能であれば、ERPシステムからのデータ収集・入力方法、データ分析レポートの読み方といったデータ活用に関するトレーニングを受講することを推奨します。そして、組織が主体となり、全社員がデータに基づいた的確なオペレーションを遂行するためのトレーニングプログラム実施や、データに基づく標準操作手順のマニュアル制作なども必要になります。このようなデータ活用に関する教育は、データ入力・処理作業がスムーズでデータ関連の障害なく行われるよう支援するだけでなく、データエラーやシステム不具合発生時における問題のデータ分析と解決策実施までの時間差も短縮されます。

データに基づいたプロジェクト進捗管理とデータ整合性・機能テスト

利用可能なデータ管理・処理機能をすべてデータに基づき評価し、最適なデータ統合基盤を選択し、従業員へのデータ活用トレーニングを実施した後は、実装における肝心な側面はデータに基づいたプロジェクトの実行そのものです。Panorama Researchのデータ調査によると、ERPデータ統合基盤実装の40%は、稼働後にデータ関連の大きな業務障害を引き起こしています。したがって、データフローやデータ整合性を考慮した適切な実装プロセスは不可欠です。データに基づいた計画や評価に柔軟性がない場合、プロジェクトの遅延やデータ関連の課題が発生し、裏目に出ることがあります。これは、システム選択、評価、そして実装というプロセスの間にデータ環境の変化や新たなデータ要件が発生する時間差が存在するからです。同時に、データに基づき設定したERP導入の核となるデータ活用目的が、プロジェクト進行中にデータに基づかない判断で薄められたり変更されたりしてはなりません。テストはデータ統合基盤実装プロセスの重要な段階であり、システムテスト(データ処理機能検証、パフォーマンステスト)およびユーザー受け入れテスト(実際の業務データを用いた検証、データ整合性検証)が含まれます。

データに基づいた継続的な稼働後サポートと導入効果の定量化

ERPデータ統合基盤ソリューションがデータ整合性・機能テストを経て適切に検証されたら、次の段階は本稼働です。ERPは、1回限りのイベントとしてではなく、データに基づいた継続的なデータ収集・管理・活用プロセスとして捉えるべきです。組織が継続的にデータに基づき監視を行わなければならないデータ統合基盤です。データ関連の異常やシステム不具合は、ERPシステムのデータ収集・処理機能に影響を及ぼす可能性があるからです。最後になりますが、ベンダーが提供するERPソフトウェアの定期的なデータアップデートは、データセキュリティの確保や機能改善のために、実装完了時のデータ管理ソリューション要件の一つとして考慮すべきです。データに基づいた継続的なサポートの一環として、データ整合性の確認やパフォーマンス維持のためのメンテナンスも定期的に実施する必要があります。そして、ERP導入当初にデータに基づき設定した目的(データ活用に関するKPI等)が達成されているのかをデータに基づいて定量的に確認してください。設定したデータに基づいた目標をクリアしてこそ、ERPの導入はデータ活用の観点から成功と言えるのです。

データコンサルタント/データアナリストの視点からの考察:ERPデータ統合基盤導入成功のためのデータ活用のステップ
ERPデータ統合基盤は、業務プロセスデータを体系化・合理化し、データに基づいた効率化と加速化を通じて、データに基づいた継続的な生産性向上と競争力強化を組織にもたらします。しかし、ERPデータ統合基盤の導入はその影響度の大きさから、データ管理やデータ活用の観点からの課題により失敗する可能性が高いというデータも存在します。データに基づいた導入目標を達成し、失敗のリスクを低減するためには、データ活用の観点からの正しい実装プロセスが不可欠です。

データに基づいたERPデータ統合基盤の実装を成功に導くために「データ活用の観点から従うべき10のステップ」をご紹介します。

1. データに基づいた課題の特定と導入目的のデータ指標化

ERPデータ統合基盤は、組織が直面する多くのデータ管理・活用に関する課題に対し、広範なソリューションを提供します。しかし、ERP導入のデータに基づいた本当の目的は何なのかを特定することが非常に重要です。「システムを導入すること自体」よりも「何のために、どのようなデータ活用を実現するためにERPを導入すべきか」に重点を置くべきです。そのERPデータ統合基盤の必要性をデータに基づき理解するためには、重要業績評価指標 (KPI) といったデータ指標を用いた現状分析と、データに基づいた目標設定を行う必要があります。現在のビジネスにおけるデータ管理や業務プロセスにおいてどこに問題データがあるのか、何がデータ活用のボトルネックとなっているのかをデータ分析に基づきリストアップし、ERP導入によってどのようなデータに基づいた効果(例:データ管理工数削減率、データ分析による意思決定速度向上率など)を期待するのかを明確化します。目的は複数データポイントに及ぶでしょう。その範囲は、業務プロセスデータの透明性向上から、データに基づいた財務管理効率化、コストを抑えながらトランザクションデータ量を拡大すること、データに基づいた成長戦略支援、買収後のデータ統合支援、株主に対するデータに基づいた透明性確保、業務プロセスデータの合理化、共通業務プロセスデータモデルの支援など多岐にわたる可能性があります。これらのデータに基づいた目的を明確化することが、最も重要かつ最初に行うべきデータに基づいた活動であると認識すべきです。なぜなら、ERP導入がデータに基づいた成功を収めたのか、あるいは失敗したのかを判断するためには、設定したデータに基づいた目的を達成しているかどうかにかかっているからです。

2. ステークホルダーのデータ要件収集とデータ要求仕様書(RFP)定義

米国の調査会社Panoramaによるデータ分析によると、56%の組織においてERPデータ統合基盤実装が予想よりも長くかかり、60%のERPプロジェクトが予算データを超過しています。データに基づいたプロジェクトの遅延や予算超過の主な原因は、ERPに求められるデータ要件定義の曖昧さや不備に起因することが多いです。多くのERP導入案件は、データに基づいた課題解決の目的から経営層のデータに基づいた判断で決定されることが多い特徴があります。しかし、実際に日々の業務プロセスデータを生成・処理しているのは現場の担当者です。ERPが扱う業務プロセスデータは、多くの部門にまたがる特徴を持っています。つまり、ERP導入を推進する担当者は、経営層のデータに関する期待値を理解しながら、現場の業務プロセスデータ要件もデータに基づき正確に把握する必要があります。それらのデータ要件を整理し、ERPが提供するデータ管理・処理機能との適合性を評価するのです。時には予算データに関する制約から、現場のすべてのデータ要件に応えられないケースも出てくるかもしれません。このような事態を防ぐためには、プロジェクト推進担当者自身がデータに基づいたプロジェクトオーナーシップを発揮する以外にも、現場の担当者をデータ要件定義や評価プロセスにうまく巻き込むことが重要です。そのようなデータ関連の要素を踏まえながら、スムーズかつ障害の少ないERPデータ統合基盤実装を実現するには、予算データに関する制約やデータ活用の核となる要求事項に基づいて、データ要求仕様書(RFP)を精緻に生成する必要があります。

3. データに基づいたオプション評価とブレインストーミング

データに基づいたERP導入を成功に導くためには、ERPソフトウェアというデータ統合基盤の評価に、データ要件に基づいた十分な時間を費やすことが大切です。2021年のERP調査データレポートによると、多くの組織がERPソフトウェアというデータ統合基盤を、データに基づいた使用目的に応じてデータモデル変更(カスタマイズ)していることが明らかになっています。過度なデータモデル変更(カスタマイズ)は、ERPシステムにおけるデータ処理の障害や、データモデル変更に起因するバグの増加を招く場合があります。また、カスタマイズによりデータモデルの標準からの逸脱が進み、データ管理の保守性が低下するケースも増えてきます。レガシーERPといった古いデータ統合基盤では、データモデル変更(カスタマイズ)の影響により、データバージョンアップに多額の費用が発生するため、多くの組織が旧バージョンのままデータ管理基盤を「塩漬け」しているケースも見られます。データモデル変更(カスタマイズ)を増やせば増やすほど、それに伴うデータ保守やサポートに関する費用が膨大になります。

ERPデータ統合基盤ソフトウェアは、データに基づいた相当数の調査を行った後、特定の業界が一般的に必要とするデータモデルや業務プロセスに合わせて設計されます。そのため、多くの組織が自社の独自の業務プロセスデータ要件に合わせてデータモデルの変更(カスタマイズ)を行おうとしますが、データに基づいた評価の結果、必ずしもカスタマイズが不要なケースも多く存在します。ERPデータ統合基盤ソリューションの導入は、特に大企業にとってはデータ管理基盤への大きな投資意思決定となります。したがって、組織はデータモデル変更(カスタマイズ)領域がもたらすデータ管理の複雑性と、それに伴うデータメンテナンススケジュールを継続的にデータに基づき監視・管理する必要があります。データに基づいたERP導入目的を達成するために、データモデル変更(カスタマイズ)が本当に必要かを常にデータに基づき問い直し、データ管理の複雑化やコスト増加を防ぐため、カスタマイズは必要最小限に留めるべきです。

(この後、残りの7ステップ:データ移行計画、データ管理・処理基盤(インフラ)評価、ベンダーとの連携、テスト、トレーニング、展開、稼働後サポートといったデータ関連のステップが続くことを示唆し、締めくくる構成も考えられますが、元の文章の構成に合わせてここまでで記述を終えます。)

データコンサルタント/データアナリストの視点からの考察:ERPデータ統合基盤への期待と選定、そしてクラウドERPの比較分析
データコンサルタントの視点から、ERPデータ統合基盤に期待される役割や機能は、データ活用の観点から以下のように整理できます:

データに基づいた変化への対応
多様な業務データの集約と統合
経営に関する主要データの可視化
業務プロセスデータの標準化
複数のシステム/データソースの一元化
データ管理・運用の効率化
最新のデータ分析機能取り込み
他の社内システム/サービスからのデータ連携
外部システム/サービスとのデータ連携
AIを活用したデータ分析
データモデル変更における柔軟性
現在オンプレミス型からクラウド型、他社の製品に移行中の場合、移行後の製品名を選択し、データ活用状況を評価することが重要です。データに基づいた評価の対象となりうるクラウドERPデータ統合基盤製品には、SAP S/4HANA、SAP ECC、Oracle Cloud ERP、NetSuite、Microsoft Dynamics 365、GLOVIAなどが挙げられます。

データ変動の急増・規制によるデータ開示強化・データ分析人材不足 ― 日本企業が直面するデータ関連DX課題

データ駆動型デジタルディスラプターの台頭や、データ活用を軸とした企業のDX推進などを一例に、業界構造が急速にデータに基づく変化を遂げる中、企業の基幹システムであるデータ統合基盤には、高いデータ対応柔軟性が求められています。一方で、GHG排出量データや人的資本データといった、データに基づく開示要件の増加により、企業の説明責任(データによる証明義務)はより重要になっています。さらに、少子高齢化による労働力データ不足と、データ分析やシステム運用を担うエンジニア不足が深刻化し、従来のデータ管理システムの運用やデータ改修にかかる人的・時間的負担は増大しています。

こうしたデータ環境の変化の中、データに基づいた競争力を維持し、迅速な意思決定を可能にする基幹システムであるデータ統合基盤とは、どのようなデータ管理・活用能力を備えているべきでしょうか。

データモデル変更(カスタマイズ)に依存する従来型データ統合基盤の、データ変動への対応限界

多くの企業が自社の業務プロセスデータに合わせてSAP ERPシステムというデータ統合基盤のデータモデルをカスタマイズしてきましたが、その結果、データ構造の硬直化や保守・運用におけるデータ管理負担増大といった課題に直面しています。データ変動に対応するためにデータモデルの変更(開発)を重ねるうちに、グローバル標準データモデルとの差異が広がり、新たな技術データや規制データへの適応が困難になるケースも少なくありません。過度なデータモデル変更(カスタマイズ)は、データ活用を軸としたDX推進の足かせとなり、データに基づいた成長機会を逃す原因となります。今、企業が求めるべきは、データに基づいた持続可能で柔軟なデータ統合基盤の運用モデルです。

データ要件に基づいた最適なクラウドERPデータ統合基盤の選択

クラウドに対するデータ管理やセキュリティに関する誤解が解消されたら、次のステップはクラウドERPデータ統合基盤ベンダーの選定です。すべてのクラウドERPベンダーが同じデータ管理・活用能力を提供しているわけではないため、データ要件に基づいた慎重な評価が重要です。クラウドERPデータ統合基盤への移行を検討している多くの企業にとって、データ管理・活用能力の観点から最終候補によく挙がる2つのソフトウェア・プロバイダーがOracle NetSuiteとMicrosoftです。どちらもERP市場においてデータ管理に関する豊富な実績を積み上げてきており、様々な業種の企業向けに包括的なデータ管理機能を提供しています。しかし、これら2つのシステムにはデータ統合アーキテクチャにおいて決定的な違いがあります。

Microsoft Dynamicsは、Microsoft Dynamics 365 FinanceとMicrosoft Dynamics 365 Business Centralといった複数のERPシステムを含むビジネス・アプリケーション群です。Microsoft Dynamicsは多くの異なるデータ管理・処理アプリケーションで構成されており、Dynamics FinanceとDynamics CRMのように、それぞれを相互にデータ接続するために共通データサービスに依存しています。そのため、ビジネスのデータ要件に厳密に合致する意図通りのデータ統合を実現するには、多くの場合、開発者によるデータ連携に関するカスタマイズ作業が必要になります。

これに対し、NetSuite ERPは、NetSuiteの全機能領域で同じデータモデルが使用され、データ統合のための個別開発を必要としない統一プラットフォームです。クラウドネイティブERPとして主要なNetSuiteは、サードパーティの様々な専門ソリューションとデータ連携のためのネイティブな統合機能を提供しています。さらに、サードパーティが提供するデータコネクタにより、NetSuite ERPがデータ統合できるソリューションが増えています。NetSuiteはネイティブに多通貨データ管理をサポートしており、RefintivやXigniteなどの財務データ・プロバイダーとの独自のデータ連携機能によって外国為替レートデータを取得・活用できます。

これら以外にも、データモデルのアップグレード/拡張性や、他のシステムとのデータ統合方式においてデータ管理上の違いがあります。

データドリブン経営への変革:不確実性の時代を勝ち抜くためのデータ基盤再構築

予測不能な市場変動、地政学リスク、そしてESGや人的資本といった非財務情報の開示要求。現代の企業経営は、かつてないほど複雑なデータに囲まれています。この環境下で競争優位を確立するには、精度の高いデータをリアルタイムに分析し、次の一手を迅速に決定する「データドリブン経営」への移行が不可欠です。

しかし、多くの企業では、分断されたデータソースからの手動によるデータ集計・加工に多大な工数が費やされています。これでは、意思決定に必要なインサイトの導出が遅れ、機会損失やリスク対応の遅延という深刻な事態を招きかねません。変化に即応し、持続的成長を遂げるためには、新たなデータ要件にも柔軟に対応できる、俊敏なデータプラットフォームの構築が急務となっています。

ERPは“宝の山”か“負債”か――データサイロ化が招く経営判断の歪み
ERPを導入し、膨大なデータを蓄積しているにもかかわらず、その価値を十分に引き出せていないケースが散見されます。度重なるカスタマイズやアドオン開発が技術的負債となり、システムは複雑化。結果として、部門ごとにデータがサイロ化し、「Single Source of Truth(信頼できる唯一のデータソース)」が確立されていない状況に陥ります。

データのサイロ化は、データ品質と整合性の著しい低下を招きます。データアナリストは分析業務時間の大部分をデータの収集・クレンジングに費やすことを余儀なくされ、本来注力すべき洞察の発見や未来予測といった高付加価値業務に着手できません。オペレーショナルデータと経営判断に必要な戦略データが分断されることで、現場の実態と経営層の認識に乖離が生まれ、データに基づかない、経験や勘に頼った意思決定を誘発するリスクを高めます。

“Fit to Standard”によるデータ基盤の再生:次世代ERP “Figues”が実現するリアルタイム・インサイト
この根深い課題を解決するのが、SAPの標準仕様に業務プロセスを適合させる「Fit to Standard」のアプローチです。これは単なるシステム導入手法ではなく、データ標準化を実現し、一貫性のある高品質なデータを生成するための経営改革に他なりません。

CTCが提供するソリューション“Figues”は、このアプローチに基づき、堅牢なデータ基盤を再構築します。標準機能を核としながら、外部の市場データや顧客データなど、多様なデータソースとの連携を容易にする疎結合型アーキテクチャを採用。これにより、ERPは単なる業務システムから、高度な分析を可能にする「データハブ」へと進化します。

入力されたデータが即座に経営ダッシュボードに反映され、あらゆる階層の従業員が、自らの役割に応じたKPIやインサイトをリアルタイムで把握できる世界を想像してください。

“Figues”は、データガバナンスの確立から、データ分析文化の醸成、さらにはAIを活用した需要予測や異常検知まで、企業のデータ活用成熟度の向上をワンストップで支援します。部門間の壁を取り払い、クロスファンクショナルなデータ分析によって新たな価値を創出する。そのための最適なデータ基盤構築のノウハウが、ここにあります。

グローバル・データガバナンスと現場の俊敏性を両立する「2層ERP」データ戦略

1. グローバル経営におけるデータ活用のジレンマ
地政学リスクの増大、サプライチェーンの複雑化、そして絶え間なく変化する市場ニーズ。現代のグローバル企業にとって、データに基づいた迅速な意思決定と強固なガバナンスは、事業継続の生命線です。

しかし、多くの企業が「グローバルでの統制強化」と「各拠点の業務最適化」という二律背反の課題に直面しています。本社主導で単一の巨大ERPをグループ全体に展開しようとすれば、各国の商習慣や法制度の違いからシステムが硬直化し、現場の俊敏性を奪います。一方、各拠点にシステム導入を委ねれば、データはサイロ化し、グループ全体の経営状況をリアルタイムに把握できず、信頼できるデータ(Single Source of Truth)は失われます。このジレンマが、データドリブンなグローバル経営の実現を阻む大きな壁となっています。

2. 解法としての「2層ERP」データアーキテクチャ
この根深い課題を解決するデータ戦略が「2層ERP(Two-Tier ERP)」です。これは単なるシステムの階層配置ではなく、データの役割に応じて最適なシステムを配置するデータアーキテクチャです。

Tier 1(本社層): グループ全体の経営分析や戦略的意思決定を担う「戦略的ERP」を配置。グループ共通のマスターデータや経営指標を統合・管理します。
Tier 2(拠点・事業層): 海外拠点や特定事業部門には、現地のオペレーションに最適化された俊敏な「実行系ERP」を配置。現場のビジネススピードを加速させます。
このアーキテクチャの核は、Tier 1とTier 2間のシームレスなデータ連携です。本社はグループ全体の正確なデータをリアルタイムに把握し、戦略の精度を高める。各拠点は現地の変化に即応できる柔軟性を確保する。近年、拡張性と導入スピードに優れたクラウドERPが普及したことで、この柔軟かつ堅牢なデータアーキテクチャが、現実的な選択肢として注目されています。

3. データ戦略実践の鍵:サプライチェーンデータ連携の実現
2層ERP戦略の成否は、特に複雑なサプライチェーンにおけるデータ連携の質にかかっています。需要、在庫、生産、物流といった一連のデータを、いかに遅延なく正確に連携させるかが、グループ全体の最適化を実現する鍵となります。

この課題を解決する具体的なソリューションが、クラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」と企業間協調プラットフォーム「CBP」の組み合わせです。

俊敏なTier 2 ERPとして「SAP S/4HANA Cloud」を導入することで、標準化された高品質なオペレーショナルデータを生成します。
そして、本社・拠点・サプライヤー・顧客といった異なる組織やシステム間を繋ぐデータハブとして「CBP」が機能します。
この連携により、これまで分断されていたサプライチェーン上のデータがリアルタイムに可視化され、グローバルレベルでの需要予測と、各拠点での生産・在庫最適化がデータで直結します。これは、経営のボトルネックであったサプライチェーンのデータ分断を解消し、真の全体最適を実現するアプローチです。

4. 本データ戦略が特に有効な対象
このアプローチは、以下のような課題を持つ企業の経営管理、IT・データ戦略責任者にとって、極めて有効な解決策となり得ます。

グローバル展開の加速とガバナンス強化を両立させたい。
M&Aを積極的に行っており、被買収企業の迅速なデータ統合(PMI)が急務である。
巨大化した本社ERPの刷新を機に、より柔軟で拡張性の高いデータ基盤を構築したい。

SAP変更管理の“勘と経験”からの脱却:データで推進するリスクベースド・アプローチ

1. SAP変更管理に潜む「データリスク」と属人性の限界
企業の神経系とも言えるSAPは、ビジネスの成長に合わせてアップグレードや機能改修が不可欠です。しかし、その変更作業の裏側には、常にビジネスに致命的な影響を与えかねない「データリスク」が潜んでいます。

例えば、「意図せぬデータ不整合の発生」「KPI算出ロジックの破壊」「マスターデータの破損」そして「バッチ処理遅延によるデータ鮮度の低下」などです。カスタマイズの高度化やシステムの長期利用により、オブジェクト間の依存関係はブラックボックス化し、データがどこで生成・変換され、どのレポートで利用されるのかという「データリネージ(データの系譜)」の追跡は極めて困難になっています。

この状況で、担当者の経験則や勘といった属人的な知見に依存した影響範囲調査を行うことには、もはや限界があります。調査・テストの漏れは必然的に発生し、本番移行後のシステム障害や、誤ったデータに基づく経営判断といった深刻なインシデントを引き起こすトリガーとなります。

2. 手戻りとコスト超過の本質:非効率なテスト戦略という課題
影響範囲をデータに基づいて正確に特定できないため、多くの変更プロジェクトでは「念のため」の過剰なリグレッションテストに膨大な工数とコストを浪費しています。これは、テストカバレッジが最適化されておらず、リソースを非効率に投下している状態に他なりません。

より深刻な問題は、ビジネスインパクトという観点でのリスク評価が欠如している点です。重要度が低い箇所のテストに時間を費やす一方で、本当にクリティカルな機能のテストが手薄になるという、本末転倒な事態を招きかねません。この非効率なテスト戦略こそが、手戻りによる追加工数やプロジェクト遅延の根本原因となっています。

3. Panayaによるデータドリブンな変更管理の実践
これらの課題を、データ分析のアプローチによって解決するのが「Panaya」です。これは単なる効率化ツールではなく、SAPの変更管理プロセスそのものをデータドリブンに変革するプラットフォームです。

Panayaは、SAP環境の静的コード解析と過去の利用実績(動的データ)をAIで分析。変更点がどのプログラム、データテーブル、業務プロセスに影響を及ぼすかを精密にマッピングし、これまでブラックボックスだった依存関係を完全に可視化します。

この客観的な分析結果に基づき、ビジネスインパクトの大きい箇所を特定し、優先的にテストすべき項目を自動で提案します。これは、勘や経験ではなく、データに基づいた「リスクベースド・テスト」の実践であり、テストのROI(投資対効果)を最大化します。調査の抜け漏れを根絶し、テスト範囲をビジネスリスクに応じて最適化することで、手戻り工数を劇的に削減し、変更プロジェクト全体の品質とスピードを飛躍的に高めることが可能です。

これは、属人化しがちな変更管理を、データに基づいた標準的かつ客観的なプロセスへと変革し、組織として持続可能なSAPガバナンス体制を構築するための、極めて有効なアプローチです。