ASM(Attack Surface Management)導入ガイド:外部から見える自社IT資産を可視化し、脆弱性リスクを最小化するために
1. はじめに:攻撃対象が増え続ける今、なぜASMなのか
デジタル化の進展により、企業のIT資産は組織内外問わず急増しています。事業部門が独自に立ち上げたWebサイト、従業員が業務で利用するクラウドサービス、IoTデバイスなど、外部からアクセス可能なIT資産(アタックサーフェース)は日々拡大しています。
その一方で、こうした資産の全体像を把握できていない組織も多く、結果としてサイバー攻撃や情報漏えいといったリスクを高める要因となっています。
2. ASMとは:外部から見た自社の“姿”を可視化する仕組み
ASM(Attack Surface Management)は、以下のような目的で活用されるソリューションです:
インターネット上に存在する自社の外部公開IT資産を発見
自動的に棚卸しし、リスクのある構成や脆弱性を可視化
攻撃者視点での“入り口”を継続的に監視し、早期対応を可能に
ASMは単なる「診断」ではなく、継続的なリスク管理と情報資産ガバナンスの仕組みとして重要性が高まっています。
3. ASM導入の4ステップ:可視化から運用までのロードマップ
ステップ1|IT資産の外部棚卸し(自動スキャン)
インターネット上に存在するドメイン・サブドメイン・IP・クラウド資産を自動収集
ステップ2|脆弱性や設定ミスの検出
見つかったIT資産に対し、既知の脆弱性や公開設定の誤りを診断
ステップ3|リスク優先度に応じた対応支援
危険度が高いリスクから順に対応方針を整理
関連部署や子会社と連携した修正プロセスの構築
ステップ4|継続的モニタリングと改善
日々の更新・増加するIT資産に対応した、定期モニタリング体制を確立
4. なぜ今、ASMが必要なのか(コンサル視点の訴求ポイント)
人的・コストリソースに限りがある現場でも実現可能
→ 手動の棚卸しに頼らず、ツールベースで効率化
DX推進によって拡大した“見えないリスク”の可視化
→ データ連携やクラウド活用が増えるほど攻撃対象も増加
サプライチェーン攻撃に強くなる基盤づくり
→ 子会社・取引先の資産も含めた外部統制の第一歩
5. 実践事例の紹介
ASMの基本的な概念だけでなく、国産では操作性と価格帯を備えた「ネットde診断 ASM」
特に以下のような課題を抱える組織に最適です:
外部IT資産の全体像を把握できていない
子会社や関連会社のITガバナンスが属人的
全資産に脆弱性診断をかけるリソースがない
「まずは外部から自社がどう見られているのかを知る」ことが、リスク最小化の第一歩です。
ASMは“点検”ではなく、“運用”として組み込むべき
ASMは一度きりの施策ではなく、“変化するIT資産の実態を継続的に捉える”運用体制の構築が目的です。サイバーリスクを最小化し、ITガバナンスを実現する基盤として、ASM導入の検討を進めてみてください。
◆【1. 問題提起】アタックサーフェースは静かに拡大している
デジタル基盤の上に事業を展開することが当たり前となった今、企業や組織が保有するIT資産の数や種類は急速に増加しています。
クラウドサービスやSaaS、子会社が立ち上げたWebサイト、開発環境の公開APIなど、「管理しきれていない外部公開資産」が組織の外に無数に存在している状況です。
そして、多くの攻撃者はまず「インターネット上に公開された情報」から攻撃対象を選定します。
把握されていないIT資産は、セキュリティホールとなり、サイバー攻撃の起点になる可能性が高いのです。
◆【2. 業務現場の声】“全資産を診断するのは無理”という現実
一方で、IT部門やセキュリティ担当者はこんな課題を抱えています:
「すべてのIT資産に脆弱性診断を行うのは、コストも工数もかかりすぎる」
「各部門で乱立したWebサイトの存在を、把握すらできていない」
「グループ会社や関連会社の資産まで管理が行き届かない」
このように、“見えないリスク”を前提としたままセキュリティ強化を進めようとする限界が、あちこちで露呈しています。
◆【3. 解決策の提示】「ASM」で見えないIT資産を可視化・管理する
こうした状況を打開する鍵となるのが「ASM(Attack Surface Management)」の導入です。
ASMは、企業が外部に公開しているすべてのIT資産を継続的に把握・評価し、「どこにリスクが潜んでいるか」を可視化・管理するアプローチです。
さらに、ASMは自社のセキュリティ対策だけでなく、サプライチェーン攻撃への備えとしても不可欠です。
近年の攻撃は、子会社・関連会社・外注ベンダーなどを起点に、本体企業へと波及するケースが増えているため、組織単体でなく“エコシステム全体”を俯瞰した対策が求められます。
◆【4. 4ステップで理解するASM導入の進め方】
ASMは、難しい概念のように見えて、実は次の4ステップでシンプルに導入できます。
資産の自動発見:ドメイン、IP、クラウドサービスなどを包括的に洗い出す
脆弱性の特定:未管理・脆弱なIT資産を識別し、リスクを可視化
対応の優先順位付け:影響度・重要度に応じた対応ロードマップを策定
継続的な監視と改善:日々変化するアタックサーフェースを定期的に再評価
◆【5. 今すぐ始められる一歩】手軽に導入できる国産ツールも登場
ASMは「高度なセキュリティ専門企業だけのもの」ではありません。
最近では、国産のASMツールが登場しており、低コストかつ手間なく導入できるようになっています。
とくに、次のような企業には最適です:
多拠点・多部門・多子会社で構成される企業
セキュリティ対策を強化したいが、予算・人手が足りない組織
サプライチェーンを含むセキュリティリスクを体系的に見直したい企業
◆ASM導入はセキュリティ強化の“第一歩”
セキュリティは「すべてに目が届いていること」から始まります。
ASMは、その第一歩として、“見えない資産”を見える化する最も効率的な手段です。
「IT資産が多すぎて管理が難しい」
「全体像を把握できていない」
「自社だけでなく、グループ会社も守りたい」
そうした方こそ、ASM導入ガイダンスと専用ツールを参考に、一歩を踏み出す時です。
データドリブン・セキュリティ戦略への転換:ASMによる攻撃対象領域の定量的評価とリスク分析
ビジネス環境の変化がもたらす、分析対象データの爆発的増加
クラウドサービスの利活用やリモートワークへの移行は、事業継続性に貢献する一方で、セキュリティ部門が監視・分析すべきIT資産データを爆発的に増加させました。結果として、データ収集のサイロ化を招き、自社の攻撃対象領域(アタックサーフェス)に関する正確なデータセットの維持を極めて困難にしています。
攻撃者の侵入経路も、従来のUSBやメールといった単一の脅威ベクトルから、ネットワーク機器、VPN、クラウドのAPI、リモートデスクトップなど、複数のデータソースを横断する複雑なものへと変化しました。これは、インシデント発生時の潜在的損失額の増大を意味し、リスクを定量的に評価・分析する必要性を高めています。
攻撃者は、これらの広範なアタックサーフェスに対して網羅的なスキャンを実行し、最も脆弱なデータポイントを起点に侵入を試みます。したがって、自社および子会社・関連会社を含むすべての外部公開資産を一つの統合されたデータセットとして捉え、継続的に監視・管理するデータマネジメントの仕組みが不可欠です。
経済産業省が2023年5月29日に公表した「ASM導入ガイダンス」は、こうしたアタックサーフェスマネジメント(ASM)が、個別の企業努力に留まらず、業界標準のリスク評価手法として社会的に要請されていることを示しています。今、求められているのは、ASMを通じた「網羅的な資産データの収集」と、それに基づく「リスクの定量的評価」です。
ASMをデータ分析プロジェクトとして再定義する
ASMの実践においては、「高機能なツール導入」がゴールと見なされがちです。しかし、本質的な課題は「どのビジネスリスクに関する問いに答えるために、いかなるデータを収集・分析すべきか」という分析設計にあります。ASMは単なるツールのオペレーションではなく、継続的なデータ収集、分析、評価を通じて攻撃対象領域を最適化するデータ分析プロジェクトそのものです。
企業のデータ活用の成熟度に応じて、アプローチは多様です。
資産データの自動収集と統合: 資産インベントリの可視化に特化したツールを用い、リアルタイムなデータ収集基盤を構築する。
脆弱性データとの相関分析: 資産データと脆弱性診断データを統合し、各資産のリスクスコアを算出。対策の優先順位付けをデータドリブンで決定する。
外部脅威インテリジェンスの活用: 外部の専門調査サービスを通じて、ダークウェブ上の情報や攻撃者の動向といった脅威インテリジェンス・データを取り込み、分析モデルの精度を向上させる。
特に「分析の第一歩をどこから踏み出すべきか不明確である」という課題を持つ情報システム部門こそ、自社のデータ活用レベルに応じた最適なASMの形態を設計する視点が求められます。
独自調査データに基づく脆弱性分析と、最適な分析サービスのご紹介
本セッションは、ASMの実践におけるデータ収集・分析に課題を抱える情報システム部門およびセキュリティ運用担当者を対象とします。
最新のマルウェア動向に関する我々の独自調査データに基づき、企業ネットワーク内に潜在する脆弱性の実態を統計的に解説。データ分析の観点から、貴社に最適なASM実践のヒントを提示します。
さらに、データ分析基盤の構築や専門スキルの維持といった課題に対する有効なソリューションとして、**「ソリトン Attack Surface Managementサービス」**をご紹介します。本サービスは、ツール導入や運用の負荷なく、ASMに必要なデータ収集から専門家による分析、そして具体的なアクションに繋がるインサイトの提供までを包括的に支援するマネージド・アナリティクス・サービスです。本サービスが、関係会社・グループ企業まで含めた広範なアタックサーフェスの定量的評価に最適である理由を、具体的な事例データと共に解説します。
「ASMを実践したいが、データ収集・分析基盤への投資対効果が見えない」
「分析スキルを持つ人材はいないが、客観的なデータに基づきIT資産の脆弱性を評価したい」
これらの課題に対し、データ分析のアウトソーシングという合理的な選択肢を提示します。ご参加をお待ちしております。
データガバナンスの新たな挑戦:ASMによる網羅的IT資産データの収集と定量的リスク評価
デジタル化の進展がもたらす、管理対象データの指数関数的増大
ビッグデータやAIといった技術活用を前提としたデジタルビジネスが加速する一方で、その基盤となるIT資産データは指数関数的に増大しています。特に、複数の子会社やグループ企業を保有する組織では、各拠点にIT資産データがサイロ化し、全社横断でのデータガバナンスが機能不全に陥るケースが散見されます。
情報システム部門が正式に管理するデータセットの外では、従業員が利用する多様なクラウドサービス(シャドーIT)が存在します。これらはデータ収集プロセスから漏れた「観測不能な資産データ」となり、セキュリティ対策のカバレッジに深刻な欠損を生じさせます。
データカバレッジの欠損が直結する事業リスク
未観測・未管理のIT資産は、脆弱性評価の対象から外れ、結果として対策が施されないまま放置されます。攻撃者はこの「データの死角」を最も効率的な侵入経路として悪用するため、データカバレッジの欠損は、そのまま事業リスクの増大に直結します。
「自社のIT資産に、攻撃起点となりうる脆弱性が存在しないか」という問いに客観的な根拠をもって答えるには、場当たり的な調査ではなく、継続的なデータ収集と定点観測に基づく評価モデルの構築が不可欠です。膨大なIT資産データの最新状況をリアルタイムで分析・評価できない状態は、データに基づかない場当たり的な対策を招き、予測可能なセキュリティインシデントの発生確率を高めます。
データドリブンなリスク管理アプローチとしてのASM
このようなデータ管理の課題に対し、ASM(Attack Surface Management)は、攻撃者の視点から自組織の外部公開IT資産データを網羅的に発見・収集し、一元的なインベントリを構築するための体系的アプローチを提供します。2023年に経済産業省から「ASM導入ガイダンス」が公開された事実は、このアプローチが公的にも推奨されるデータ管理手法であることを示唆しています。
ASMの本質は、自社のIT資産データセットを外部の客観的視点から再構築し、脆弱性というリスク要因と紐づけて分析・可視化することにあります。
データ収集・分析の第一歩を効率化するソリューション
ASM実践の基盤となるのが、網羅的かつ継続的なデータ収集プロセスです。そこで、このデータ収集と分析の初期段階を効率化するツールとして**「ネットde診断 ASM」**を提案します。
本ツールは、データ収集プロセスの自動化に特化しており、分析基盤構築に求められる初期投資を抑制しつつ、迅速にASMのデータ活用サイクルを開始できる点が大きな特徴です。
特に、以下のようなデータ統合・管理に課題を抱える組織にとって、本ツールは網羅的な資産インベントリを構築するための、極めて費用対効果の高い第一歩となります。
組織内の複数部署が、それぞれ多数のWebサイト(ドメイン)を管理しているケース
子会社やグループ会社が保有する、分散した外部公開IT資産の全体像を把握できていないケース
まずは自社の攻撃対象領域に関する、正確かつ網羅的なデータセットを構築すること。それが、データに基づいた合理的なセキュリティ戦略の出発点となります。